2022年7月2日明け方5時頃、国内で、ある花が開花しました。その花の名前は「ショクダイオオコンニャク」という武田薬品工業京都薬用植物園で栽培されているサトイモ科コンニャク属の、絶滅危惧種に選定されている希少植物です。なんと開花するのは、5年から7年に一度で、期間はたったの2~3日とのこと! 花の高さは3.1mで、腐った肉のような強烈なニオイを放ち、世界でもっとも醜い花とも呼ばれているその花は、どんな花なのか、そして実際のニオイ、栽培担当者の声をご紹介します。
■京都薬用植物園で絶滅危惧種の花が5年ぶりに開花!
ショクダイオオコンニャクが開花したのは、武田薬品工業株式会社が運営する京都薬用植物園。1993年より栽培しているそうで、2017年の初の開花以来、今回で約5年ぶりに花を咲かせたそうです。そして、2022年7月2日(土)~7月5日(火)の4日間、鑑賞のために一般開放されました。
開花した「ショクダイオオコンニャク」
今回開花した花の高さは145cmで、優美に展開している「仏炎苞(ぶつえんほう)」という赤紫色の部分の横幅は105cmと巨大!
国内のみならず世界的にも栽培・観察される個体数が少ないため、栽培に関する知見が少ない状況。花を咲かせるためには、日々の手入れと観察・対応の試行錯誤が必要となり、丁寧な対応と高い技術力が求められるそうです。
■強烈なニオイってどんなニオイ?
まず気になるのは、開花すると、腐った肉のような強烈なニオイを放つといわれていること。実際、どんなニオイがするのでしょうか?
今回、鑑賞に訪れた人の、ニオイに関する感想を、植物園の方にうかがったところ、次の感想があったそうです。
「魚が腐ったような香りで、鼻をもぎ取られるような感じ。」
「汗をかいたお父さんの靴下と、魚介の腐った香りが混じったような香り。」
想像を絶する表現……! 強烈で複雑なニオイであることは違いないようです。
■鑑賞に訪れた人「感動しかない」
ニオイ以外では、どんな感想が挙がったのでしょうか? 植物園の方は次の3つのエピソードを教えてくれました。
今回、天候などを考慮し、室内での観覧環境だったため、「閉め切った場所での展示なのに、たくさんの大きいハエが狂喜乱舞しているように飛び回っていてビックリしました。ハエにとってそれほど魅力のあるニオイなんですね。ショクダイオオコンニャクは、見た目やニオイ、開花期間など、話題が豊富で面白いです」という声が挙がったそうです。
また、「このような壮大な開花姿に出会ったことがない」と涙を流しながら、「素晴らしい」を連呼している人もいたそうです。3時間滞在し、翌日も友人を連れて来て、2日間連続の訪問だったそうです。
こんな感想を述べた人もいたそうです。「29年も大切に守られてようやく開花が見られるようになったと思うのも、たったの1日、2日で花が閉じていくこの植物は、神秘すぎる、感動しかないです」。
ニオイ以外のところでは、感動的な声が多いようですね。
■栽培担当者「いとおしくてたまらない」
写真左)園長 野崎さん、右)栽培担当 坪田さん
ところで、ショクダイオオコンニャクの栽培に関わった坪田さんは、どのような感想を持ったのでしょうか。栽培担当者 坪田勝次さんは、次のようにコメントをしてくれました。
「当園に導入されて29年間、家族よりも長く一緒にいるショクダイオオコンニャクが、いとおしくてたまりません。とにかく、国内はもとより、世界でも希少な財産であります。京都薬用植物園では保有個体が1個のみである現実から、絶対に芋を腐らせないことばかりを考えております。
栽培するうえでは、栄養成長期の葉が出現している期間は、葉の状態で、コンニャクの健康状態がおおむね把握できるのですが、問題は休眠期の地上部がないときに地下部の芋が腐っていないか、温度帯や水分調整などのバランスを考えてやるのが一番の心配ごとです。そこは、自分のハートで問いかけるしか手段はないと思っております」
世界一、醜くてクサイ植物を、愛情たっぷりに育てる坪田さん。そして、鑑賞に訪れた人も感動の渦に包まれたようです。ぜひ次回の開花の際には、実際に足を運び、現地でニオイと感動を味わいたいものです。
【参考】
京都薬用植物園(https://www.takeda.co.jp/kyoto/)