白鵬よ、張り手・かち上げを封印し優勝してみせろ ~令和2年初場所~

2020/01/08
放送作家 石原ヒサトシ

令和2年大相撲初場所が1月12日(日)~26日(日)まで、東京都墨田区の国技館で開催されます。先場所、新小結で11勝を挙げた朝乃山が新関脇に昇進。大関で2場所連続負け越しの高安が関脇に転落(10勝以上で大関に復帰できる)。大関豪栄道は9度目のカド番となります。

前頭5枚目まで番付を上げた小兵の炎鵬は、いよいよ横綱大関との対戦が組まれるため土俵は大いに沸きそうです。

大横綱の張り手・かち上げ

そんな中で、気になっていることがあります。それは横綱・白鵬の「張り手・かち上げ」。

先場所(元年九州場所)は15日の取り組みの内、10番で張り手・かち上げを見せました。特に12日目の遠藤戦は立ち会いで左の張り手、さらに右腕でかち上げをお見舞いしました。いやあれはかち上げというよりプロレス技のエルボーブレイクといえるでしょう。遠藤は鼻血を流し、それでも表情を変えず土俵を降りて行きました。

テレビで解説していた舞の海さんは「過去にこういう横綱はいませんでしたね。こういうかち上げ、肘打ちは後味が悪いですね」とバッサリ切り捨てました。

場所後の横審(横綱審議委員会)では「白鵬の張り手、かち上げをやり過ぎ」「横綱の振る舞いとして見苦しい」という意見が飛び、「しっかり指導してほしい」と相撲協会に要望しました。

相撲ファンならご存知でしょうが、白鵬の張り手・かち上げ問題は今に始まったことではありません。2017年九州場所でも大きく取り上げられ、横審からは「横綱相撲とは言えない。美しくないし見たくない」と厳しく批判されています。

翌場所、序盤こそ荒々しさは見えませんでしたが、少しずつ封印を解くかのように張り手・かち上げが目立つように。そしていつの間にか当たり前のように戻ってしまいました。

ケガをさせないのもプロ

解説者の北の富士さんは「癖で出ちゃうんだろうね」「良くはないね」などと、よくコメントしています。

世の中には様々な格闘技があり、そこには大凡の暗黙ルールがあります。そのひとつに相手にケガをさせないことがあります。

例えば、ショーアップされたプロレスでも基本的に技で相手を倒すのを主とし、ケガをさせないで勝つ選手が一流とされます。ちょっと矛盾するかもしれませんがプロレスラーの力なら相手の骨の一本や二本容易く折れるはず。でもケガをさせたらその選手は試合ができず仕事を奪うことになる。つまり、ケガをさせないで勝つのもプロの技なのです。というかスポーツマンシップという言葉に全ては集約されます。

白鵬の張り手・かち上げは本場所でつい出てしまうものかと思っていたのですが、実は出稽古先でも張り手を繰り出し、朝乃山や友風をKOさせています。相手に苦手意識を付けたいという意図はあるかもしれませんが、しかし出稽古は道場破りじゃありません。横綱以前に力士として常識の範囲を超えています。以前、横綱・朝青龍も出稽古先で何人もケガさせるため、来ないでほしいと申立てする部屋もありました。同じモンゴル出身の横綱・日馬富士も暴力沙汰で角界を追われています。鶴竜には悪いですが、やはり日本の国技・大相撲の頂点に立つ横綱の“品格”は伝わらないのでしょうか。アメリカ出身の曙や武蔵丸は素晴らしい横綱だったのに、です。

横綱の模範、双葉山

白鵬は、尊敬するのは昭和の大横綱・双葉山とインタビューなどでもよく話しています。しかし“尊敬”と、自分の“理想”は違うのでしょうか。双葉山は白鵬のような荒い相撲を取りませんでした。

大関前田山に張り手をくらって負けた際「張り手も相撲の手だ」と話したエピソードがあります。しかし自らが張り手を出したことはないと言われています。

生涯一度も「待った」をかけたことがなく、制限時間前であっても受けて立ちました。仕切り一度目で立ち合ったこともありましたが、それも勝利しています。

立ち合いは相手の動きを見るように先攻させ、それを受けて技を出す「後の先」と呼ばれるスタイルで勝ち星を重ねました。

双葉山は右目の視力が悪かったため相手は双葉山の右に回って攻める手をよく使いましたが、それを見透かしたかのように対処し負けませんでした。

つまりは、「どこからでもかかってこい」という堂々とした相撲を見せていたというわけです。これが横綱相撲。今でも双葉山は横綱の模範、力士の鏡と言われています。白鵬の土俵入りは攻めを表す不知火型ですが、品のない攻めは横綱相撲に当てはまりません。

白鵬関は前人未到の43回の幕内優勝を果たすなど様々な記録を打ち立てていますが、双葉山は天国から彼の相撲を見てどう思っているでしょうか? 私を尊敬するなどと口にするなと怒っているかもしれません。

封印して勝ってみろ

フォローするわけじゃありませんが、白鵬は張り手を若い頃から多用していました。横綱になってからも「前からやっているし、勝つための技だから。勝たなければやっていけないでしょう」と話しています。永く相撲を取りたい、その気持ちはわかります。

ただ、相撲関係者やファンからも「白鵬も今年で35歳、年齢の衰えをカバーするため是が非でも勝つ手段なのだろう」と言う人は多いです。

つまり裏を返せば、正攻法ではもう勝てない、まで落ちぶれたと見られているわけです。

白鵬関に、あえて言いたい。

ここまで言われても、それでも張り手やかち上げを出しますか? そしてそれで勝って満足ですか? 専門家も相撲ファンも、白鵬はもう正攻法の相撲では優勝する力なんてない、そう言っているんです。

悔しくないですか、呆れているんですよ。

だったら、張り手・かち上げを完全に封印して15番取って、そして堂々と優勝してみせ、うるさい奴らの鼻を明かしてやりましょうよ。まだまだ白鵬関ならできると思います。

それでもし成績が残せないなら、もう横綱として潮時ということ。潔く土俵を去るのも横綱の品格であり美学です。

逆に、白鵬と対戦する力士達にも言いたい。

「張り手・かち上げ、来るなら来い!」なんでも受けて勝ってやる! 横綱のくせに品格のない手を使うなんざ、俺が倒して引退へ追い込んでやる! そのくらいのギラギラした闘志が力士全員に欲しいものです。

今年は番付上位の顔ぶれに世代交代が起こりそうな大相撲。それでも大横綱である白鵬は若手力士の越えられない壁となって戦ってほしいのです。横綱の横綱たる品格と威厳を持って。

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この記事を書いた人

放送作家 石原ヒサトシ

放送作家 「クイズ雑学王」、「ボキャブラ天国」等 バラエティを中心にイロイロやってきました。なんか面白いことないかなぁ~と思いながら日々過ごしています。野球、阪神、競馬、ももクロ、チヌ釣り、家電、クイズ・雑学、料理、酒、神社・仏閣、オカルトなことがスキです。

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