残せ!絶滅危惧番組「全国高等学校クイズ選手権」!!

2016/09/08
放送作家 石原ヒサトシ

9月9日(金)21:00から、夏の風物詩、第36回全国高等学校クイズ選手権(日テレ)が放送される。今年もアメリカ横断をしながらニューヨークで決勝を迎えるとのこと。高校生の熱いクイズバトルに期待したい。

 

高校生クイズ公式HPより

残せ!絶滅危惧番組

実は毎年“今年こそ終わってしまうんじゃないか?”とドキドキしながら春頃の参加者募集告知を待っている。今年もあってホッとした。

 

というのも、私は子供の頃からクイズ番組が好きで高校生クイズにも参加した。だから1人のファンとして終わって欲しくない。ましてや、今や視聴者参加型のクイズ番組は“絶滅危惧番組”だから是が非でも残して欲しいと願っている。

 

厳しい現状

なぜ高校生クイズの存続を危ぶむのか?視聴率ももちろんだが、それ以前に主役となる高校生の参加人数が激少なのである。そこで、手持ちの懐かしい映像を見返しつつ参加人数の変遷を振り返ってみた。

 

(1~35回、全部あります!)

 

オープニングに映しだされる地区大会の参加人数を計算するなどしてみた。

 

第1回は1983年(昭和58年)の冬。大晦日のゴールデン生放送だった。正式な参加人数の表示はなく「12万人」とナレーション言っている。アメリカ横断ウルトラクイズの高校生版としてスタートし、予想を上回る反響に局も驚いたのだろう、以降、毎年開催されるようになり現在に至る。(*1984・1985年は夏・冬と二度開催。余談だが、私は5度参加できる唯一の世代だった)

 

第2回(1984夏)では「参加人数20万人!」とナレーションでは言っていたが、たぶんかなり盛っているはず。応募総数じゃないだろうか?というのも第3、4、5回も「20万人!」と言っているが、各地の参加人数を計算してみると全て約11万人程だった。それでも凄い人数だが。

 

第8回(1998年)で20万6328人と画面にも出しているが、たぶんそんなに多くないはず。まあ細かいことはいいか…。

――― と、ツッコミが入るにせよ、ギネス・ワールド・レコーズに「世界一参加人数が多いクイズ番組」として認定されるオバケ番組に。

 

徐々に減って行く

第10回(1990年)は、表示された人数を計算すると9万4365人。第13回(1993年)には6万8451人と一気に減少する。理由はイロイロあるだろうが、実はこの年、本家アメリカ横断ウルトラクイズが終了している。つまり、ウルトラクイズの衰退と高校生クイズの人気もかなりリンクしていたと思われる。

 

それでも第20回(2000年)は5万4813人と、ずっと5万人以上をキープしていた。

 

第23回(2003年)になると、「約5万人」とナレーションで言うのみで参加人数の表示がなくなる。この年、メインパーソナリティとして爆笑問題を迎え、翌第24回(2004年)からは全国の予選に芸人が登場する策で参加者増を図る。以降毎年、芸人やタレント、アイドルを予選地へ送るなどして人集めに努めている。

 

問題を優しくしたり、敗者復活を増やしたり、勝ち抜けやすいシステムを入れ込んで、「せっかく来たのに即おしまい」という失望感をなるべく軽減させ、負けても楽しめるイベントにしている。

 

この頃から地方大会の様子は本放送ではほぼ流さず、いきなり全国大会から始まるようになる(地区大会の模様を各地方局で特番として放送している場合もある)。

 

第28回からの5年間は(2008~2012年)、「知の甲子園」と銘打って、大人のクイズマニアでも超難問とされるクイズ大会に特化。視聴率は上がったけれど、同じ高校生からは「答えを聞いても理解できない」「こんな人に勝てない」という“ついていけない”声も多く、参加者は更に遠のく事態に。

 

ただ、これに始まったのかというとそうでもなく、かなり前から決勝戦レベルになると難問すぎて、よほど知識が高くなければ勝てない“諦めモード”が蔓延していたのは事実。“地区大会で勝てば東京に行けるという褒美、優勝すれば海外へ行ける褒美”は途方も無く、端から“勝つ力がない”という絶望感で打ち消され、参加意欲すら削がれていた。

 

これなら行ける? 魅力アリ?

