漫画好きにとっても読書家にとっても、ちょっと興味深い読み物のニュースが飛び込んできた。
昭和に少年チャンピオンで連載され大ヒットした漫画3作が、名だたる小説家の手で蘇りノベライズ化される。
『ブラック・ジャック(手塚治虫)』を瀬名秀明が(「パラサイト・イヴ」等)
『恐怖新聞(つのだじろう)』を大石圭が(「呪怨」等)
『エコエコアザラク(古賀新一)』を岩井志麻子(「ぼっけえ、きょうてえ」等)
これは、株式会社秋田書店、株式会社誠文堂新光社、株式会社パルプライドで創られた新レーベル
【APeS Novels】(エイプス・ノベルズ)が企画したもので、第一弾として2019年7月16日(火)に刊行する。
いずれも原作の登場人物などの設定はそのままに、ストーリーを現代に合わせて新たに書き下ろしたオリジナル作品になっている。昭和と令和の時代ギャップをどんなふうに埋めているのかとても楽しみ。
以下は、サイトにある紹介コメントだが、個人的な思いも込めた一言をちょっと添えて…。
【小説 ブラック・ジャック】
「現代にもしブラック・ジャックがいたら・・・」誰もが思い描いたことのあるそんなファンタジーが、小説家・瀬名氏の筆によって小説として蘇る!!
「医療ロボット」「iPS細胞」「終末期医療」などの現代医療、さらにはそれを飛び越え近未来をも予感させるテーマで描かれる、ブラック・ジャックの活躍。
そして、それぞれの事情を抱えた患者たち・医師たちと、無免許の天才外科医の邂逅が紡ぎ出すヒューマンドラマ。もちろんピノコやドクター・キリコといった作品キャラクターは言うに及ばず、思わぬ手塚キャラたちとも再会できる一冊。「今、本当にブラック・ジャックがいたら・・・」、それが小説で現実化。
ブラック・ジャックには、“名言”がすごく多く残る作品ともされている。
有名なのは、恩師である亡くなった本間丈太郎がブラック・ジャックにかけた一言
「人間が生きものの生き死にを、自由にしようなんておこがましいとは思わんかね………」(「ときに真珠のように」より)。
個人的に好きなのは、「医者は人のからだはなおせても…ゆがんだ心の底まではなおせん」(「灰色の館」より)。
このような数々の名言まで小説の中に入っているだろうか?
【小説 恐怖新聞】
UFO・超能力・心霊現象など、オカルトブームに沸いた「昭和」。「Jホラー」映画が数多く制作された「平成」。
その、2度の「恐怖」ブームのどちらにも深く関わりを持つ、つのだじろう氏の傑作オカルトホラーコミック『恐怖新聞』が、「令和」の時代に小説として新たな命を吹き込まれ蘇る。
執筆には、流麗な文体でグロテスクな恐怖を描く数々のホラー小説で人気を博す大石圭氏を迎え、死を予言する異様な新聞に、不運にも魅入られてしまった美しき女子大生の体験する恐怖として、再構築された『恐怖新聞』の世界が繰り広げられる。
1973~1975年の期間の29話しか連載されていないと知って驚いた。
当時はテレビやカメラが庶民の手に入るようになった時代で、心霊写真が話題になったり、ユリ・ゲラーの超能力ブームやUFO・宇宙人の目撃情報というアメリカからオカルト情報が流行り、“解明できない未知のもの”が人気になった。
恐怖新聞は突然窓ガラスをぶち割って届けられたりするが、この新聞は“新聞配達員だった人の霊”が届けているそうだ。
【小説 エコエコアザラク】(8月6日発売)
「エコエコアザラク、エコエコザメラク…」どこからともなく聞こえてくる妖しい呪文と共に黒井ミサが帰って来た!!
あるときは災いの象徴として、またあるときは自分に害を為した者への復讐劇として描かれることの多かった黒井ミサとその物語。悪霊の力を借りて執行される呪術という神秘的なイメージと相まって、昏い魅力に溢れた『エコエコアザラク』のイメージはそのままに、情念を描いた作品で人気を集める岩井氏の筆によって、人々を惑わせる「運命の女」黒井ミサへと昇華され、あたかも幻想文学をも想起させる・・・。
当時は、嫌いなやつに対して「エコエコアザラク」と怨念を込めて唱えるほど流行った。というかマンガの中身はともかくタイトルが独り歩きするほど知れ渡った。ドラマや映画など何度も制作されている。
主人公・黒井ミサは中学3年生で魔術を扱って悪いやつを殺すが、特に性犯罪者に対しては残虐で凄惨なやり方で殺めていた。もしこの性犯罪部分をあの岩井志麻子さんが活字で描いたらと、ちょっと楽しみである。