第3回カバーガール大賞【話題賞】に選ばれた『週刊プレイボーイ(10月24日号)』。表紙は“二階堂ふみの網兎(バニー)”。1996年10月に創刊し50周年を迎えた週プレイボーイが、満を持して世に放ったオール撮り下ろし&ぶち抜き36ページ。時代の女優、最初で最後のグラビア――。
この前代未聞の企画はどのようにして誕生したのか? そして創刊50周年を迎えたその先は? 週刊プレイボーイ(以下週プレ)編集者の近田さんにインタビューをした。
_まずは、二階堂バニーが企画された経緯をお願いします。
「週プレは、毎年10月を創刊月間として様々な記念企画をしています。特に昨年は50周年という大きな節目だったので表紙を飾って頂いた50人を一挙に撮り下ろした『創刊50周年記念』を第1弾として。続いて、二階堂ふみさんを特集した『二階堂ふみの、すべて。』を展開しました」
「そして、奇跡の未公開写真を掲載した『アグネス・ラムさん特集号』が第3弾。青春とアイドルをテーマにした『週プレとアイドルの50年』を第4弾として企画しました」
「なかでも第2弾については、『月刊シリーズ』(新潮社)のプロデューサーを務め、現在もグラビアの最前線で活躍するイワタさんと、実験的で思い切ったことをしようと半年ほど前から話を進めていました。何人か候補の方がいましたが、表紙を飾っていただくにあたり、いちばん意外な人は誰だろう?と。そんな時に、二階堂さんのバニーガールはどう?とイワタさんから提案があり動き出した企画です。ちょうど夏休みの時期に、たまたま二階堂さんがプライベートで海外旅行に行くということでカメラマンを同行させてもらえないかとお願いしました。それが「極私的旅」のページになります」
_バニーの衣装は二階堂さん自身がご用意されたと伺いました。
「そうなんです。二階堂さん自ら知り合いの同世代のデザイナーにかけあって型紙から素材から全部手配していただいて。発売時には書店でゲリラ的にサイン会をしたいという提案もあり、実際に都内3店舗をまわっていただきました。編集部もそんな二階堂さんの熱意に応えたいと通常のグラビアならば7~8ページなところを36ページ、そして都内約30か所で展開したビルボードも含めて彼女にお任せすることにしました。36ページも1人の方のグラビアを掲載するのは50年の歴史でも異例のことだと思います」
_若い世代からの反響が凄かったようですね
「以前、二階堂さんには写真集『月刊二階堂ふみ』(2014年11月発売)からの転載という形で表紙を飾っていただいたことがあり、その時の経験から、ご自身もファン以外の方から反響があるのを感じていたようです。ただ、今回は学生さんが多く買ってくださったようで、逆に週プレにとってコア層以外の年代からの反響が多くありました」
_成功した理由はどこにあったと感じていますか?
「この企画は“何かを創りあげて表現しようとする”二階堂ふみさんだからこそ成立したと思います。我々が綿密に計画したのではなく、二階堂さんが上手く週プレと遊んでくれたという感じでしょうか。誰かに指示されるのではなく、今、何をしたら面白くて新しいのかキャッチできるアンテナを持って実行できる二階堂さんならでは。インタビューもガツン!とくる内容で、こちらも負けていられない!と思わせてくれる方でした。カメラマンとの向き合い方も情熱的で、現場そのものが熱気にあふれていました」
とんでもないものが出来る予感!
「今回のカメラマンは前半のスタジオパートをND CHOW(アンディ・チャオ)さんに、後半の旅パートを熊谷直子さんにお願いしました。アンディさんは被写体とのぶつかり方がとにかく熱くて、勢いのあるカメラマンで「~FEVER&SWEAT~ 熱」は、朝、スタジオに入り1日で撮っています」
「グラビアに写っているのはリアルな汗です。真夏なのに窓を締め切って2人きりでぶつかり合うように撮影していました。とても近寄れなかったですね。二階堂さんの集中力もすごくて、真摯にカメラマンと向き合う姿が印象的でした。」
_歴史が変わるようなグラビアが誕生すると思いました?
