2019年10月12日、関東、東北地方などは台風19号により甚大な被害を受けました。台風の勢力、降雨量は記録的な大きさとなり、河川の氾濫や住宅の浸水など、多くの人が被害を受けています。
今回のような大型の台風に対しての対策は非常に重要であり、誰もが目を向けなくてはならないこと。特に住宅は災害が起こった時に家族の命を守るシェルターである必要があります。
また、住宅のもう一つの課題として、災害後の暮らしの問題があります。災害時にシェルターとしての役割を果たし、家族の命を守れたとしても、住める状態になければその後の家族の生活は守れません。
世界最大の実験施設で行われた耐水害住宅実験
10月2日、官民共同による水害被害の軽減プロジェクトとして、「耐水害住宅」公開実験が、つくば市で行われました。実際に大量の雨を降らせ、水害発生時の「耐水害住宅」の効果を検証する実験で、国立研究開発法人防災科学技術研究所と株式会社一条工務店により行われました。
実験が行われた施設は世界最大級の大きさ。施設内に一般仕様のA棟、耐水害仕様のB棟を建設し、ゲリラ豪雨を発生させ、120トンの雨を降らせています。さらに、大型水槽には水中ポンプを6台設置し、氾濫による水流も再現するという本格的な実験でした。
以下の写真の通り実験の結果には大きな差が。一般仕様のA棟は、腰の高ぐらいまで水位が達したのに対し、耐水害仕様のB棟はまったく浸水していません。
一般仕様A棟
耐水害仕様B棟
耐水害仕様の住宅の仕組み
いったい耐水害仕様のB棟はどのような仕組みで浸水を免れたのでしょうか。今回の耐水害仕様住宅では、「浸水」「逆流」「水没」の3種類の対策が施されています。
浸水対策
まず一つ目の浸水対策では、換気口の内側に設置したボックス内に置かれたフロート式の弁が、浸水時に浮上して水の流入を止め、床下浸水を防ぐ仕組みとなっています。また、窓開口と玄関ドアには、中空パッキンを取り付け、外部浸水時には水圧によって窓や扉が押される力を利用して隙間を塞ぐ構造に。
逆流対策
水の逆流対策としては、豪雨時には下水などの汚水が室内に逆流することがあるため、配管系統に逆流防止弁を設置し下水の逆流防止をしています。
水没対策
水没対策では、貯湯タンクはポンプや基盤などの電子部品をタンク上部に配置、エアコン等の室外機は基礎に固定した専用架台に設置、太陽光パネルのパワーコンディショナーや蓄電池も高所に設置することで、電気設備の水没防止を図っています。
台風の多い日本では必須の「耐水害住宅」の技術。年内をめどに、標準仕様に50万円程度のコスト上乗せで採用できるよう商品化を進める予定だそうで、特に水害の多い地域の方は要チェックです。