ブラック企業、ブラックバイト、ブラック部活……。
行き過ぎた仕事や活動が世間からバッシングされ、しばしば社会問題になっているが、これらはけっして対岸の火事ではない。むしろ、いずれは自分の身に振りかかる出来事と思って備えておくべきだ。
長時間労働、サービス残業、パワハラまがいの指導、恫喝、懲罰、罰金、やりがい搾取……。表面化しにくい真っ黒過ぎる社会の闇に対し、いったいどんな回避策を講じればいいのか。
会社全体が敵になったとき
今年、世間の注目を集めたブラック企業といえば、「アリさんマークの引越社」だろう。
男性社員が劣悪な労働環境に異を唱えようと労働組合に加入したところ、“追い出し部屋”であるシュレッダー係に転属させられ、無効を訴えると懲戒解雇のうえ、「罪状」と題した紙が全支店に貼り出された。事の経緯はネットに譲るとして、ここで考えたいのは、もし、自分がターゲットとされ、会社すべてが敵になったら、どうすればいいのかということだ。
まず、現実問題として真正面からぶつかったところで勝ち目はない。
雇用契約を結んでいる以上、被雇用者の立場で上に訴えたところで声が届く可能性は低い。運が悪ければ、自主退職を迫られるように仕向けられることもある。手を差し伸べてくれる仲間もいないだろう。とすると、やはり助けを求めるべきは「中」ではなく「外」だ。つまり、「労働組合」のような団体である。
「外」に助けを求めるべきメリットとは?
先ほどの男性が加入したのは、個人加盟の労働組合「プレカリアートユニオン」。全国に数ある労働組合のうちのひとつだ。労働組合とは、働く人の労働環境や雇用条件の維持改善を手伝う組織で、加入すれば「個人対会社」ではなく「労働組合対会社」として交渉できるなど、個人では難しかったこともできるようになる。活動の幅が広がるのだ。
ただ、経営側からすれば“厄介者”というレッテルを貼られる可能性もある。それ相応の覚悟は必要だろう。とはいえ、先の男性のように泣き寝入りしたくないという場合は、心強い味方になってくれるのは事実。まずは相談してみるのも一つの手だ。
資料、音声、日報、メール、写真…を残せ。
ブラック組織と対峙する場合、いかに相手の行為が不当なものかを客観的に示す必要がある。そのためにもやはり記録は欠かせない。第三者が見ても明らかにおかしいと判断できるものがいいだろう。
たとえば、上司の罵詈雑言やパワハラなどは日報に記録する。さらにテープレコーダーで録音しておけば裏付けも取れる。スマホで録画したり、上司や管理職からのメール、メモなども重要な証拠だ。会社の不当性を遡って確認するときに、これらを検証するだけで事実がはっきりとわかる備えが必要なのだ。
アルバイトの学生に恫喝や暴力行為を行ったとして問題となった「しゃぶしゃぶ温野菜」の件では、被害学生がテープレコーダーで勤務時のやりとりを記録し、それが揺るがぬ証拠となった。「自分の身は自分で守る」は被害者側として精神的にも苦痛だろうが、やらないよりは、断然やったほうがいい防衛策だ。
「辞める」は決して逃げじゃない
相手と敵対して戦うことは楽なことではない。周囲の空気に敏感な若者ほど、他人の目線が気になってしまい、真っ当に戦うことさえ難しいだろう。ただ、それでもやはり自分に対する対応が指導の域を超えていたら、「辞める」という決断も大事だ。
「ブラック部活」のようなケースの場合、学生からすれば「辞める=逃げ」という後ろ向きのイメージが強いかもしれないが、身体を壊すよりはよっぽどマシだ。それでも、自分で判断に迷うときは、保護者や信頼のおける大人に相談して、状況を見てもらうのもありだろう。
困ったときは自分だけで判断せず、周りの力を積極的に求めて、事態の回避を考えるのが得策かもしれない。