プロの声優や俳優が朗読した、本や多様なポッドキャストが楽しめる音声エンターテインメントサービス・Amazonオーディブル(以下、Audible)。そのAudibleがマーベルと共同制作した「Marvel’s・ウェイストランダーズ:ホークアイ」が、9月29日(金)に配信される。
30年前、世界の悪党たちが蜂起し、ヒーローたちを皆殺しにした、アベンジャーズ唯一の生き残りであるホークアイは、いまや余興の見世物小屋のような存在となり、金を払う観客のために“人生最悪の日”を再現している。
不機嫌で傷つき、視力を失っているが、彼の中にはまだ“ヒーローになりたい”“仲間の仇を討ちたい”という思いが燻っていた。自分が愛した人々の死に関わる者を一人残らず殺すために――。
本作でホークアイを演じるのは声優の鳥海浩輔さん。「Marvel’s・ウェイストランダーズ:ホークアイ」で感じた吹き替えの楽しさや大変さなどについてお話を聞かせてもらった。
――「Marvel’s・ウェイストランダーズ:ホークアイ」の出演依頼があった時の心境から聞かせてください。
最初は「マーベル!?」ってビックリしました(笑)。その後、Audibleという媒体を聞いて、「今はそういうのがあるんだ!」とまた驚きました。吹き替えだけど映像がない作品と聞いて、「へぇ〜!」という感じでしたね。“ホークアイ”というキャラクターは皆さんご存知だと思いますし、私も知っていましたので、「その役をやれるんだ!」という嬉しさもありました。
――映像のない吹き替え作品というのは難しそうな気がします。
難しさとやりやすさの両方あると思いました。最初は完成形がイメージできなかったので、「どうやったらいいんだ?」と思いましたし、“吹き替え”ですからオリジナルがあるわけです。なので、ドラマCDのように自分のペースでやればいいというものではないので、そこが難しそうだなと。やりやすさというとちょっと違うかもしれないですけど、映像がない分、聴いてくれる方の頭の中でいろんな形でイメージが広がっていくと思うので、表現のしがいがあるという意味では面白いなと思いました。――実際にアフレコをされてみて、いかがでしたか?
収録する前はいろいろ考えました。やり方じゃなくて、「吹き替える意味って何だろう?」とか、根本的なことを(笑)。完成形がイメージできなかったので、“やってみないと分からないな”というのが正直なところでしたね。もちろん、事前にオリジナルの音声とかは頂いていましたけど、これらをどこまで厳密にやるのかな?とか、考え始めたらキリがなくて。
でも、一回録ってみて感触を掴めました。1回の収録で2話ずつ録っていたので、それなりの分量をしゃべったりするんですよ。ディレクターさんから「こういう感じでいいですよ」と説明もあったりして、それでOKがもらえたりしたので「これでいいんだな」って。“始まってしまえば”という感じでしたね。
――ホークアイはご存知だったということですが、今回の作品では設定が違ったりしていますよね。
そうなんですよね。いわゆる皆さんが思い浮かべる“ホークアイ”のイメージがあると思いますし、僕もそれを思い浮かべていたんですけど、違いました(笑)。“30年後”の世界なので、そもそも年齢が違う。年齢は明記していないと思いますけど、60歳とかそれ以上だと思うんです。
それに世界が大変な状況になっていますから「こんなやさぐれているところから始まるんだ」と驚きました。でも、逆に言えば「この作品でのホークアイはこんな感じなんだな」と思うことができましたし、先入観なくやれたかなと思います。
――役作りとかは?
私もそれなりに歳を重ねていますけど、それよりも10個ぐらい上の年齢で、これまでにそこまで年上の役って経験なかったと思いますから、それなりにというか、その年齢に聞こえないといけないということで、そこに関しては新たなチャレンジでした。
これに関しても、始まってしまえば…というところがあって、年齢を気にするよりもちゃんとホークアイというキャラクターを表現する方が大事だと思ったので、やっていくうちに年齢はそこまで気にすることはなかったです。
――やっぱりそのあたりもやってみて気付くことが多かったわけですね。
はい。あと、この作品の中で回想シーンがあるんです。そういう過去のシーンでは、若いホークアイも登場するので、それがあったからやりやすかったのかもしれません。映像がない分、現在のホークアイと過去のホークアイの差を自分で調節できますし、そこがやりがいのあるところであり、難しいところでもあります。
――映像がないからこそ、“声”の比重が大きいですし。
そうです。アニメとか洋画とかのアフレコや吹き替えは、映像があることによってそこに“正解”があるわけですけど、このメディアでは声だけなので、声優として一番の腕の見せどころ。いやぁ、怖いメディアですね(笑)。
――大変だった部分は?
元々の声に尺を合わせるところですね。老齢の人って日本人のイメージだと喋り方もゆっくりだったりするんですけど、この作品のホークアイは結構喋りが早いんです(笑)。すぐに慣れましたけど、最初はそれがちょっと大変だったかな。
――脚本は最初にまとめてもらったりしたんですか?
もらったんですけど、先の展開を知っているとどうしても演技に出てしまうんじゃないかと思って、僕は録音する分をその都度その都度読んでいきました。
――リスナーと同じ感覚で。
はい。リアルタイムに新鮮に感じながら録ってましたね。ストーリーに関しては設定が面白かったですし、読み進めていくのが楽しかったです。
――では、あらためてどんな人に聴いて楽しんでもらいたいですか?
“ホークアイ”なので、やっぱりマーベルのファンの方に聴いてもらいたいです。ホークアイは知っていても、この時のホークアイを知ってる人は多くないんじゃないかなって思いますから、新鮮に感じてもらえそうな気がします。マーベルのことをよく知らないという方も、一人の人間としての“ホークアイ”が描かれてもいるので、予備知識がなくても楽しめるのでぜひ聴いてください。映像がないマーベル、聴いてくれる方それぞれが思い思いのイメージを広げてくれると嬉しいですね。
◆取材・文・撮影=田中隆信