すでに暑い日があり、今年の夏は暑さが気になるところ。熱中症対策は万全にしておきたいですよね。
特に屋外でサッカーなどのスポーツを楽しむ場合、暑さ対策は万全にしておかなければなりません。そこでどのような対策が効果的なのか、プロサッカー選手の実践方法を、日本サッカー協会(JFA)に伺いました。
プロサッカー選手の暑熱対策
プロサッカー選手は、いくら暑くても試合に集中し、結果を出すことが求められます。暑さでバテるなどということは許されない世界です。日頃からしっかりと対策を立てているのです。
日本サッカー協会(JFA)によれば、プロのサッカー選手は、暑熱対策として主に次のことを実施しているといいます。
「暑熱環境下でパフォーマンスを維持するために重要なのは、水分補給と体温冷却です」
1.水分補給
●練習前や試合前にペットボトル1本分を飲む
「暑熱環境下の脱水は非常に危険であり、脱水で体重の2~3%以上が減少すると、運動能力(パフォーマンス)に影響が現れるといわれています(Bangsbo, 1992)。脱水が起こると、末梢血管が収縮し血流が悪くなります。体の表面をいくら冷却しても、血液が流れなければ体内の熱の逃がすことができません。
選手たちは、『熱中症にならない』ことではなく、暑熱下で『高いパフォーマンスを上げる』ことが求められるので、体を動かす前から「脱水状態」にあってはいけないのです。そのため、練習前や試合前にペットボトル1本分、つまり500mlの水やスポーツドリンクをとり、最低限、体内で脱水が起こらないよう対策をしています」
●推奨ドリンクはスポーツドリンクや経口補水液
「ドリンクはスポーツドリンクや、より体に吸収されやすい経口補水液を推奨しています。大量の汗をかくと、水分とともにナトリウムなどミネラル分が奪われます。ナトリウム不足は痙攣を起こし、パフォーマンスに影響を及ぼすため、いち早く体内(血管内)に吸収される飲み物がいいでしょう。
経口補水液は、日本ユニセフ協会が、自宅での作り方を紹介しています。沸騰殺菌ののち湯冷ましした1リットルのお湯に、砂糖小さじ6杯、塩小さじ2分の1杯を混ぜるという非常に簡単なものです。ナトリウム摂取にはおすすめですが、甘さがないと飲みにくいという選手もいるため、スポーツドリンクと水の併用など、選手の好みを大事にしています。
また、効率よく身体を冷やすために、シャーベット状の飲み物を用意しています。体温は一気に下がりますが、お腹が痛くなるという選手もいて、相性はさまざま。選手にとっての飲みやすさをもっとも重視します」
●前後に体重測定
「練習・試合前に体重を測定し、練習・試合後に脱水によって体重の2%以上減っていないかをチェック。もし減っていれば、水分摂取量が足りないということです。摂取した水分量からさらにどれくらい増やすべきか、選手一人ひとりが最適な量を把握するよう数値化しています」
2.身体の冷却
「次に身体の冷却です。私たちの身体を冷却してくれるのは『汗』です。身体を動かすと筋収縮が起き、そこから生じた熱を外に逃がそうと汗をかきます。その汗が風などに触れ蒸発するときに熱を奪うため、体温が下がるのです。
ただ、気温が28度以上で湿度が高く、風がない環境下では、汗がべたっと身体を覆い蒸発してくれません。気化熱(液体が気体になるときに放出する熱)が生じず、水分をとっても体温が下がらない事態になります。
そこで、身体の表面を冷やす対策が大切になるのです。シンプルな方法としては、冷たい水を浴びる、大きな送風機で風を起こし、汗を蒸発させる、冷やしたタオルを用意しておき身体に巻くなどがあります。
冷やす部位は、首や鼠径部など大血管より、手のアイシングが効率よく深部体温を低下させる(アメリカ・スタンフォード大学の研究結果)として、JFAでは、手を浸す冷水をバケツに用意する対策を行っています」
JFAが実施している熱中症対策
そのほか、JFAならではの熱中症対策を教えていただきました。
「JFAでは、2016年に『熱中症対策ガイドライン』を設けています。労働や運動環境の指針として定められている、暑さ指数(WBGT)という数値があるのですが、WBGT31度以上の日は試合を行わない、28度以上の日は試合中に『クーリング・ブレイク』を設けるという指針で、前後半1回ずつ各3分の休憩時間をとります。
具体的には、(1)日陰にあるベンチで休む(2)氷やアイスパックで身体を冷やし、必要に応じて着替えをする。(3)水だけではなくスポーツドリンクなどを飲むとし、選手のほか審査員も同様に休みます。
試合中には30秒~1分程度の飲水タイムがありますが、これ以外に体温冷却のための休憩枠を設けたことは、当時としても画期的だったと思います」
プロサッカー選手ならではの、パフォーマンスを上げる対策がわかりました。この夏、趣味でスポーツをする際には、ぜひ参考にしたいですね。
【取材協力】
日本サッカー協会(https://www.jfa.jp/)