「結果は上がりを見るまで正直、わかりませんが、グラビアという枠を超えるんじゃないかという予感はありました。読者を興奮させるグラビアには、やっぱり“熱”が必要不可欠だと思います。被写体とカメラマン、関わるスタッフ全員がひとつの方向を目指して突き進めるかどうか。今回の現場は間違いなくその空気が漂っていました。熊谷直子さんに撮影して頂いた旅パートも、女優さんのプライベート旅行に完全密着する撮影なんて普通はありえないですよね? こんな無茶が実現したのは『月刊二階堂ふみ』を作り上げたふたりの信頼関係があったからこそ。写真集や単行本ではなく、雑誌のいち企画として実現したことがグラビアの強度を更に高めたはずです」
「実は同時期に、週刊プレイボーイ創刊50周年記念出版『熱狂』(集英社ムック)の編集を進めていました。過去のグラビアや記事を60年代から現在までピックアップして掲載する全320ページのラストをどうするか悩んだときに、必然的に二階堂バニーしかない!と思い“今の時代が一番面白い”という原稿を添えて締めることにしました。51年目にむけて新しい扉が開いたような、まだまだグラビアは面白いと実感できる企画になったと思います」
実験的で面白いことに挑戦する。それが週プレ。
_週プレとグラビアの歴史について伺えますか?
「グラビアは日々消費されてゆくものですが、篠山紀信さんが撮った山口百恵さんや立木義浩さんが撮った浅野ゆう子さんなど、“時代に撮らされて”語り継がれる写真もあります。(『熱狂』をパラパラめくって)この由美かおるさんのレオタードグラビアなんて、今見ても本当にカッコいいですよね。小泉今日子さんのレントゲン写真に添えられたタイトルは「全裸以上。」。当時の読者はひっくり返ったと聞いています。『熱狂』の編集で50年分のグラビアを振り返ると、時代ごとの色があるというか、今こそやるべき企画の宝庫でした」
_あらためて、週プレらしいグラビアとはどんなものだと思われました?
「言語化するのは難しいですが、時代と濃密に寄り添うことじゃないでしょうか? 90年代は女優さんがグラビアに登場する時代だったんですけど、篠原涼子さんや永作博美さんなど今も一線で活躍される方々を追いかけました。それからCCガールズやイエローキャブ軍団など、グラビアアイドル全盛の時代があって、今に繋がるグループアイドルの流れまで。その都度、最も旬の女のコが誌面を飾っています。では、次の時代は? それを常に考えて、多方面にアンテナを張ってグラビアを作っていくことが週プレの宿命だと思います。今回の二階堂バニーの企画は、改めて“週プレらしさ”を考えるきっかけになりました」
※週刊プレイボーイ創刊50周年記念出版『熱狂』(集英社ムック)
「もし、まちがいなくこれは“週プレ”だ!と言えるグラビアがあるとすれば、最近では“二階堂バニー”の号に、もう一つの目玉として掲載された「肉撮51人間。」という企画でしょうか。51人のモデルさんを一つのスタジオに集めてヌードを撮影したもので……さすがに裸の女性が50人も集まると体調に異変をきたすほどのとんでもないエネルギーでしたが。こういう実験的で刺激的なものに挑戦するのも週プレ精神じゃないでしょうか。人気の〇〇さんを掲載すれば売れるからということではなくて。その年はこれだった!と、時代を象徴するようなグラビアを実現できると良いですよね。週刊誌は年間約50冊を発売するのですが、全冊は無理でも3~4冊くらいは最低でも目指したいですね」
51年目の週プレは誌面を飛び出す?!
「2017年の新しい挑戦として週プレ酒場を新宿歌舞伎町にオープン予定です。リアルな居酒屋です(笑)。6月の開店に向けて進めていますが、大衆酒場の雰囲気で、でも文化の匂いがするような居酒屋を目指しています。週刊誌が居酒屋をやったらどうなるか?“実験の週プレ”ならではのお店にしたいです」
_誌面を飛び出して、読者との新しい出会いが誕生しそうですね。
「そもそも、情報を探しにいくというより、思ってもみない世界に偶然出会ってしまうのが週プレらしさの一端だと思います。グラビアを目当てにページを開くと、文豪の人生相談があったり、妙に硬派な政治記事があったり。誌面を飛び越えて、そんな偶然の出会いが生まれる場所になればいいですね」
_世間話やエッチな話をするページ。たくさんの女の子(グラビア)との出会いもあって…男子にとって週プレは盛り場的な場所。たまに、時代を象徴するようなとびきりの美女が現れたりして。それがリアルな場所として開店したらと思うとワクワクします。
「あまりハードルを上げすぎると自らの首を絞めてしまいますから(笑)。実現できるように頑張ります」
※“ニュースを伝えるたけでは、50年も続かない。事件も。流行も。旬な女の子も。日本の50年が、ここにあります。”編集部の廊下に並ぶ週プレの記事たち。
_本日はありがとうございました。これからの週プレにも期待しています!