いまでは生活のなかで欠かせないツールとなったインターネット。その普及などで、教育の世界も大きな変化の波が押し寄せている。
文部科学省はこうした時流にあわせ、実践的職業教育を行う専修学校の人材養成機能の充実・強化をめざした社会人向け教育プログラムや教育カリキュラム開発、産学連携教育ガイドラインの作成などを推しすすめる「専修学校における地域産業中核的人材養成事業」をスタート。
同事業に採択された「次世代インターネットの利用環境整備に向けた産学官連携認定プログラム」に、埼玉工業大学を代表校とする4つの大学(埼玉工業大学、東北福祉大学、千葉商科大学、東京工科大学)と3つの専門学校(日本工学院専門学校、日本工学院八王子専門学校、京都コンピュータ学院)が参画。
その成果報告会が、埼玉工業大学で2月28日に開催され、文部科学省高等教育局専門教育課教育振興係 三田洋介係長や、埼玉工業大学 井門俊治名誉教授、 同大 松川聖業理事長らが登壇。文科省の採択プロジェクトであることから、文科省 三田洋介係長の開会挨拶で成果報告会が始まった。
DCA資格認定への期待…埼玉工業大 内山俊一学長
埼玉工業大学 内山俊一学長は冒頭、「次世代インターネットの利用環境整備に向けた産学官連携資格認定プログラム」は、インターネットコンテンツ審査監視機構が提唱し、普及をめざしているデジタルコンテンツアセッサ(DCA)の資格認定。これを、大学や専修学校の講義をとおして資格認定を行っている」と伝え、認定プログラムへの期待についてこう語った。
「こうした資格は、まだまだ認知されてない面もあるが、インターネット普及やコンテンツのコンプライアンスなどに不可欠。今回の報告と議論が社会にとって、実施大学、連携機関にとって有意義なものになれば」(内山学長)
SNS活用講座に手応え…埼玉工大 井門俊治名誉教授
埼玉工業大学 井門俊治名誉教授は、インターネットコンテンツの健全性に向けた資格認定制度の概要について報告。
デジタルコンテンツアセッサ(DCA)の資格には、おもに1・2・3級の3段階が設定されている。井門教授は、「3級がユーザーレベル、2級が特定サーバー管理者などが該当するマネージャーレベル、1級が、DCA資格取得の研修で講師を務めることができるエキスパートレベル」と説明。
また今回のプロジェクトで埼玉工大は、SNSをもっと活用して地域産業に貢献することをめざす「SNS活用講座」を計画。埼玉県深谷市や宮城県南三陸町、長野県坂城町の3地域で、SNSを活用したセミナーを実施。
小中学校では、インターネットを活用したプログラミング授業を実施。授業を通じて得たヒントをもとに、高校生むけスマホ安全講座やSNS活用講座、社会人むけSNS活用入門、Instagram・Facebookのビジネス活用といったテーマの教材を開発し、連携機関などに公開した。
高校生、中学生、小学生、社会人を対象にした同セミナーで、合計43回の講習会を開催。合計1400人以上の受講があったと伝えた。
この演台に座る、赤いタコのキャラクターは、南三陸町の名産品のひとつ、赤いタコをモチーフにしたオクトパス君。SNS活用セミナーを実施した南三陸町の“合格祈願キャラ”も登場し、会場に彩りを添えた。
DCA資格制度のビジョン…I-ROI 白鳥令代表理事
インターネットコンテンツ審査監視機構(I-ROI)白鳥令代表理事は、DCA資格制度のビジョンについてこう伝えていた。
「まず、DCA2級を特定サーバー管理者むけの標準資格となることをめざす。3級は、大学卒業生、小中学校教員、自治体職員にとって3級が必須資格に。また、ことし6月から富士通の協力によるEラーニング提供で主婦や市民にも資格取得の機会をつくる」
「高校生むけDCAジュニア、小中学校むけDCAキッズの開発で資格対象者のすそ野を拡大させる。また、諸外国のコンテンツ規制制度との連携をめざしたい」(白鳥理事)
学生たちの目標が明確になった…東北福祉大 高橋俊史助教
「ネットリテラシーの社会問題」「SNSなどを安全に活用できる人材が重要」などを感じていた東北福祉大は、I-ROI のDCA資格制度に共鳴し、2014年度から副専攻というかたち全額共通で履修可能なDCA資格制度を導入。
同大 高橋俊史助教は、「このDCA資格制度導入によって、DCAの学内認知度が向上したうえ、情報リテラシー教育の改善が図れた。DCA資格が授業3つを履修することで取得できることで、学生たちの目標を設定しやすくさせたと実感している」と語っていた。
また、千葉商科大学の柏木将宏教授は、DCA3級認定のための修得科目を紹介。情報基礎を必修とし、情報資源管理(iコンプライアンス)、情報科学概論・ネットワーク社会論・Web情報デザイン・ネットワーク管理I(インターネット&デジタルコンテンツテクノロジー)、インターネット社会論(ネットワークリテラシー)のうちいずれか一科目の修得が要ることを伝えた。
最後は「日本一優しいSNS教室」を主催する小島みどり氏、インフルエンサ(インターネットの世界で影響力の大きい人物)として注目されている吉田茂氏らが登壇。
小島氏は、高校生や集客に悩むユーザーむけに講座を開いた小島氏は、成人式の「はれのひ」事件や、飲食店探しに活用されているInstagram、キャンペーン拡散のためのハッシュタグなどのSNS事例を紹介。高校生には、公序良俗違反や位置情報漏洩など「やってはいけないことについて伝えた」と報告した。
また吉田氏は、郷里の大分県佐伯市のSNSによる地域活性化の実践的な取り組みについて報告した。
また総評には、学校法人智香寺学園 松川聖業理事長が登壇。「大学の使命は、教育、研究、社会貢献。地元の酒造と米からつくるプロジェクトや、製麺工場と組んでパッケージデザインに取り組んだりと、地域に根ざした取り組みも行っている。今後も、どうやったら地域から必要とされる存在になるかを考えアクションを重ねていきたい」と語っていた。