コロナウイルス感染拡大をきっかけに、日本でも急激に始まったビジネスのデジタル革新。在宅ワークやオンライン上での営業など、新しい働き方に戸惑い悩まれている方もいるのではないでしょうか。
デジタルシフトの波に乗り遅れることなく、今後も事業成長を続けていくためにはどのような取り組みが必要なのか。今回は、オンライン営業システム「bellFace(ベルフェイス)」の開発・販売を行うベルフェイス株式会社(以下 ベルフェイス社)が主催したオンラインイベント『2020年代のデジタル変革と組織&営業の在り方』の模様を参考に、新しい組織開発や求められるビズネスマンの姿について考えてみたいと思います。
今、成果を挙げているビジネスマンはどんな人?
オンライン上での営業は “リモートトラスト(Remote trust)”の構築が重要になってきます。実際に会ったことのない顧客から信頼を獲得するために、まずは基本的なマナーが出来ているかが大切です。
恋愛リアリティー番組「バチェラー・ジャパンシーズン2」に2代目バチェラーとして出演した「株式会社GHOST」の代表取締役CEO小柳津林太郎氏は、「リモートでは、知識や経験といった個人スキルと同時に(場合によってはそれ以上に)web環境がコミュニケーション力に影響する。だからこそ、相手がスマホなのかPCなのかなど、置かれた状況を想像してあげられる思いやりが大切になる」と話します。
在宅ワークだからといって身だしなみを整えない、声が遠い、暗い画面で話す、画面に対して姿勢が悪いなど基本的なマナーの改善のほか、丁寧な事前アジェンダの通知など、離れて仕事をする相手への気遣いが必要です。
また、合理的である意味“味気ない”会話が多くなりがちなオンラインでは、「相手をリラックスさせ楽しませることができる話術やエンタメ力が、今まで以上に必要かもしれない」と小柳津氏は感じています。話術が苦手ならば場を和ませるようなスタンプの活用など、ビジネスの場でも、そういったツールを適切に使い分けられるセンスを磨くと好感度も上がります。
一方、「トレンダーズ株式会社」の執行役員 松倉寛之氏は「コミュニケーションコストが少なくすむ能力」が必要だと言います。リモートワークでは、従来のように社内にいる相手に気軽に要件を確認するといったアクションが難しく、何度も連絡を取ることができません。チャットやSNS、メールなどのテキストコミュニケーションの頻度が高くなるなか、少なくとも5W1Hを正しく記すことは基本であり、一度で要件を伝えられるスキルを磨く必要があります。
「在宅ワークになったからこそ、心身ともに健康的な人が求められる」と話すのはベルフェイス株式会社取締役 営業責任者の西山直樹氏です。半強制的に社会の枠組みや規則によって管理されていた部分をセルフコントロールしなければならない時代に、常に安定したパフォーマンスを発揮するためには「生活にメリハリをつけ、できれば積極的に身体を動かし外に出ると良い」とアドバイスします。
ちなみに西山氏は、天候が良ければ早朝7キロのウォーキングをする習慣を、松倉氏は運動や料理など好きなことをして気分の切り替えを、コロナ禍でタクシーや公共機関を使うことが少なくなったという小柳津氏は「その分を歩くようになり、考えもまとまるようになった」と、それぞれにメンタルと体調の管理を心掛けているそうです。
営業のデジタル化がすすむメリット・デメリット
マンパワーに頼っていた営業をデジタル化することにより、どのようなメリットやデメリットが発生するのでしょうか。またデメリットにはどのような対処が必要なのでしょうか。
松倉氏は「圧倒的に効率が良くなる。ログに残し蓄積した膨大なデータを社内共有することで、足で稼ぐといった経験値が必ずしも必要でなくなり新人でも即戦力になれる」と、営業スキルが平均化できる点をメリットとして挙げます。
確かに、営業実績やマーケティングデータを活用した戦略はもとより、教育面では、エース営業マンの一流プレゼンをログ化したものを誰もが研究でき、新人は教育者(先輩営業マン)の個人的な経験や癖から生まれた価値観を押し付けられることが減るでしょう。
