【挑み続けてつかんだ集大成・平野歩夢】東京五輪スケートボード・男子パーク優勝は圧倒的な滑りを見せたキーガン・パルマー

2021/08/05
放送作家 小嶋勝美

Instagram @gorin より(https://www.instagram.com/p/CSLTLtmp324/)

8月5日に有明アーバンスポーツパーク(東京都江東区)で開催された東京五輪スケートボード・男子パークに日本の平野歩夢が出場。

予選では14位と決勝に進むことは出来なかったが、パーク男子の日本代表として素晴らしい滑りを見せてくれた。

金メダルを獲得したのは、キックフリップボディバリアル540(空中で体を横に1回転半、板を縦に1回転させた後、板をつかんでから横にも1回転)で圧倒的な印象を残したキーガン・パルマー(18歳)、銀メダルはブラジルのペドロ・バロス(26歳)、銅メダルはアメリカのコリー・ジュノー(22歳)が獲得した。

スケートボード・パーク種目は45秒間滑走するランを3本行い、100点満点中一番高かった点数で競われる。

ランの途中で技を失敗してしまうと、その時点で滑走は中断され、それまでに決めた技の得点となる。

【スケートボードと向き合い“つかんだ”集大成】

Photo by Katsumi Kojima

※2019年の第3回日本スケートボード選手権での写真

平野が予選1本目に見せたランは、これまでの大会で見せて来た、高さのあるエアトリックに磨きがかかっているように見え、その完成度が上がっているように感じた。

以下、1本目のランで見せたトリックリスト。

・キックフリップインディ

・トランスファー(セクションとセクションをまたぐ)インディエア

・バックサイドスミスグラインド

・バックサイド540

・オーリーアップからの、フロントサイドリップスライド(テールスライドを狙って乗り上げてしまったようにも見えたが、なんとかメイク)

・中央のセクションで、マニュアルからのロールイン

・フロントサイドスミスグラインド

・オーリー

・ステイルフィッシュ

・これまでの大会を通して初めて見せたトリック、インディ540で失敗。

2本目のランでは、1本目でミスしてしまった最終トリックのインディ540をメイクし、見事フルメイク(ノーミスでランを滑りきる事)。

最後のトリックをグラブ(板をつかむトリック)しメイクした瞬間、平野が向き合ってきたスケートボードの、今の集大成を世界中に見せてくれた。

3本目のランでは今大会、練習から見ている解説の松井立(りゅう)さんから「まだ出していない技もある」とのコメントもあり、さらなる新技も期待されたが、残念ながらランの途中で失敗してしまい、14位で予選を終えた。

【“日本史上5人目”の肩書き以上に残したもの】

Instagram @olympicsより(https://www.instagram.com/p/CSLlsTuBQ_L/)

年齢や、国による選手層の違いはあるが、スノーボード界の絶対王者でX Gamesではスケートボードとスノーボードで金メダルを獲得しているショーン・ホワイトでさえ、東京五輪スケートボード選考大会に参戦はしたものの、その挑戦を途中で断念している。

そんな中、平野は世界ランキング25位に入り、日本代表として出場を決めた事は本当に素晴らしい事であり、雪上とは全く異なるスケートボード競技でこの日を迎える事は、本人にしかわからない大変な道のりだっただろう。

世間からすれば、スノーボード界のスターだからスケートボードでも代表になって当たり前、といったイメージもあったかもしれない。

これだけ話題になったスケートボードに挑戦し、もし出場権を獲得出来なかったら、失うものも多かったかもしれない。

そんな多くのプレッシャーと向き合い、チャレンジしてきた事は日本史上5人目の夏冬五輪出場という肩書き以上の価値があると、これまでの東京五輪代表選考大会の滑りから、今回の東京五輪までの滑りを見てきて、改めて感じた。

【かっこいいスケーターとは】

Instagram @juegosolimpicosより(https://www.instagram.com/p/CSLg6ZkLc2J/)

スケーターがかっこいいのは、おしゃれな服を着て、凄い滑りをするからだけではない。

何よりも一番かっこいいのは、それまで挑戦し続けてきた姿が、滑りに表れるからだと思っている。

無数に練習を積み重ね、終わりの無い挑戦をしてきた姿が、スタイルとなって滑りに表現される。

だからスケーターはかっこいいのだ。

平野歩夢は彼にしか出来ない、二刀流の挑戦をし、見事東京五輪の切符をつかんだ。

そしてさらに、これまでの東京五輪選考大会で見せて来た以上の滑りを見せ、自分越えを果たした。

彼の挑戦は多くのメディアに取り上げられ、日本中の人にスケートボードの魅力を知ってもらう良い機会になったが、スケーターとしての平野歩夢のかっこよさは、彼にしか出来ない挑戦をし、東京五輪の開催地である有明のスケートパークで滑るこの日まで滑り続け、挑み続けて来た姿、そのものだと思った。

【世の中を変えるスケーターたち】

Instagram @dallasafrica より(https://www.instagram.com/p/CSCT2gJnU5A/)

輝く笑顔でスケートボードを楽しむ姿から、今大会話題になったフィリピンのマージリン・ディダルというスケーターがいる。

彼女は厳しい家庭環境から抜け出す為に、スケートボードで夢を叶え、フィリピンのスケートボードシーンを変える存在にまでなった事で有名だ。

そして彼女の他にも、スケートボード界には素晴らしい活動をしている人がたくさんいる。

46歳で今回の東京五輪に出場を果たした、南アフリカのスケートボード界の英雄、ダラス・オーバーホルツァーは“スケートボードで世界を変える事が出来る事を証明した”スケーターだ。

(参照記事:マガジンサミット 【ダラス・オーバーホルツァー】東京五輪スケートボードに出場確定の46歳は南アフリカの英雄!

アフガニスタンなどで、スケートボードを通して教育活動を行う、スケーティスタン。

(参照記事:マガジンサミット アフガニスタン復興のカギを握るスケートボード。その意外な真相

他にも多くの事例があり、スケートボードには世の中を変える力が確実にある。

東京五輪を通して、スケートボードが持つ可能性にも、多くの人に気づいてもらえるよう願っている。

東京五輪・男子パーク結果

 
 
 
 
 
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1位 キーガン・パルマー 95.83

2位 ペドロ・バロス 86.14

3位 コリー・ジュノー 84.13

4位 ルイス・フランシスコ 83.14

5位 キエラン・ウーリー 82.04

6位 スティーブン・ピネイロ 75.17

7位 ビンセント・マゼロン 42.33

8位 ペドロ・クゥインタス 38.47

 

文 小嶋勝美 Twitter: @katsumikojima1

スケートボードを趣味としており、ライターとしてスケートボード関連の記事を執筆。約10年間芸人として活動後、現在は放送作家としても活動中。

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放送作家 小嶋勝美
この記事を書いた人

放送作家 小嶋勝美

お笑い芸人として活動後、放送作家に転身。 スポーツ番組やバラエティ番組などに携わる傍ら、20年以上続けている大好きなスケートボードのライターとしても活動。 コンテスト記事の他、スケボーの情報や面白い発見を伝えていくと共に、スケートボードが持つ素晴らしさを多くの人に広めていきたいと思っています

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