われわれが毎月支払っている、電気料金。電気を使った分だけ料金を払っていると思いきや、「再エネ賦課金」なる徴収額が毎月発生していることは、意外と知られていない。
トレンド総研が20~40代既婚女性500名を対象に、11月に調査した結果、「主婦の8割超が、『冬は他の季節に比べて電気料金が高くなりやすいと思う」という回答を得た。
また、企業や家庭など電気使用者が負担し続けている「再エネ賦課金」の存在について、「知っていた」という人はわずか17%だったという。
この「再エネ賦課金」とはどういう徴収金か?
電力中央研究所の朝野賢司氏によれば、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)は、2012年7月1日より施行されている、「FIT(固定価格買取制度)」といわれる制度にもとづいて設定された課金。
「FIT」とは、再生可能エネルギーの導入拡大を図ることを目的に、国が定めた仕組み。電力会社はこの制度により、再生可能エネルギーで発電された電気を、割高な価格で一定期間買い取ることを義務づけられている。
そして、再生可能エネルギーの買取価格は、火力や原子力などの発電コストと比べて大幅に割高な設定。家庭の電気料金の場合は、基本的にはすべての人が、使用量に応じて支払うので、使用量が多いほど、「再エネ賦課金」の支払額も増えることに。
われわれは「再エネ賦課金」をどれぐらい支払っているか
基本情報は、毎月届く「電気ご使用量のお知らせ」(検針票)に記載されている数字でチェックできる。この検針票に「再エネ賦課金」と金額が明記してある。
たとえば、標準家庭の電力使用量を1か月300kWhとした場合、今年度の「再エネ賦課金」単価の2.64円/kWhをかけると792円。
この792円が、電気料金に加算されている。1年間の負担額は、約1万円にものぼる。
さらに、この「再エネ賦課金」の負担額が、再生可能エネルギーの急拡大にともない年々増加。
初年度の2012年度は年間約800円。今年度は約1万円近くにまでのぼり、初年度から12倍もの負担額を国民は強いられている。
国全体でみると、賦課金の総額は約2.1兆円。これは消費税約1%分の税収に相当する。さらに、将来にわたっても大幅に増加する見通しで、電力中央研究所の試算では、2030年度における賦課金を3.6兆円と見込んでおり、これは消費税に置き換えると、約1.6%分に近い計算になるという。
消費税と同じく低所得者ほど負担率が増える
電力中央研究所の朝野賢司氏は、この「再エネ賦課金」について、「低所得者ほど税負担率が大きくなる」と伝えている。
「消費税は、低所得者ほど税負担率が大きくなるため、よく「逆進性が強い」といわれる。「再エネ賦課金」も同じ。同じ電力量を使用すればかかる費用は同じになるため、富裕層よりもそうでない家庭のほうが、家計に対する影響は大きくなる」
「現在、安倍政権が消費税を2%上げるのに、慎重な手続きを行っているいっぽうで、「再エネ賦課金」によって消費税約1.6%分に相当する負担が家計に生じてしまっている」(朝野賢司氏)
年々増加する再エネ賦課金、国の政策に注視
こうした電気料金の現実のなか、朝野氏は「エネルギーミックスが重要」とも伝えている。
「今後、ますます発電量が増えていくと予想される、太陽光などの再生可能エネルギーには、「コストが割高」「発電量が不安定」などの課題がある。こうしたなかでは、再生可能エネルギーだけでなく、火力、原子力など、さまざまなエネルギーをミックスした電源構成「エネルギーミックス」が重要になる」(朝野賢司氏)
毎月負担しているこの「再エネ賦課金」をあらためてチェックし、日本のエネルギー事情について正しく理解し、消費税と同じように国の政策を注視していきたい。