直近で言えば、カーリング女子日本代表だろう。少し遡れば、体操の内村航平選手、中学生棋士の藤井聡太六段もそうだ。ここ最近のトレンドなのか、スポーツに関する話題で、何かと試合の勝ち負け以上に「食べ物」に話題が集まりやすい。勝敗のカギが体調管理を左右する「食べ物」にあるといえば、それまでだが、なぜここまで食べ物に注目するのか。
気になる他人の食事情
「他人が何を食べているか。知っているようで、じつは詳しく知らない。興味がある――」
じつにシンプルかもしれないが、これが最大の理由なのだろう。突き詰めて考えてみると、「食事」は究極のプライベートだ。食の好みは人の数だけあるし、栄養バランスを考えて食べる人もいれば、偏食気味の人もいる。お菓子やファストフード中心の生活が明らかになれば、バツの悪い気持ちになる人もいるだろう。
つまり、何を食べるのかはその人の自由であり、その自由な食事にフォーカスするのは、ある意味、その人の性格、嗜好、ものの考え方などを覗き見る行為に等しいのかもしれない。それゆえ他人の食事、とくに全国的にも話題になりやすい人物であれば、プライベートを窺い知れるチャンスとあってか、一層興味が出てくるのかもしれない。
ヨネスケの『突撃!隣の晩ごはん』はすごい企画だった?
「他人の食事に注目する=プライベートを覗き見る」という考え方を踏まえると、『突撃!隣の晩ごはん』がいかにすごい企画だったかがわかる。なぜなら、おおっぴろげにしたくないプライベートの部分が全国放送で晒されるからだ。
あらかじめ放送されるとわかっていれば、テレビ映えのする豪華な献立にするだろう。だが、企画のコンセプトはあくまで「突撃」。事前準備はできない。飾り気ゼロの食卓が映し出される。普通は見ることができない他人のプライベートな部分を垣間見ることができるわけだから、同番組が25年以上にわたって放送され、視聴者に支持されていたのもうなずける。
選手の個性を知りえる唯一の手段
食に注目が集まるのは、その人のプライベートを知ることができるから。そうだとすれば、メディアが食にフォーカスするのも同意できる。なぜなら、食べ物だけが唯一、彼らと距離を縮められる接点だからだ。同じものを食べれば同じように活躍ができる、とまではいかなくても、選手の気持ちを想像したり、共感したり、親近感を感じることはできる。
カーリング女子日本代表が食べていた『赤いサイロ』が瞬く間に店頭から消えたのも、当時、内村航平選手が食べていた『ブラックサンダー』が注目されたのも、藤井聡太六段のお昼ご飯が話題になったのも、ひとえに距離を縮めたいという気持ちがそうさせたものなのだ。
子どもの頃、友達の家にお泊まりをして夕食を食べることにワクワク感を覚えたが、これはおそらく、友達が普段食べているものを自分も一緒に味わえるという高揚感がそうさせたのではないかと、いまなら思える。