
近年、急激なスピードで進化を続ける「AI」。最近では誰もが気軽にAIに相談をし、物事の判断をする際の参考にしていますが、自身の体調が悪くなった際、AIに判断をゆだねている人も多いようです。果たして医療という分野においてAIに頼るということは正しいのでしょうか。
今回、塩野義製薬株式会社は、風邪症状時のAI利用と医療受診に関する調査を実施。夏季に流行する感染症について、生活者と医師を対象に調査を行いました。今回はその結果や、体調が悪くなった際にAIに相談することへの医師のコメントを紹介します。
夏の感染症実態調査
今回の調査は、以下の①、②の方を対象とし、2026年7月10日〜12日の期間にインターネット調査形式で行われました。
①生活者調査:20〜60代の男女10,000人および、この1年以内に風邪の症状を感じた時にAIに相談したことがある20〜60代男女1,000人(性年代別各100人)
②医師調査:一般病院および医院・診療所・クリニックで治療に当たる医師100人
生活者調査の結果
生活者を対象とした調査では、まず、20〜60 代の男女1万人に AI の利用頻度を質問。その結果、14.1%が「ほぼ毎日」、17.6%が「週に数回」、11.0%が「月に数回」と答え、全体の42.7%が月に1回以上AIを利用しているという結果になりました。

次に、月1回以上AIを利用する人に相談した内容について聞くと「勉強や仕事の補助」が最も多く、次いで「体調不良時の自身の症状や対応策に関する相談」となり、20代・30代では半数を超えました。
また、「風邪の症状を感じたときの症状や対応策に関する相談」でAIを利用する人は38.0%に。こちらも20代・30代の若い世代の利用率が高くなりました。

続いて、この1年以内で風邪の症状を感じたとき、「AIに相談したことがある」と回答した20〜60代の男女1,000人に質問を実施。風邪の症状を感じたとき最初にとる行動に関する質問では、最も多かったのが「AIに相談する」、次いで「熱を測る」であり、熱を測る前にAIに相談する人が一定数いる結果となりました。
年代別に見ると、50代・60代はまず「熱を測る」の回答が最も多かったのに対し、20代・30代は「AIに相談」の回答が最も多くなりました。

さらに、 AIに相談する目的を聞くと「自宅での対処法を知りたい」、「どんな疾患の可能性があるか知りたい」といった理由が上位に。「医療機関を受診すべきか判断したい」や「医療機関を受診しなくてすむ方法をみつけたい」という目的で相談する人も見られました。

医師調査の結果
医師を対象とした調査では、まず、患者の医療機関受診行動にAIが影響しているかを聞くと、医師の68.0%が「影響あり」と回答。具体的な影響としては「自分の状態をAIの情報をもとに自己判断する人がいる」という回答が最も多くなりました。

次に、風邪の症状を感じた方が受診前にAIに相談することについて医師の意見を聞くと、「感染症は似ている症状が多いため、種類や重症度をAIへの相談だけで正確に判断するのは難しい」が84.0%、「いろいろな感染症の可能性が考えられるので、すぐに医療機関を受診してほしい」が66.0%、また、医師の58.0%は受診前のAI相談は「医療機関への受診遅れにつながる」と回答しました。

さらに、生活者が自身の体調管理にAIを活用する場合、望ましい方法や望ましくない方法を医師に聞くと、「薬を飲むかどうかの判断に使う」「疾患の自己判断のために使う」は、6割を超える医師が「望ましくない」と答えました。

体調管理のためにAIを利用することに対する医師の回答では、74.0%が「生活者が体調管理でAIに相談することは有効」、76.0%が「風邪の初期症状時、患者は医師よりAIの方が相談しやすい」と答え、体調管理にAIを活用することを支持する回答も一定数みられました。
しかし、「体調管理や健康管理でAIの意見をうのみにせず、参考程度にしてほしい」という意見が約9割であり、72.0%は「受診前、AIに相談した場合、AIに相談した内容を医師に伝えた方が良い」と答えました。

医師によるコメント
今回の調査の結果について、いとう王子神谷内科外科クリニック院長の伊藤博道先生にお話を伺いました。伊藤先生は以下のようにコメントしています。
「AIは早くて従順なアシスタントです。しかしながら、一般的な生成AIは、医療の専門家による診察や検査に代わるものではなく、提供される情報には限界があります。また、その責任をAIは負ってくれません。例えば、AI相談で強く受診を勧められず、様子を見た結果、病状が悪化、後日受診して新型コロナと診断されるケースなど、時に誤った情報や不正確な回答を示すこともあります。そのため、AIの回答だけで診断や治療方針を判断することには限界があります。特にCOVID-19やインフルエンザでは発症早期の適切な検査・診断・治療が重要です。我々医師は症状だけでなく、診察や検査で得られる多くの情報を総合して診断しています。生活者の皆さんは、AIを参考情報として上手に活用しつつ、気になる症状がある場合は早めに医療機関への相談をご検討ください。」
感染症は早期診断・早期治療が重要。誰もが気軽に相談できるAIですが、体調に関することについては参考情報程度にとどめ、医療機関を受診した方がよさそうです。






