2017年末、大井競馬場で開催された東京大賞典(GⅠ)を優勝したのはコパノリッキー。引退レースを見事勝利で飾り、JRA(中央競馬)と地方競馬、合わせてGⅠ・11勝という日本競馬史上最多の記録を打ち立てた。生涯獲得賞金は9億9514万4000円、ちなみに馬の購入額は200万円程だったと言うから驚きだ。
有馬記念を勝って引退したキタサンブラックの馬主・北島三郎さんが派手にピックアップされてちょっと目立たなかったが、このコパノリッキーの馬主は、風水でおなじみのDr.コパさん。(※馬主登録名は小林祥晃)
風水パワーで馬も勝つ!?
14年のフェブラリーステークス、最低16番人気のコパノリッキーが優勝、大波乱を演じた。Dr.コパさんは馬主歴14年目にしてJRAで初めてのGⅠ制覇。更にひと月後の高松宮記念ではコパノリチャードがまたまたG1 を勝つという当たり年となった。スポーツ新聞やSNSでも「風水パワーだ!」と騒がれた。
北島三郎さんがキタサンブラックでGⅠを勝つまで50年以上かかったが、コパさんは馬主9年目の2009年、ラブミーチャンという牝馬で地方競馬のGⅠ・全日本2歳優駿を勝っている。実は、ここに風水のパワーがあったという。
2008年のサマーセールで、315万円で落札し、最初はJRA栗東の須貝厩舎所属だったが腰が弱いなどの理由からダートが合うと考え、地方競馬へ転厩させることにした。そこで用いたのが風水。方位を見ると岐阜の笠松競馬と相性がいい、そして移転する日も7月15日が良いと見て選ぶほどだった。
これが本当に幸運の導きだったのか? ラブミーチャンはデビューから無傷の5連勝でG1 タイトルを獲得。6歳で引退するまで重賞5勝を含む34戦18勝という素晴らしい成績を残した。コパさんは、このように馬にも風水を取り入れている。例えば、騎手が着る勝負服も金運を呼ぶという黄色を基準にデザインしたもの。
風水には、毎年、ラッキーカラーやラッキーアイテムがあるとしているが、馬を預けている厩舎には、自らが手掛けたアイテムを贈り、置いてもらっているそうだ。今年は、オレンジとピンクがラッキーカラー、干支の犬の置物が幸運を呼ぶというので、おそらく関係厩舎にはラッキーアイテムが飾られているに違いない。
コパさんは、「高額の馬と長距離馬の見方がわからない」という。サウスディグラスというダート馬が好きで、その仔馬をよく買うが、購入する額は高くても300万ほど。これまで200頭以上を所有してきたが、血統は地味なダート馬が多く、高額な超良血馬はまず買わない。
安い馬で強い馬を
コパさんとは、一度だけお話したことがある。年末のラジオ特番のコーナーで、来年の運勢を風水で占ってもらう内容だった。銀座の事務所の最上階にある社長室へ招かれ収録したのだが、ちょうどラブミーチャンが現役で、トロフィーや賞状、記念写真が沢山飾ってあった。
収録が終わり、「ラブミーチャン頑張ってますね」と声をかけたら、コパさんは嬉しそうに笑って応え、馬の話が止まらなくなった。
「牝馬でやんちゃな仔でね、大変だったんだよ。でも一生懸命走る仔なんだ。この仔に巡り会えて本当に嬉しい」
「明日、笠松でレースだから行ってくるんだ。ラッキーカラーはパープルだからネクタイ締めていくよ」
そして、こんなことも
「育成牧場が少なくなっているから、中小規模の牧場で、安くても走りそうだと思った馬を選ぶんだ」
「安い馬でG1レースを勝つのが夢。牧場も喜ぶしね」
数年後、その夢はかなったわけだ。
今年もいきなり風水パワー!?
そして今年、びっくりする出来事が。2018年1月8日・中山・3才未勝利戦ダート1200m、勝ったのはキモンプリンス。ゴール前に強烈な末脚で差し切ったのだが、なんと16頭中16番人気の大穴! 馬主はDr.コパさんだ。
キモンプリンスの父はキモンノカシワという。実は、コパさんが今まで2頭しか所有したことのないディープインパクト産駒で、未勝利のまま引退したのだが血統面から種牡馬として残した。実はディープインパクト産駒で初の種馬なのだ。
キモンノカシワの仔は、2016年に3頭がデビューしたがJRAでは未勝利、現在の登録はキモンプリンス1頭だけ。そのたった1頭が待望の産駒初勝利を飾ったわけである。これにはコパさん本人も驚き、「大事な時に差が出るのは、日頃の行動」と自身のブログで話していた。
馬主は、馬を買うだけではなく維持費も大変で想像以上に費用がかかる。お金持ちのステイタスではあるが、同時にいろんな関係者の現実的な生活も、そして夢も担っているわけだ。二流、三流の血統の馬、至極安い馬でも、ときにエリート馬を蹴散らして勝つことだってある。風水は見えないパワーを馬に与えているに違いない。