流行り廃りをへてなお、子どもたちを魅了するメンコ、けん玉、おはじき、ベーゴマ、そして「地球ゴマ」。
地球ゴマの製造技術は、まさにロケットも飛ぶのではないか!というほど緻密。そんな地球ゴマに関して今回、衝撃の新情報を入手しました。
「地球ゴマ」はもうすぐ100周年! その矢先に…
「地球ゴマ」は船のコンパスやカメラの手ブレ補正、飛行機やロケット等の姿勢制御にまで応用されるジャイロ効果を使った科学玩具。
一度回すと回転軸が固定されるため、斜めに傾いたら傾いたまま、ペン先でもロープの上でも倒れることなく回り続ける力強さが魅力の商品です。
販売が開始されたのはなんと1921年。
流行具合の増減はあったものの、1960年代には年間20〜30万個以上もの爆発的ヒットも飛ばし、消えることなくもうすぐ100年のロングセラーになる、というところでした。
しかし2015年初頭、残念なお知らせが届きました。地球ゴマを一世紀近くにわたって製造していたタイガー商会が廃業することとなり、ついては地球ゴマそのものの生産も終了するというのです。
『日経トレンディ』2015年8月号では、連載記事「去りゆく商品の昨日まで明日から」でこの件が詳細に取り上げられました。
そこでは地球ゴマの製造会社であるタイガー商会工場長・巣山重雄さんが登場、地球ゴマがあれほどまでにきちんと回転するのは職人一人一人の腕に頼った精緻な特殊技術があるからこそで、しかしあまりにも精緻なため、後継者が育たなかったのが生産終了の要因と語られています。
こうして2015年7月末、94年ものロングセラー商品「地球ゴマ」はその歴史を終えました。
地球ゴマが装いも新たに来春復活!
しかしマガジンサミットでは、その「地球ゴマ」が復活するというニュースをキャッチ。
巣山さんが、この人ならば任せられると技術後継者に指名したタイガー商会の職人・鳥居賢司氏とのコンタクトに成功。
お話をお伺いしたところ、鳥居さんが代表となって新会社「タイガージャイロスコープ株式会社」を10月に設立していたことが判明しました。
「廃業のニュースが流れて以来、支援を申し出てくださる個人・法人が50件ほどありました。その中でも『地球ゴマ』という技術とブランドを、しっかり継承してくれる会社さんにお願いすることになりました。」と、鳥居さん。
新会社設立にあたって技術支援をしてもらうこととなったのは、関東の、とある町工場(「とある」とぼかすのは、町工場側が「地球ゴマのブランドこそを大事にしたいので、自分たちは前面に出ずに製造を引き受けたい」という意向のため)。
今後は町工場へ製造委託し、タイガージャイロスコープ株式会社で企画と販売を担当する分担になります。
とはいっても、後継者不足に悩まされるほどに精緻な技術が必要とされるだけに、鳥居さん自身が町工場へ出向むいて監修にあたるのはもちろんのこと、タイガー商会で工場長を務めた巣山さんからもアドバイザーとして助言をいただこうと考えていているそうです。
そしてここが肝心ですが、町工場のスタッフは20代から30代の若手が中心。彼らを手に入れたことで、鳥居さんはジャイロ効果を利用した次世代のモノが作れると確信、単に地球ゴマを復活させるのではなく、「誰もが心ときめく、世界に誇れるような新たなモノを開発中です」と語ってくれました。
製品発表は来春を予定しており、それまでは新製品の情報はおあずけとなりますが、とにもかくにも94年間愛され続けた地球ゴマが従来よりも進化して回り続けることがはっきりと決定したわけです。
先に挙げた『日経トレンディ』の連載タイトルではありませんが、「去りゆく商品の明日」が拓けたのです!
なお、鳥居さんによれば新製品は「地球ゴマの次に来るモノ」ということから、あえて「地球ゴマ」の名称は封印するつもりとのこと。
とはいえ地球ゴマのブランドを大切に思うからこそ、新会社設立に至ったのが鳥居さんの真意です。
タイガージャイロスコープ株式会社の事業理念にも「ありきたりでないモノ」「心ときめくモノ」「軸のぶれないホンモノ」がスローガンとして掲げられています。
名前や特徴は新しくなりますが、地球ゴマを愛した方たちを裏切ることはないはず。
「俄然やる気で取り組んでいますのでご期待ください」と鳥居さん。最新技術で復活する地球ゴマの進化形の登場を、首を長くして待ちましょう!