一方で西山氏は「必ずしも平均化が良いわけでない」と話します。「合理化されすぎた組織は分業しているが故に、それぞれの仕事が局所的になってしまう。また、スキルが平均化されることで属人性が排除されてしまうため、自分で考え自分なりの方法で成功を掴んでいる人にとってはつまらない職場になる」とデメリットを挙げ、個人のスキルを伸ばす方法は様々あり、社内でその方法を自由に選択できる制度があって良いと思うと提案しました。
小柳津氏は、デメリットとしてオンライン上では誰もが平均的な関係になりやすく相手の記憶に残り辛いと指摘。記憶にのこる営業マンになるためにも「画面共有力」を上げる必要があるとアドバイスします。
オンライン上では、モニター画面ごと自分自身であり会社の姿です。自分はモニター越しにどのように見られているのか? 作成した資料やファイル、スケジュールはweb環境を含めて見やすいか? などの工夫や心掛けひとつで相手の記憶にも残りやすくなるのです。
小柳津氏は、「名前や役職、プロフィールなどを入れたオリジナル背景をTPOにあわせて制作することで名刺代わりにもなる」と提案し、こういうことに気が付けるスキルが今後、ますます大切になってくると話しました。
多様化する働き方と社内コミュニケーション
在宅ワークやリモートワークが主流となり、組織という概念が薄くなりつつあるなか、企業は従業員とどのようなコミュニケーションを育んでいけばよいのでしょうか。
西山氏は、「リモートワークでは、部下の不調を見逃してしまうなど些細なシグナルを感じ取りにくくなるのが悩み」だとし、「そのためにも定期的に会う場を設ける工夫が必要だと思う。また、特定のメンバーのみと繋がっていると視野が狭くなるので、交流のない部署の人とのコミュニケーション機会を増やす努力を」と提案します。
その一環として、ベルフェイス社では従業員のエンゲージメントや連携を強化するための社内ツール「Unipos(ユニポス)」を使っています。従業員同士が感謝の言葉とポイントをリアルタイムに送り合う「ピアボーナス®機能」を利用し社内コミュニケーションの促進をはかっているそうです。
小柳津氏は、デジタル化で作業効率が上がった分、処理しなければいけないタスクに追われミスリードが起きやすくなっている現状や、ライトにコミュニケーションができるチャットやSNSでは「言った、言わない」など、仕事に対する認識の齟齬が生まれやすい例を挙げ、そういったミスコミュニケーションを生まないためにも、カレンダーは週一回必ず棚卸し、タスク管理はアラートを設定するなどの細かいフォローや工夫が必要だと感じているそうです。
また、社内ではドラマや映画、漫画など同じコンテンツを消費することでコミュニケーションのきっかけにしているそうで、その話を聞いた松倉氏は、「社内チャットのグループ名のなかに、恋愛リアリティー番組「バチェロレッテ」の番組名が混じっていたことを挙げ、新しい話が配信されるたびにチャットで盛り上がっていた」というエピソードを披露。社内で共通言語を生むシステムや、それを作ることでコミュニケーションの糸口をつかむ方法に共感しました。
より成果を挙げるために、今後の営業に求められること
松倉氏は、「リアルなコミュニケーションの機会が減ったからこそ、これからは自ら情報を発信する人のところに情報が集まる。デジタルシフトすることで生じるビジネスチャンスに敏感に反応できて気が付ける人、自分で工夫し仕事を造り出せる人材が活躍するのではないか?」とし、社会の変革時には「配慮はするが遠慮はしない、社内外から仕事を摂れる積極性があり、強いリーダシップのとれる人材が欲しい」と結びました。
西山氏は、「浅く広い知識をもった人よりも、自身の強みを客観的にとらえることができ、成長する産業を見極めている人が求められる。ひとりでできることは限られる。自分の得意分野を極め、組織に貢献できる人材が好ましいと思う」
小柳津氏は「オンライン上では、表情や目線、身振りや手振りといった非言語コミュニケーション能力が発揮しづらく、合理的でスムーズな会話やテキストコミュニケーションが求められるからこそ、より相手への配慮が大切になり、礼儀やマナーなど人としての本質が問われる」とし、相手に合わせられる心構えと気遣いが、より豊かな成果に結びつくとしました。
ちなみに、ベルフェイス社で行った音声の解析によると、ハイパフォーマーほど顧客と話す速度が噛み合うというデータがあるそうです。無意識のうちに相手の話す速度に合わせて会話する能力がある人は、商談がまとまりやすい傾向のようです。