ひな祭りの翌日となる3月4日(土)、スケートボードの聖地と言っても過言ではないほど、多くの歴史を作ってきたムラサキパーク東京で、総勢50名(内30名がコンテストに参加)のガールズスケーターが参加する、ガールズスケーターのためのイベント「POD Games」が開催された。
このイベントは、第一線で活躍するスケーター藤澤虹々可(ななか)と、スポーツイベントを手掛けるPOD Corporationがタッグを組み実現された。
さらに、ガールズフィルマー(スケートボード映像の撮影を行う女性)のパイオニア的存在、村井祐里(通称ユリユリ)の協力のもと、全ての垣根を越えた女性スケーターのためのイベントとして、スケートボード本来の魅力である“楽しむ気持ち”や“カッコよさ”そして、年齢関係なく友達を作ることの出来る(昨今スポーツとしてのイメージが強くなってきて、良い要素がちょっと置き去りにされてしまいつつある)スケートボードの魅力を、多くの人に知ってもらい、共有していきたいという想いから始まったイベント。
POD Gamesをきっかけに参加者らと女性推進、スポーツのガバナンス構築を考える機会作りたいと聞き、早速ムラサキパーク東京に取材へ伺った。
ちなみに、2018年12月にもムラサキパーク東京では、The Skate Exchange(スケートエクスチェンジ)という世界中のトップ女子スケーターが集まるイベントが開催されており、のちに東京五輪で銅メダルを獲得したスカイ・ブラウンや、X Gamesでの優勝経験を持ち、東京五輪にも出場したアメリカのマライア・デュラン、アレックス・サブローンなどが、スケートボードを通じた多様な文化の融合、国境を越えた文化交流のために、ムラサキパーク東京を訪れている。
この時に行われたコンテストでは、今イベントの主催者である、藤澤虹々可が優勝した。
参照:世界トップの女子スケーターたちが東京に集結!!“スケートエクスチェンジ”
https://editor.magazinesummit.jp/hobby_sport/1745344181202https://editor.magazinesummit.jp/hobby_sport/1745344181202
【“スケートボードに垣根はない”誰もが楽しめる魅力】
イベント最初に行われたのは初乗り体験会。
この日初めてスケートボードに乗る子達もいる中、スケートボードの楽しさを伝えた。
【総勢30名によるベストトリックコンテスト】
優勝した前田日菜/バンク(ユーロギャップ)全越えのキックフリップ
表彰のインタビューでは「もっとこういったガールズスケーターのイベントが増えてほしいい」と語った。
準優勝の上村葵/ジャッジ席の目の前で披露した、バックサイドスミスグラインド
3位の石丸葵/フロントサイド50-50グラインドからノーリーキックフリップアウト
ノーリーキックフリップを得意とする彼女の18番トリック。
POD Gamesベストトリックコンテストリザルト
優勝 前田 日菜
2位 上村 葵
3位 石丸 葵
コンテスト後にはガールズスケーターセッションが行われた。
【人気漫画家マキ ヒロチさんブースも】
写真/マキヒロチさんより
スケーターにはお馴染み、ガールズスケーターを題材にした漫画「SKETCHY」の作者、マキヒロチさんのブースも登場。
スケートボードのデッキテープに「SKETCHY」ロゴのスプレーや、リソグラフと呼ばれる絵やハンカチ、靴下などの販売も行われた。
【村井祐里“TSUMEATO”試写会】
イベントの締めくくりには、日本のガールズスケーターを世界に羽ばたかせるきっかけともなった、ガールズスケート映像作品Joy and Sorrowシリーズを手掛け、主催者の一人でもある村井祐里(ユリユリ)の新作「TSUMEATO」の試写会が、どこよりも先駆けて行われた。
この作品は…
スケートボードフィルマーにとっては伝説的なカメラであり、スケートボード界の名機と呼ばれるソニーのVX2000というカメラを片手に、日本全国のスケーターを撮影する村井祐里によるスケートボード映像作品。
村井祐里のスケートボードビデオといえば過去にも…
2012年から2年毎に発売していたガールズスケートビデオJoy and Sorrowシリーズはスケート界ではあまりにも有名。
・日本初のガールズスケートビデオJoy and Sorrow(2012-2013)
・Joy and Sorrow 2(2014-2015)
・Joy and Sorrow 3(2016-2017)
そして2018年から2019年に、男女問わず自然に自由にやりたいと思い、作ったビデオとなる「ReStart」がある。
以下、ユリユリからのメッセージ。
「作品を作り始めて早くも10年が経ちました。
10周年を記念して、10年間の爪痕を残してきたJoy and Sorrowシリーズのカットと、2022年の1年間で撮りためた作品がついに、完成します。
それが今回のTSUMEATOです。
10年間、私自身もスケートシーンも変化はたくさんありましたが、今も昔も変わらないのは私がスケートボードが大好きな事です!
