噛む力に課題!将来の歯の土台悪化リスクを予防するために改めたい生活習慣とは?

2020/10/30
マガジンサミット編集部

突然ですが質問です。以下の生活習慣、あなたはいくつチェックがつきましたか?

□甘いものなど間食をよくする

□ダラダラ飲んだり食べ続けたりすることが多い

□晩酌・寝酒をよくする

□食後にウトウトしてしまう

□野菜は嫌い、あまり食べない

□あまり噛まずに食べる、早食いだ

□長時間スマホを見ている

□睡眠不足だ

実はこれ生活習慣からわかる「歯の土台 悪化リスク度チェック」(監修 宝田恭子/宝田歯科医院)。チェックが多い人ほど口腔内に歯石がたまりやすく、今後“歯の土台”が悪化して歯が抜けたりやオーラルフレイルになってしまったりする可能性があるのです。

ところで歯の土台って?

8020(ハチマルニイマル)運動をご存じでしょうか。1989年から厚生労働省と日本歯科医師会が推進する「80歳になっても20本以上自分の歯を保つ」取り組みで、開始当時は10%にも満たなかった達成者が2016年の調査では50%となり、現在は2022年までに達成者を60%に引き上げる目標が掲げられています。

しかし、一方で一般には知られていない未解決な課題が存在します。それが「噛む力」とそれを支える「歯の土台」の健康状態です。

歯科医師で鶴見大学歯学部 探索歯学講座教授 花田信弘氏は「8020運動で、歯を残す技術は進歩したものの、その土台は慢性炎症ために痛んでいる。厚労省が行った2017年の調査では、歯周病の総患者数は400万人で、前回調査よりも66万人以上増加した」と説明します。

歯の土台とは、歯茎とその奥にある歯槽骨などの歯周組織で構成されている部分を指します。健康な歯の土台は、歯をしっかりと支えているため力強く噛むことができますが、土台が弱り支える力が低下すると噛む力も低下し、フレイル(健常から要介護へ移行する中間の段階)を引き起こしやすくなります。

土台が弱る→噛みにくいと感じる→やわらかい食べ物を選ぶ→噛む力が低下する→食欲減といった負のスパイラルは、栄養素や筋力の低下を招きフレイルのリスクを増大させ、身体的機能や認知機能の低下に繋がる危険があります。口腔機能の保持はフレイル予防の重要なテーマのひとつなのです。

歯の土台ケアの実践方法

この土台を弱らせる原因のひとつが歯周病です。

歯周病は、歯茎に炎症がおきる「歯肉炎」が進行すると、歯槽骨が溶け始め歯茎が下がる「歯周炎」へと発展します。炎症により骨の新陳代謝のバランスが崩れ歯槽骨が減少することで歯の根元がむき出しとなり、歯を支える力が低下してしまうのです。

また、土台が弱ると虫歯菌や歯周病菌が血液に入り込む「歯原性菌血症」を引き起こす原因となり、近年の研究では心筋梗塞や脳梗塞、アルツハイマー病になる要因の一つとされています。

この歯周病を予防するためには毎日の丁寧な歯磨きと、歯周病菌の巣である歯石を除去するプロによるプラークコントロールが大切になります。現在は、専用の器具を使ったスケーリングやルートプレーニングという歯石除去のほか、歯周病菌が血液に侵入することを防止する3DS(Dental Drug Delivery System)という最新の除菌療法が開発され、注目が集まっているそうです。

また、生活習慣においては食事による「歯の土台ケア」も有効です。花田先生は「栄養をバランス良く体内に送るためにも、ひと口に約30回ずつ、しっかりと噛むことで歯槽骨の骨芽細胞を活性化させ、骨の新陳代謝を促進させて欲しい」と話し“歯の土台ケアレシピ”として、ブロッコリー、しそ、青ネギ、トマト、パプリカ、小松菜、パセリ、ケール、オレンジ、ブドウ、キウイ、イチゴなどの抗酸化作用がある緑黄色野菜や果物、不飽和脂肪酸を多く含むオリーブオイルを気軽に摂ることのできる「地中海式食事法」を薦めました。

なぜ、歯の土台は崩れるのか?

さて、この歯の土台は50歳を過ぎたあたりから急激に弱くなることが分かっています。厚生労働省が発表した「平成29年国民健康・栄養調査」によると、咀嚼に支障がある人の割合は40代で6.0%、50代で13.3%、60代で23.8%であり、実に50代の7人に1人が充分に噛めない状態にあるそうです。

冒頭で紹介した「歯の土台 悪化リスク度チェック」を監修した歯科医師で宝田歯科医院 院長の宝田恭子先生は、実際に診察をするなかで、今まで硬くても噛めていた食材が噛めなくなるといったような話題が50代の患者さんに多く、また、50代で健康な歯と診断されていても70代になり総義歯を作成中の患者さんがいると話します。

なぜ、50代は土台悪化リスクが急激に上昇するのでしょうか。先ほどの「歯の土台 悪化リスク度チェック」の調査結果によると、50代は8項目のうち5つで該当率がトップでとなり、また、「歯茎が下がってきた」、「歯並びが悪くなってきた」、「歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなった」などの「歯の土台危機」への現状リスク度は、40代と50代では2.3倍もの差が見られたそうです。

宝田先生は、加齢以外に生活習慣が大きく影響することを示唆し「スマホの見過ぎは前傾姿勢が癖になるため、噛み合わせの位置がずれて上手く噛めない歯になるほか、歯に力を入れて画面を見るなど、大きく歯に負担をかけている」と、思わぬ生活習慣が歯の土台を弱めるリスクになると説明しました。

ちなみに、噛む回数が最も多い姿勢は正座であり、不安定な姿勢で食べると咀嚼回数が減るという実験結果があるそうで、強い土台でしっかり歯を支えて食べることが唾液の分泌を促すことになり、ひいては健康な身体づくりに影響すると話しました。

後悔しないための土台ケア

歯の土台悪化リスクを減らすためには、生活習慣と食習慣の改善、そして丁寧なオーラルケアを欠かさないことが大切です。宝田流オーラルケアでは歯磨きの他に歯茎マッサージを奨励しています。

・歯と歯茎の境目に毛先を斜めにあてる

・毛先を意識して軽い力で小刻みに動かし1~2本ずつ磨く

・歯ブラシが動かしやすいように口を少しだけ閉じ、磨き終わった後に舌で触れツルツルになっていなければ磨きなおす

といった丁寧な歯磨きで汚れを落とした後に、歯茎と唇の折り返し位置(歯肉頬移行部)と歯肉(歯間乳頭部)を、中心へ向かって指でなぞるように歯茎マッサージを行うと、歯と歯の歯肉のみのマッサージよりも3~4倍の総ヘモグロビン量と組織への酸素飽和濃度が上がる効果が得られているそうです。

もちろんマッサージは歯がしっかりと磨かれ、歯垢が無い状態で行わなければ意味がなく、定期的に歯医者さんに通い相談しながら進めていく必要があります。

写真左)ライオン株式会社 オーラルケア事業部 黒澤清夏氏 中央)花田信弘教授 右)宝田恭子先生。ライオン株式会社主催メディア向けセミナー「50 代からの歯の土台ケアの重要性」 より。

セルフケアとプロケアを併用しながら、今ある歯を一本でも多く守り噛む力を養い健康寿命を延ばしていきたいものですね。

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