企業と顧客をつなぐコンタクトセンターにAIを導入し、「迅速な対応」「ネガティブ体験解消」「ニーズ抽出「素早いフィードバック」の創出を-。
富士通株式会社は11月8日、顧客接点の高度化を実現する「FUJITSU Business Application CHORDSHIP(コードシップ)」の販売をスタートさせ、東京・蒲田にある富士通ソリューションスクエアのPLYで発表会を行いました。
「CHORDSHIP」は同社のAI技術を活用し、高精度応対が可能なチャットボットの導入、コンサルティングから稼働後の運用支援などを組み合わせたソリューションサービス。当日は、執行役員常務の宮田一雄氏と執行役員の今田和雄氏がそれぞれ登壇し、デジタル変革実現に向けた同社の取り組みなどを発表しました。
宮田氏は「日本におけるデジタル化に取り組むユーザー企業の悩みは“スキルやノウハウの不足”である」と指摘。同社は今年5月から組織、人材、技術の強化と共創の場を拡大するデジタルイノベーションを推進してきました。7月からプロデューサー、デザイナー、デベロッパーを集合研修で育成し、来年1月から60人のデジタルイノベーターが実践に投入されます。「合計1,200人のデジタルイノベーターを排出し、タイムリーに人材を調達できていない日本の現状を打開していく」と話しました。
独自技術で高い正答率を実現
顧客関係のデジタル化については、今田氏が説明。「コールセンターやヘルプデスクといったコンタクトセンターは慢性的な人材不足」と語りました。企業と顧客の関係はこれまでより一層、深いつながりと常時接続性が求められます。
つまり、企業と顧客の接点であるコンタクトセンターは非常に重要で、AIを実装する企業も増えてきました。今田氏によると「少量の教師データでディープラーニングを実践しても、回答精度は20%~50%程度。とはいえ回答精度を上げるには膨大な教師データが必要になり、現実的には困難である」とし、「少量の教師データでも回答精度の高いAIが求められている」と、「CHORDSHIP」リリースの経緯を説明しました。
「CHORDSHIP」は、チャットボットに富士通独自の「対話・機械学習ハイブリッドAI」を搭載。リランキングを常に行うほか、質問者の言葉のゆらぎを吸収し、少ない情報でもヒットさせるといった特長を持っています。「これは、コールセンター業務を手がけている富士通だからこそ可能な技術」と今田氏。
川崎フロンターレなどがすでに運用開始
その後行われたデモ体験では、すでに「CHORDSHIP」を導入してサービスを開始したサッカーJ1の川崎フロンターレと家事代行シェアリング「株式会社タスカジ」の事例を紹介しました。
川崎フロンターレは公式アプリにAIチャットボットを利用。「チケットはどこで購入すれば良い?」「クラブ会員の特典は?」「スタジアムへのルートは?」といった質問に対し、同チームのマスコットキャラクターふろん太君が回答します。顧客の生の声がたまるので、イベント結果の分析や新たなファン獲得に役立つことが期待されています。
タスカジはWEBサイト上でAIチャットボットを実装し、従来FAQでは拾いきれなかった「食あたりが起きたら補償はどうなる?」など、ユーザー目線の言葉にも対応する仕組みを作りました。
利用者の疑問を解決するまでエスカレーションするシステムになっており「回答候補を提示する」、「絞り込みや言葉の補正」、「有人チャットへ案内」といった対応が施されています。
通常、オペレーターが利用者の質問に答えるには脳内変換が必要です。質問者の言葉の意図を理解したり、クレームを処理するのは相当なストレスがかかるでしょう。
学習していくAIの力を使い、蓄積した情報をヒトが顧客満足度向上のために戦略を練る。AIとヒトが見事に融合したサービスが誕生したのです。