第33回(2013年)は原点回帰とし、知力・体力・チームワークの総合力で勝負するコンセプトへシフトチェンジ。準々決勝はタイ、準決勝・決勝はフランスで行われた。ゲーム要素とクイズをミックスした大会で、高校生達にドラマがあって感動した。

 

第34回(2014)からはチーム3人1組から2人1組に変えて出場しやすくした(少子化の影響や予算の都合とかを考慮した策らしい)。

2回戦からアメリカを横断しながらニューヨークを目指す。かつてウルトラクイズで人気だった○☓ドロンコ、バラマキクイズなどの名物クイズを導入し、オールドファンを取り込んで視聴率アップにも務めた。

個人的には、クイズ形式がバラエティに富んでいて誰でも勝ち進める内容に変わりとても楽しめた。今年の第36回も同じ感じの内容らしい。

 

【大会会場へ行けばタレントに会える、優勝しなくても海外に行ける】

そんなニンジンをぶら下げてはいるが、今年のある地区大会には数百人しか集まらなかったと聞いたし、関東大会はかなり前からドーム球場ではなく小規模の会場で、今年は豊洲PIT(キャパ約3,000人)だ。近年の全国総参加人数は1万人くらいではなかろうか。とにかく厳しい状況が続いている。

 

憧れの番組になってほしい!

がしかし、今のシステムが現状最も高校生の参加意識を刺激するのではないか? 見ればわかるが、人より少しクイズ知識があれば、そして少し運があれば勝ち抜いていけるような…、いやいやぶっちゃけ誰だってアメリカぐらい行けるかも!?と期待させる内容だ。なので、このシステムをあまり変えず4、5年継続してみて欲しい。

 

というのも、“クイズ王は1日にしてならず”で知識を蓄えるには時間がかかる。知の甲子園レベルは並大抵の努力じゃムリだが、例えば今の中学生が「絶対高校生クイズで優勝してやる!」と発起してクイズ知識をつければ当然レベルは上がる。

だから問題も、偏差値が高い人が有利ではなく、博識であっても勝てる傾向にして欲しい。そもそも学校の勉強とクイズの知識は別物だ。壮大なことを言うようだが、クイズも競技人口の底上げが必要。高校生クイズを存続させるなら、そして盛り上げるなら土台作りも考えて欲しい。

 

流行は周期する?

 

ウルトラクイズはクイズ番組でありながら人間ドキュメント的な要素を含んだため人気を博した。時代は流れ、それが高校生版で受け継がれるかもしれない。クイズに正解する凄さ、敗れ去る者の寂しさ、仲間の大切さ、海外への憧れなど、様々な想いを凝縮させた感動的な番組が見たい。

子どもたちは色んなことを思うだろう。

単純にアメリカへ行きたい、優勝したい野望が芽生える、非日常を体験したい、新しい友だちができる、人生観が変わるかも、といった好奇心のスイッチを幾つも用意できれば、きっと多くの高校生が会場まで好きなスイッチを押しに訪れるはずだ。

 

生意気なことを言って、関係者さんからは大きなお世話だと言われそうだけど、

「高校生になったら高校生クイズに出たい!」と全国の子供達が憧れる番組として、ずっとずっとあって欲しいと願っているのである。1人のファンとして。

 

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この記事を書いた人

放送作家 石原ヒサトシ

放送作家 「クイズ雑学王」、「ボキャブラ天国」等 バラエティを中心にイロイロやってきました。なんか面白いことないかなぁ~と思いながら日々過ごしています。野球、阪神、競馬、ももクロ、チヌ釣り、家電、クイズ・雑学、料理、酒、神社・仏閣、オカルトなことがスキです。

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