ももいろクローバーZが4月8・9日、埼玉県・富士見市第二運動公園で富士見市制施行45周年記念事業「ももクロ春の一大事2017 in 富士見市〜笑顔のチカラつなげるオモイ〜」を開催。2日間で会場に41,578人、2日目のみ全国57箇所のライブビューイングに11,500人を動員、53,078人がライブに熱狂した。
Twitterより @momorikobuta517
2日間のライブは両日とも午前は雨模様。天気は、夕方からの開演にはなんとか回復したが、そもそも運動場なのでステージ付近の芝生以外はドロドロ。そもそも陸上競技場みたいな整った施設ではなく、側に学校がある以外は田んぼで、そこにある広いグラウンドに豪華なステージと客席を設けたのである。
アリーナはスタンディングで、芝部分はまだしも土部分はひどかったそうだ。大きなトロッコにももクロが乗ってアリーナ外周を通る演出も二日目は地面が悪くてNGになったほど。
出典:https://twitter.com/ganko_na_yogore
ライブ後のイライラといえば
そんな中で、ライブはなんと約3時間半も行われたのである。終了は20:30くらい。さて、ももクロに限らずだが、お客にとって大規模なライブの最後の最後に必ず襲うイライラがある。
「規制退場」だ
ドーム球場やスタジアム、◯◯アリーナなど、動員数が多い巨大ホールでは、ライブ終了後に出口に人が殺到しないよう、運営側が客席のブロックごとに分けて順に退場の誘導をするのが普通だ。
例えば5万人集客したドーム球場なら全員退場させるには長い場合1時間くらいになる。そこに必ずいるのがルールを無視するやつだ。ズルして別のブロックに入り込んだり、誘導の声を無視して列を乱したりして、時に客同士でトラブルにもなる。規制退場を我慢できない客はライブに来るなと言いたい。
ももクロの掟破り!
今回の「ももクロ 春の一大事」。会場は、大規模なライブの興行経験などない場所だった。通路や道路状況、交通手段までの誘導など、予想もつかない混雑、トラブルがあるかもしれない。運営側は2万人強のお客を全て規制退場で捌けるには1時間かかると判断した。
そこで、ももクロは掟破りの行動に出た。なんと、ライブを終えたばかりのメンバーがステージに現れたのだ。そしてトークを展開しつつ、退場待ち、退場中のお客に声をかける、なんて事を始めたのである。
ライブの裏方の目線でいうと、こんなの有り得ないのだ。
それはなぜか? 例えば、小・中規模のホールで、アイドルが1~2時間のコンサート終了後にエントランスなどで握手会やサイン会を行うケースはある。
しかし、全国からファンを集めて行うような万人規模の大型ライブとなると、そんな安請け合いはしたくない。年に数回あるかという大規模ライブは、壮大な世界観で繰り広げるアーティスティックな創りものであり、スターたる凄みを魅せつける晴れ舞台だ。
ファンに、尊い憧れの存在を間近で見られることが夢のように思わせる、というのが理想。ライブがエンディングを迎えアーチストがステージから姿を消すと、ファンは「あ~あ、終わった。次に会えるのはいつだろう」そんなふうに思いを巡らせ、名残惜しみ、現実へ引き戻される…。そんな余韻に浸らせる事までもがライブの演出といえる。
今回のももクロライブに来ていたファンも、ステージ終了後はそんな余韻に浸ったに違いない。
ところが、ももクロはそのエンタテインメントの常識をひっくり返した。つい数分前に「またね!」「バイバーイ!」と手を振ったはずなのに、あっさりステージに舞い戻ってきた。ライブの余韻もありゃしない(笑)。登場したのは全員ではなく2日それぞれ違ったが、彼女たちはお客全員がステージから見えなくなるまで見送った。規制退場のイライラと退屈する時間をタレント自らが埋める策を講じたわけだ。
考えてもみて欲しい、ももクロは3時間半も歌って踊ったのだ。疲労は相当なはずである。常識的に考えれば早くシャワーを浴びて、空腹を満たしたいところ。また、スタッフはそれをケアするのが普通だ。
でも、ももクロとももクロ陣営はそんなのおかまいなし。
なぜこんな対応を取ったのか? 推測でしかないが、今回、通常と違う未開の地のライブ会場だったため、客の退場がスムーズに行かないかもしれない懸念があったのではなかろうか。そんな、もしもの事態を考え、またそうじゃなくても寒い中最大1時間もかかる規制退場で、最後にお客さんに嫌な思いをさせたくないと考えた。そこで、ももクロ本人たちにお見送りのホスト役まで託したのであろう。レアケースだとしても、これが一流ミュージシャンなら絶対にやらないはずだ。
実は、ライブ終了後、ネット配信の放送局AbemaTVで、アフタートーク生放送を行う告知はしていた。それは、控室などでバンドメンバーなどを交えてワイワイ話すものと思った人が多かっただろう。しかし、流れてきた映像は彼女たちが退場するお客を見送りながらのアフタートークだったのである。
SNSでも、「ライブ終わりで神対応かよ!」「また出てくるなんて有り得ない」「世界観がおかしいw」といった声が飛んでいた。雨で足元が悪く、休憩する場所も少ない環境、時間のかかる帰り道、規制退場…
客としてクレームの一つもつけたくなる部分はあったかもしれない。でも、最後の最後にももクロが顔を出して、「ありがとう」「気をつけて帰ってね」「風邪ひかないでね」「また会おうね」、そんな声をかけてくれたら全てがチャラだ。
そういえば、ももクロのキャッチフレーズは「今、会えるアイドル」だった。しかも、ももクロはファンに笑顔を届けるというのがモットーだし、ライブのサブタイトルは「笑顔のチカラつなげるオモイ」だった。それを最後の最後まで貫いたライブステージだと思えば、有り得ること。
業界の常識的なエンタテインメント性は、ももクロにとっては古臭い価値観なのか。頭が下がる。
規制退場のイライラ解消策を
実は、ももクロは、2015年冬、軽井沢の雪山で開催した「ももいろクリスマスライブ」の規制退場時に、高城れにが登場し対応した例がある。ライブ会場から6千人を捌けさせるには時間がかかることから取った策で、極寒の中、最後まで誘導を待っていたお客も笑顔で帰ったという。
規制退場のイライラはどんなアーチストのライブでもお客のストレスとなっている。しかし、そのストレスを緩和する策を講じている話はあまり聞かない。もし、行っているなら発信して欲しい。
今回のももクロのように、アーチストがステージに顔を出す程ではないとしても、ファンに対してもう少し配慮できないだろうかと思う。というのも、運営サイドは、お客が会場を出るまで楽しませる責任があると思うからだ。
じゃあ、規制退場中に何をすれば良いのか?例えば、マルチビジョンにPVを流すだけでも退屈しないじゃないか。ライブリハのメイキング映像などを編集して流すだけでも嬉しいじゃないか。このくらいの気配り、難しいことじゃないはずだ。
素晴らしいライブの、最後の規制退場中にまでエンタテインメントを注ぐって素晴らしいと思うのだが、そこまでする必要はないのだろうか。