現在、公開中の映画『天才作家の妻 40年目の真実』は熟年の夫婦の確執を描きつつ、男性原理主義への批判をユーモラスに描いた作品です。
どんな夫婦にも隠し事…
本作は、熟年の夫婦の秘密を描いたお話です。作家をしている夫がノーベル文学賞を受賞。授賞式の行われるストックホルムへ向かう訳ですがそこで大変な疑惑が生まれてきます。
夫の取材をしたがってる記者が現れ、とんでもない事を言い出します。その記者は作家の過去を調べあげているんです。「奥さんと結婚してから作風が変わりますよね!」と妻や息子へ探りを入れます。そこから、一見、おしどり夫婦に見えた2人の心の中が明らかになっていきます。
男性原理主義社会は本当に終わった?
急に過去の回想シーンへジャンプします。1950年代のまだ若い頃の夫婦のエピソードが所々に挿入。実は、妻も若い頃は作家を目指していた事が発覚。しかし1950年代の当時の文学界は、女性が本を書いても相手にされない時代だったんです。
夢を諦めかけた時です。
まだ駆け出し作家だった夫と出会うんですね。そこから、2人で協力。小説を完成させていくんですが…
奥さまはゴーストライター?
宣伝用の資料にはサスペンスとありましたが、ミステリー色の方が強めな印象。"奥さんが作家のゴーストライターなのでは?"という疑惑を中心に過去と現在が同時進行。謎が解けていきます。
その中で、チヤホヤされる夫。名前も間違えられてしまう妻。若い女カメラマンに鼻の下を伸ばす夫。貞淑な奥さんを強要される妻。
夫婦の対比が連続。そして、とうとう2人の感情が爆発!とんでもない決断を下します!
良い時もあれば、悪い時も
固い話かと思いきや、主役の2人のキャラはユーモラス。ノーベル文学賞の連絡を受け、ベッドで跳び跳ねて喜んだり。作家の卵である息子への夫のダメ出しが、妻にされたダメ出しと一緒だったり。ケンカがヒートアップして、走る車からノーベル賞のメダルを投げちゃったり。
それぞれ、行き違いや、わだかまりはあるもののそれでも共に喜び、お互いを思い合っている夫婦像。
主役はベテラン俳優なんでご安心を
妻役は『アルバート氏の人生』で女性だけど、身を守る為、男性として生きる主人公を演じ、アカデミー賞にノミネートされたグレン・クローズ 。今回も男性社会の中で作家の道を諦めるしかなかった女性を演じています。
本作でもアカデミー賞主演女優賞にノミネートされており、ゴールデングローブ賞では主演女優賞を受賞済みなので、最有力とも言われてないます。
夫役には、『未来世紀ブラジル』から新作『ドキホーテを殺した男』など、テリー・ギリアム作品や『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズなど、ファンタジー路線の作品で目を引く風貌のジョナサン・プライス。
名優2人による演技合戦は上質な演劇を観劇したような高揚感もあり。
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ギボ・ログ★★★★☆(星4つ)