「睡眠」を福利厚生から「経営投資」へ。大分から変える組織の生産性と未来

2026/10/01
マガジンサミット編集部

近年、健康経営において「睡眠」の重要性が急速に高まっている。大分県を拠点に、睡眠課題に寄り添うコンサルティングを展開する鷲野代表は、一時的な癒しにとどまらない、客観的データに基づく睡眠教育の普及に尽力する。組織の生産性向上や産業保健体制を支える、その画期的なビジネスの本質に迫る。

離職率や品質低下に直結する睡眠負債。可視化される経営課題の危機

働き方改革や健康経営の文脈で、睡眠の捉え方が変化している。以前は福利厚生の一環として「何か新しいことを」という曖昧な位置づけだった。しかし現在、離職率の増加、メンタル不調による休職者数、生産性の低下といった具体的な経営数字と睡眠を結びつける経営層や人事担当者が急増している。

特に製造業などの現場労働を伴う企業において、交代勤務や長時間労働に起因する睡眠負債は深刻だ。ヒヤリハットや重大な品質トラブルを直接的に誘発するリスク要因として、強い危機感をもって認識されている。

一方で、現場の社員側には「寝ているのに疲れが取れない」「休日に寝だめしてもきつい」といった悩みが蔓延している。ここで生じている最大のギャップは、「睡眠時間さえ確保すれば解決する」という一般論の罠である。

個人の体内時計の特性や睡眠負債の蓄積パターンを無視し、「7時間睡眠」という画一的な基準を目指して自身を追い込むケースが後を絶たない。メンタルヘルス不調の未然防止という観点からも、産業医や保健師からの共同相談が増加しており、組織の土台を揺るがす深刻な健康課題への根本的なアプローチが不可欠となっている。

一過性のセミナーで終わらせない。個別面談による行動変容を促す仕組み

企業の健康経営において最も陥りやすい誤解は、「一斉セミナーで知識を伝えれば行動は変わる」という安易な前提である。栄養学の知識があっても食生活を直ちに改善できないのと同様、「早く寝るべきだ」という正論は、多忙なビジネスパーソンにとってプレッシャーとなり、かえって自己否定の契機にすらなり得る。そこで求められるのが、医療の客観性にも通じるファクトベースのアプローチである。

同社はまず、「睡眠タイプ診断」を実施し、個人の体内時計の傾向や睡眠負債の状況を可視化する。「なぜ自分は眠れないのか」という原因をロジカルに腹落ちさせることが第一歩だ。その上で、個々の生活導線に無理なく組み込める「小さな行動」を一つだけ選択させる。

さらに、知識の提供は一度の研修で完結しない。人間の行動変容には定着のプロセスが必要であり、単発の講演では一週間で効果が失われる。そのため、複数回の個別面談を前提とした伴走型の支援体制を構築している。「話を聞いた」という表面的な段階から、「睡眠への向き合い方が根本的に変わった」という持続的な状態まで丁寧に導く緻密な仕組みが、行動変容の定着を後押ししている。

産業保健体制が手薄な中小企業を救う。地方発の伴走型睡眠コンサルティング

この取り組みの核は、画一的なオンライン診断やeラーニングに依存せず、一対一の丁寧なカウンセリングによる「睡眠の答え合わせ」を徹底している点にある。勤務体系、家庭環境、個人の体質により、睡眠阻害の原因は体内時計のズレから就寝前の思考の反芻まで多岐にわたる。個々の課題構造を精密に紐解く非効率とも言えるプロセスにこそ、確かな価値がある。法人向けには、経営者自身に最初の体験フェーズへ同席してもらうプロセスを重視する。トップが自ら睡眠と向き合う姿勢を示すことが、現場への浸透速度を劇的に高めるからだ。

また、提供する価値は一時的な癒しである「施術」ではなく、「教育・知識」の定着に置かれている。リラクゼーションは気づきを得る入り口に過ぎず、最終目標は社員一人ひとりが自立して睡眠を管理できる状態の実現である。大分という地方から発信する理由は明確だ。大手企業のような手厚い産業保健体制を持てない地域の中小企業こそ、こうした伴走型支援を強く必要としているからである。地方の社会インフラとして、地域企業の健康と生産性を底上げする独自のビジネスモデルがここにある。

組織の持続的な成長において、睡眠対策を福利厚生の一項目から「経営投資」へと捉え直す視点の転換が求められている。睡眠は、生産性、創造性、意思決定の質を規定するすべての土台である。この基盤への投資は、成果が数字に表れやすい合理的な経営施策と言える。日々の睡眠を記録し客観的に把握するという個人の小さな一歩が、やがて強靭な組織を創り出す。地方から全国へ波及する睡眠教育は、企業の未来を切り拓く確かな羅針盤となるはずだ。

■取材協力:

株式会社くものうえ

代表取締役 鷲野 祐子

https://www.suimin-kumonoue.com/

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