世紀の誤審は防げなかった?ワールドカップクラスの主審でも緊張する一戦

2016/03/15
宮本 ゆみ子

サッカーファンにとっては、オフシーズンが終わるこれからが新しい1年。その幕開けを告げるのがFUJI XEROX SUPER CUPです。

 

1994年から続いているこの大会は、前年のJリーグ王者と、直近の天皇杯全日本選手権を制したチームが対戦するというもの。例年Jリーグ開幕の1週間前に行われることから、その年の最初の国内サッカー公式戦ということでもファンの熱い視線が注がれます。

 

今年は、昨年J1で優勝したサンフレッチェ広島が、天皇杯の覇者であるガンバ大阪を3―1で下し、この大会2年ぶり4度目の優勝を果たしました。

 

誤審が多いFUJI XEROX SUPER CUP

実はFUJI XEROX SUPER CUPは、何かと主審の判定にも話題が集まるのが特徴なんです。

 

2016年の試合では、笛を吹いたのは飯田淳平主審。後半10分、エリア内でスライディングしたG大阪の丹羽の腕にボールが当たったとして広島にPKを与えました。丹羽は「腕ではなく顔に当たった」と主張しましたが、判定は覆らず。広島の浅野がPKを決めて2点目を獲得し、この試合の流れを決定づけました。

 

このシーン、録画によるリプレイを見てみると、あきらかに顔に当たっているんです。それはもう気の毒なくらいに顔面に。後日行われた今シーズンの判定基準の説明会でも、日本サッカー協会の上川徹審判委員長が、この判定は誤審であったことを認めました。

 

とはいえ、丹羽はエリア内で、まるで全身を投げ出すかのように大きくバンザイをしてスライディングしています。顔の位置近くに、本来あるべきではない腕があったら、角度によっては腕に当たったと見誤っても仕方ありません。

 

2015年 G大阪×浦和レッズでの誤審

また、昨年のG大阪と浦和レッズの試合では、山本雄大主審のレフェリングが話題になりました。フィールドプレイヤーがゴールキーパーにバックパスする際、本来は足で蹴って渡したものをキーパーが手でキャッチすると反則になるのですが、それを見逃したり、相手選手がクリアしたボールを拾って攻撃しようとしたら、それがオフサイドの判定となったり、そのことに抗議した選手にイエローカードを出したり……

 

両チームのファン・サポーターでなくても不可解に思う判断が相次ぎました。

 

2008年はイエローカードが大乱舞

さらに2008年の大会では主審を務めた家本政明氏が、両チーム合わせて11枚のイエローカードと3枚のレッドカードを乱発。試合終了後も抗議する選手が押し寄せ、荒れた試合となった印象を残しました。

 

例年、この大会の主審を務めるのは、国際大会でも笛を吹くことができる国際主審の資格を持ち、かつ、「トップレベルの審判員」であるプロフェッショナルレフェリーです。過去5大会を見てみると

 

2016 飯田淳平(国際主審、PR)

 

2015 山本雄大(国際主審、PR)

 

2014 佐藤隆治(国際主審、PR)

 

2013 東城穣(国際主審、PR)

 

2012 西村雄一(国際主審は2014年で引退。PR)

 

前述のように、その年の最初の国内公式戦として注目を集める大会ゆえに、エース級の主審が配されているわけです。

 

2008年の家本主審の例でいえば、ひとつひとつの笛については大きく逸脱した判定ではありませんでした。

 

ただ、本来試合をコントロールしなければならい立場の主審が、コントロールできない事態を招いたとのことで、この試合の後に、無期限の担当割り当て停止の処分を受けています。

 

家本主審をよく知る人によると、とても正義感の強い人なのだとか。正義感が強くて、まじめ。決して悪い人ではありません。

 

 

 

 

私自身も、Jリーグのファンであり、応援しているチームを心から愛するサポーターの一人です。ファン・サポーターのはしくれとして、この文章は決して審判批判のために書いているのではありません。

 

試合中に起きたことについては、審判の判断が絶対です。けれど、審判も人間ですから、見誤ってしまうこともあるでしょうし、一瞬の判断の遅れが試合に影響してしまうこともあるでしょう。そのことで審判を責めることはできません。

 

ファン・サポーターができること

もちろん、審判の皆様にはよりクオリティの高いレフェリングを期待します。そして、選手の皆さんも、紛らわしいプレイがなくなれは審判が誤解をしたり判断ミスをしたりするのが防げるかもしれません。

 

ファン・さぽーたーがもっと審判に注目するのも、試合環境の向上に役立つのではないかと思います。Jリーグの試合で笛を吹く主審の名前、あなたは何人くらい言えますか?

 

特定のチームの熱心なファン・サポーターであっても、審判の名前をすらすらいえる人はあまり多くはないのではないでしょうか。ご自身が審判員の資格を持って、普段から審判に関心高い人は別でしょうけれど。

 

誤審があったときだけ審判を名指しで批判し、糾弾するのではなく、普段からその主審がどんなパーソナリティでどんな笛の特徴があって、どんな名判定をして試合をコントロールし、面白いゲームにしてくれたか。

 

そちらのほうにも注目してみると、もっともっとJリーグの試合が楽しくなるんじゃないかなあと感じています。

 

 

 

 

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この記事を書いた人

宮本 ゆみ子

局アナ出身のフリーアナウンサー 兼ビジネス書を中心としたブックライター。FC東京スキが高じて調布エフエム「FC東京サッカー中継」ピッチレポーターに。13年目のFC東京SOCIO&ビグフレ会員。

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