"少年A"を映画に…
当時、14歳による殺人事件である「神戸連続児童殺傷事件」。通称、「酒鬼薔薇聖斗事件」。
この事件で有名になった"少年A"という表記。本作のキャッチコピーにも「心を許した友は、あの少年Aだった。」とあります。その少年Aの贖罪を題材にしたフィクションが現在公開中の映画『友罪』なんです。
2人の主人公
本作は、とにかく豪華キャスト。もはや、芸達者たちの演技合戦なレベル。中でも、主人公の、駄々こねた子供のように喋るコミュ障の瑛太が素晴らしいです。一見して、やり過ぎるとドン引きなキャラを絶妙なバランスでリアルに演じてます。
もう一人の主人公である生田斗真が演じるのは、元記者。2人の主人公は、同じ日に工事へ入社。同期で同じ寮の為、親睦を深めていきます。決定的なのは、学生時代の自殺したイジメられっ子に瑛太が似ている……という事。同級生の自殺は記者になるキッカケであり、未だ、自殺した同級生の母親に会いに行く程のトラウマになっています。
それが、明らかに浮きまくってる瑛太への興味から友情へ変わり、さらに複雑な感情へと変わっていく機微を見事に表現している生田斗真。ジャニーズとは思えないです。観てる間、忘れてました。
元少年Aとどう接する?
で、なんで複雑な感情になっていくかと言うと、元少年Aだと解っちゃうんですね。山本美月の演じる元カノで元同僚の記者が、ある事件を調べており、生田斗真に相談して来ます。それが、瑛太の起こした殺人事件だったんですね!
写真を見て、「うわっ、これ、あいつだよ!」なんですね。そこから、2人の関係は友情と探りが同居したソワソワな関係に。
元AV女優の悲劇
その頃、瑛太はたまたま男に襲われそうになっていた夏帆の演じるメガネっ子を助けるんです。実は彼女、元AV女優。上京して元カレに騙され、AV出演。未だに、その元カレに追い掛けられ、脅迫されているというハードなバックボーンの持ち主。
加害者の父
さらに、これらのエピソードと同時進行で息子が殺人を犯した事で後ろ向きに生きるタクシー運転手役を佐藤浩市が演じています。未だに、被害者遺族への謝罪を繰り返し、出所した息子とは対立関係。これらの人々による贖罪の群像劇になっています。
こだわりの"現在"描写
本作のメガホンを取ったのは、『ヘブンズ・ストーリー』や『64ーロクヨンー』など社会派シリアス群像劇に定評のある瀬々敬久監督。これだけ過去に縛られた人々が登場しながら、瀬々監督は、頑なに回想シーンなどで安易に過去を語るような事はしません。あくまでも、現在の苦悩にのみスポット当て、登場人物たちの旅路を静かに見守る演出になっています。
確かに、不幸のつるべ落としのような作品ですが、普段の生活の中で、ニュースやテレビでは目の届かない部分に焦点を合わせているのが本作の魅力なんです。