今後も試写会を各地で予定していて、順次発表していくので、お時間が合いましたら是非見に来てください!」
とのこと。
総勢100人以上となる日本のスケーターが出演するこちらの作品は、ストリートスケートの醍醐味、音楽と映像美はもちろんの事なのでここでは割愛させて頂くが、見ていて特に他のスケート映像とは別に感じる部分があったのが、ストリートでの何気ない一般の人との会話だった。
通りすがりのおじさん達に励まされるガールズスケーターや、本来注意する側の警備員とのクリーンでスマートなやり取りと、心温まる会話の数々。
ストリートを主戦場にするスケーター達の処世術にも、ストリートスケートボードへの愛を感じた。
【TSUMEATO】
5月下旬頃、発売予定 価格は2100円(税込)。
詳しくはユリユリのインスタグラムをチェックしてみてほしい。
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【スケートボードを通した“想い”】
2019年日本オープン・ストリート選手権での優勝経験を持ち、X Gamesなどの国際大会にも出場し、女子のスケートボードシーンのトップを走る、藤澤虹々可さん。
彼女の想いが綴られたPR TIMES「アスリートの想いをカタチにする『POD Games』」によると…
「世の中では、まだまだ女性の立場は弱いんだ」という事に気づかされ、スケートボードは男女の隔てなく、みんなが平等に楽しめる社会にしたいという思いや、スケートボードなどの横ノリスポーツは、親の影響で幼少の頃から始める選手が非常に多いが、教える(やらせる)立場の人間は、みずからの経験を子供に押し付けることもしばしばで。パークや公園での生々しい練習風景を見ていると、耳を塞ぎたくなることもあったという。
そんな子供たちを目の当たりにし、これから始める子供たちには、もっと自由にスケートボードを楽しんで欲しいと思った。とある。
そして約40万人といわれる競技人口の内、1割にも満たない女性スケーターや成人してから趣味として楽しみたくても、場所の問題などで難しい部分を改善したい。
純粋に、男子も女子も一緒に楽しめる素晴らしいスケートボードの楽しさをもっとたくさんの人に知ってもらい、世の中に発信したいという想い。
参考:PR TIMES「アスリートの想いをカタチにする『POD Games』」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000089105.html
奇しくも、女の子の健やかな成長と幸せを願う、ひな祭りの翌日に行われた今回のガールズスケーターのイベント。
この日参加したスケーター達に、彼女の願いは伝わっただろうか。
少なくとも、今回の取材を通して多くのガールズスケーター達が楽しむ姿を見て、自らがイベントを行い、発信していくその行動と、自ら楽しむ姿勢で彼女の想いは伝わっているのではないかと感じた。
この記事も、そういった想いの一助になれば幸いである。
写真(一部除く) 文・小嶋勝美
スケートボードの情報を幅広く執筆する、スケートボードライター兼放送作家兼スケーター。
10年間のお笑い芸人生活を経た後、放送作家をしています。