世界で活躍する女性監督と女優が集結し、女性が主人公の7つのショートストーリーを紡ぎ出した映画『私たちの声』(9月1日公開)。8月28日には都内で公開直前トークイベントが実施され『私の一週間』の主演を務める杏と監督の呉美保が参加した。
「映画、芸術、メディアを通して女性を勇気づける」をスローガンとして掲げる非営利映画製作会社<We Do It Together>協力のもと、企画意図に賛同したジェニファー・ハドソンやカーラ・デルヴィーニュをはじめとする各国を代表する実力派女優のキャスト&スタッフたちが世界中から集結。実際の出来事から着想を得たエピソードから、物語仕立てのフィクション、さらにはアニメーションまで、世界各地を舞台に感動的で力強い物語が紡がれる。この日は7本の短編の中から、杏主演&呉監督作の『私の一週間』が上映された。
出産後、しばらく映画から離れていた呉監督は「子供を産んでからの5年間、映画を撮っていないのはなぜだろうか?と考えたりして、今の自分がジェンダーギャップをテーマにするならば、今の自分が送っている生活を表現することだと思った」とテーマに共鳴して参加を表明したという。
一方、シングルマザーのユキを演じた杏は「物語の中の感情はユキのものですが、家事をやったり子供と触れ合ったりする動作は私の日常の中からの経験が活かされている」と三児の母としての日々が演じる上で役立ったと明かした。
アメリカ音楽界のヒットメーカーであるダイアン・ウォーレンが手掛ける主題歌「Applause」が、本年度アカデミー賞歌曲賞にノミネートされ、呉監督と杏もシャンパンカーペット&授賞式に参加した。その感想を尋ねられた杏は「世界一のお祭りに参加できたような気がする。素敵なご縁があって歩かせていただきましたが、いつか自分自身の力で戻ってきたいとも思いました」と夢は広がるばかり。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が席巻するなどアジアパワーが際立った授賞式だっただけに「凄い場所に居合わせたと思った」と感動していた。
また仕事とプライベートの両立について聞かれた杏は「両方同時は無理」と苦笑いしつつ「どう切り替えていくのかが大切。子供がいたら子供モードだし、子供が寝たら優先順位をつけて自分のことを片付けていく。前もっての計算や計画は難しい。ブルドーザー育児状態。ガーッとやれるものを考えられるだけ時間の限りやっていく」と自らの育児スタイルを明かしていた。そんなブルドーザーな杏の姿に呉監督は「杏さんは凄い。絶え間なく子供や自分のことをやっていて、いつ寝ているのだろうか?と思う」と同じ母としてリスペクトしていた。
また観客とのQ&Aでは「フランスで子育てをしていて楽しいと思う瞬間」について聞かれ杏。「知らなかったことを知れて触れ合えるのが楽しい。戸惑うこともあるけれど、フランスに来なかったら知ることが出来ないことだと思うといい刺激。パリでは徒歩や公共機関での移動が多いけれど、それはとてもいいきっかけ。歩けば色々なものに出会えるのでパリでは歩いています」と回答した。
また「仕事復帰のタイミング」についての質問に杏は「出産後2年くらいは休んでいたので、復帰後の撮影のペースなどの段取りをつけるのが大変でした」と回想。復帰後は育児にまつわるマニュアルをエクセルで独自作成したそうで「いつ誰が手伝いに来てくれたとしても一から説明をしなくても、掃除機の使い方や洗剤の位置などがわかるように作りました。そのマニュアルは今では捨てられない大事な思い出です。そういうのを作るのが好きで、タスクを可視化するのも楽しかった」と母としての工夫を紹介していた。
最後に呉監督は「『私たちの声』は色々な国のジェンダーギャップをテーマにしていて、日々の営みや悩み、その救いを表現した彩のある作品です。たくさんの人たちの7つの物語を見てほしい」とアピール。杏は「エンタメとして映画を観ながら、世界で起きているジェンダーギャップを見てほしいです。新しい価値観を見るのには、エンタメの力は大きい。映画でもドラマでも本でも、自分とは違う価値観に触れる機会があればわかりやすいと思う。5年後、10年後に本作に描かれているテーマについて『こんな問題あったよね』と笑って振り返ることが出来る明日を歩んでいきたい。女性に向けたメッセージではあるけれど、性別問わずにたくさんの方々に観ていただきたいです」と大ヒットを祈願していた。