Instagram @gorin より(https://www.instagram.com/p/CSLTLtmp324/)
8月5日に有明アーバンスポーツパーク(東京都江東区)で開催された東京五輪スケートボード・男子パークに日本の平野歩夢が出場。
予選では14位と決勝に進むことは出来なかったが、パーク男子の日本代表として素晴らしい滑りを見せてくれた。
金メダルを獲得したのは、キックフリップボディバリアル540(空中で体を横に1回転半、板を縦に1回転させた後、板をつかんでから横にも1回転)で圧倒的な印象を残したキーガン・パルマー(18歳)、銀メダルはブラジルのペドロ・バロス(26歳)、銅メダルはアメリカのコリー・ジュノー(22歳)が獲得した。
スケートボード・パーク種目は45秒間滑走するランを3本行い、100点満点中一番高かった点数で競われる。
ランの途中で技を失敗してしまうと、その時点で滑走は中断され、それまでに決めた技の得点となる。
【スケートボードと向き合い“つかんだ”集大成】
Photo by Katsumi Kojima
※2019年の第3回日本スケートボード選手権での写真
平野が予選1本目に見せたランは、これまでの大会で見せて来た、高さのあるエアトリックに磨きがかかっているように見え、その完成度が上がっているように感じた。
以下、1本目のランで見せたトリックリスト。
・キックフリップインディ
・トランスファー(セクションとセクションをまたぐ)インディエア
・バックサイドスミスグラインド
・バックサイド540
・オーリーアップからの、フロントサイドリップスライド(テールスライドを狙って乗り上げてしまったようにも見えたが、なんとかメイク)
・中央のセクションで、マニュアルからのロールイン
・フロントサイドスミスグラインド
・オーリー
・ステイルフィッシュ
・これまでの大会を通して初めて見せたトリック、インディ540で失敗。
2本目のランでは、1本目でミスしてしまった最終トリックのインディ540をメイクし、見事フルメイク(ノーミスでランを滑りきる事)。
最後のトリックをグラブ(板をつかむトリック)しメイクした瞬間、平野が向き合ってきたスケートボードの、今の集大成を世界中に見せてくれた。
3本目のランでは今大会、練習から見ている解説の松井立(りゅう)さんから「まだ出していない技もある」とのコメントもあり、さらなる新技も期待されたが、残念ながらランの途中で失敗してしまい、14位で予選を終えた。
【“日本史上5人目”の肩書き以上に残したもの】
Instagram @olympicsより(https://www.instagram.com/p/CSLlsTuBQ_L/)
年齢や、国による選手層の違いはあるが、スノーボード界の絶対王者でX Gamesではスケートボードとスノーボードで金メダルを獲得しているショーン・ホワイトでさえ、東京五輪スケートボード選考大会に参戦はしたものの、その挑戦を途中で断念している。
そんな中、平野は世界ランキング25位に入り、日本代表として出場を決めた事は本当に素晴らしい事であり、雪上とは全く異なるスケートボード競技でこの日を迎える事は、本人にしかわからない大変な道のりだっただろう。
世間からすれば、スノーボード界のスターだからスケートボードでも代表になって当たり前、といったイメージもあったかもしれない。
これだけ話題になったスケートボードに挑戦し、もし出場権を獲得出来なかったら、失うものも多かったかもしれない。
そんな多くのプレッシャーと向き合い、チャレンジしてきた事は日本史上5人目の夏冬五輪出場という肩書き以上の価値があると、これまでの東京五輪代表選考大会の滑りから、今回の東京五輪までの滑りを見てきて、改めて感じた。
【かっこいいスケーターとは】
Instagram @juegosolimpicosより(https://www.instagram.com/p/CSLg6ZkLc2J/)
スケーターがかっこいいのは、おしゃれな服を着て、凄い滑りをするからだけではない。
何よりも一番かっこいいのは、それまで挑戦し続けてきた姿が、滑りに表れるからだと思っている。
無数に練習を積み重ね、終わりの無い挑戦をしてきた姿が、スタイルとなって滑りに表現される。
だからスケーターはかっこいいのだ。
平野歩夢は彼にしか出来ない、二刀流の挑戦をし、見事東京五輪の切符をつかんだ。
そしてさらに、これまでの東京五輪選考大会で見せて来た以上の滑りを見せ、自分越えを果たした。
彼の挑戦は多くのメディアに取り上げられ、日本中の人にスケートボードの魅力を知ってもらう良い機会になったが、スケーターとしての平野歩夢のかっこよさは、彼にしか出来ない挑戦をし、東京五輪の開催地である有明のスケートパークで滑るこの日まで滑り続け、挑み続けて来た姿、そのものだと思った。
【世の中を変えるスケーターたち】
Instagram @dallasafrica より(https://www.instagram.com/p/CSCT2gJnU5A/)
輝く笑顔でスケートボードを楽しむ姿から、今大会話題になったフィリピンのマージリン・ディダルというスケーターがいる。
彼女は厳しい家庭環境から抜け出す為に、スケートボードで夢を叶え、フィリピンのスケートボードシーンを変える存在にまでなった事で有名だ。
そして彼女の他にも、スケートボード界には素晴らしい活動をしている人がたくさんいる。
46歳で今回の東京五輪に出場を果たした、南アフリカのスケートボード界の英雄、ダラス・オーバーホルツァーは“スケートボードで世界を変える事が出来る事を証明した”スケーターだ。
(参照記事:マガジンサミット 【ダラス・オーバーホルツァー】東京五輪スケートボードに出場確定の46歳は南アフリカの英雄!)
アフガニスタンなどで、スケートボードを通して教育活動を行う、スケーティスタン。
(参照記事:マガジンサミット アフガニスタン復興のカギを握るスケートボード。その意外な真相)
他にも多くの事例があり、スケートボードには世の中を変える力が確実にある。
東京五輪を通して、スケートボードが持つ可能性にも、多くの人に気づいてもらえるよう願っている。
東京五輪・男子パーク結果
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1位 キーガン・パルマー 95.83
2位 ペドロ・バロス 86.14
3位 コリー・ジュノー 84.13
4位 ルイス・フランシスコ 83.14
5位 キエラン・ウーリー 82.04
6位 スティーブン・ピネイロ 75.17
7位 ビンセント・マゼロン 42.33
8位 ペドロ・クゥインタス 38.47
文 小嶋勝美 Twitter: @katsumikojima1
スケートボードを趣味としており、ライターとしてスケートボード関連の記事を執筆。約10年間芸人として活動後、現在は放送作家としても活動中。