コラーゲンといえば美肌に欠かせないイメージですが、海外では欧米を中心にスポーツニュートリションとしてのコラーゲンが定着しています。たんぱく質の一種であるコラーゲンは、関節や靱帯、アキレス腱などの結合組織に多く分布しており、しなやかなカラダづくりに欠かせない栄養のひとつなのです。
今、スポーツ科学からの観点からも注目されているコラーゲン。そこで今回は『次世代コラーゲン・カラダラボ』が主催した、アスリートや研究者、専門医らによるメディアセミナーに参加し、運動とコラーゲンに関する情報や低分子コラーゲンの可能性などについて取材しました。
写真左から)「Zetith Beauty Clinic銀座」 副院長でトライアスリートの黒田愛美先生、日本体育大学体育学部教授 岡田隆先生、「ゼライス(株)」テクニカルセンター研究開発グループ課長で金沢医科大学・非常勤講師の山本祥子氏。
痛みレスでトレーニングを続けるために
スポーツ選手に限らず運動中に発生するケガや痛み。この痛みは筋肉そのものよりも骨膜につながっている腱・筋膜・筋繊維などの結合組織で起こることが多く、これらの結合組織を強化することで痛みレスな良い状態でトレーニングや日常生活を継続できます。
この結合組織に多く分布しているのがコラーゲンであり、コラーゲンを摂ることで回復力のサポートが期待されます。ちなみに、コラーゲンがもっとも多く含まれている器官は「腱」、2番目に多いのが骨で、皮膚は3番目だそう。歯にも多く含まれており、コラーゲンを摂ることで歯根や繊維細胞などを活性化させ、歯を丈夫する作用があるのではないかとされています。
実際にサルコペニアと診断された高齢男性(平均年齢72.2歳)53名を、コラーゲンペプチドを与えた群とプラセボ群に分け、週3回60分以上の筋力トレーニングを12週間続けた実験では、48時間後の筋損傷からの回復力が、コラーゲンペプチドを飲んだ群の方が高いという結果がでているそうです。
岡田先生は「筋肉を鍛えることで同時に結合組織も鍛えられるが、筋肉と結合組織にそれぞれ適切な刺激と材料を与えることで、より効果をあげられる」と説明し、プロテインやホエイペプチドで筋肉を、コラーゲンペプチドで結合組織の強化をそれぞれ促すといった役割分担を意識した栄養の摂取が大切であり、結合組織のインナーケアという意識をもってほしいとしています。
より低分子で吸収率の高い「コラーゲントリペプチド」とは?
“ペプチド”とは、アミノ酸とアミノ酸が消化酵素で分解されペプチド結合(-CONH-)し2個以上つながった構造のもの。タンパク質に比べて分子量が小さいため、体内への吸収がスムーズになるという利点があります。
コラーゲンペプチドは、動物の皮や骨、魚の皮や鱗から摂れたコラーゲン(ゼラチン)を、消化酵素などで加水分解した低分子コラーゲンで、さらにコラーゲンの吸収力をアップさせるため、特別な酵素をもちいて分解し、アミノ酸を3つ結合させた低分子コラーゲンを「コラーゲントリペプチド」といいます。
たんぱく質であるコラーゲンは、アミノ酸に分解されバラバラな状態で腸管から吸収されるため、コラーゲンの形を維持したまま体内に入ることはありません。しかし、コラーゲン分子が小さく分解された状態の「コラーゲントリペプチド」は、そのままのかたちで小腸へ流れ、腸管から血管へと入り込むことができるのです。
長年コラーゲン研究に取り組んでいる「ゼライス(株)」の山本祥子氏は「より効率的に全身へのアプローチができる「コラーゲントリペプチド」は、スポーツニュートリションとしても大いに可能性のある素材」と説明。
また、「空腹時に摂取するとより吸収率がアップするが、それ以上に大切なのは毎日規則正しく摂取すること。血中のコラーゲントリペプチド量を常に高めておくために摂取を続けることに意味がある」とアドバイスしました。
アスリートが勧めるコラーゲン・プロテイン生活
セミナー後半に開催された、医師でトライアスリートの黒田愛美先生を交えてのトークセッションでは、スポーツ選手にとってトレーニングを継続できる維持力がもっとも重要であり、運動前後のケアは筋肉だけでなく、筋膜・靭帯・腱などの結合組織にも目を向けて準備や強化していくこと。そのためには、組織の材料であるコラーゲンをしっかり補給することが大切であると確認されました。
また、岡田先生からは、ふくらはぎに力を入れたままアキレス腱をゆっくりと引き伸ばすエキセントリックトレーニングが紹介されるなど、より実践的なアドバイスも飛び出しました。
写真)階段など段差のある場所で踵(かかと)を上げ、筋肉に力が入った状態でスピードを制御しながらかかとを深く下ろす。
岡田先生は、「スポーツ業界ではコラーゲンの大切さは以前から認識されており、摂取することがブームになった時もあったが、結局、吸収率が低いという課題があった。より低分子化された「コラーゲントリペプチド」の登場で痛みレスなトレーニングを実現したい」と期待を寄せました。
黒田先生は、「私自身は、競技スキー、トライアスロンと激しい運動をしてきて、ヒザなども傷めがちでしたが、今は毎日必ずコラーゲンを摂っていてヒザの調子も良く、ケガも少なくなってきたことを実感しています」と体験談を紹介し、さらに「副効果として肌の調子も良く感じます。コラーゲンは美容にもよくアンチエイジングに効果的な成分。カラダの様々なところで使われる“カラダのもと”なので、コラーゲン摂取は皆様の役に立つはず」と、運動をする、しないに関わらず、すべての人に健康のためにも、コラーゲンは必須な栄養素だと訴えました。
健康的なダイエットや体力づくりのために運動を継続したくても、カラダの痛みやケガで三日坊主になることありますよね。熱意などのメンタル面も大切ですが、痛みからの回復力があがれば、もっと積極的に運動やトレーニングを続けられるのにと思います。これからはプロテインだけでなく、低分子コラーゲンを積極的に摂取し、痛みレスな“しなやかなカラダ”をめざしたいものです。