電動車イス乗ったアル中の風刺漫画家の半生を実録映画化『ドント・ウォーリー』

2019/05/08
マガジンサミット 儀保

現在公開中の映画『ドント・ウォーリー』は、実在の電気車イスに乗ったアル中の漫画家をモデルにしたヒューマン・ドラマ。とは言え、最近の邦画に在りがちなお涙頂戴の難病モノには仕上がっていません。むしろ、ドキュメンタリーのようで、コメディ寄りのヒューマン・ドラマです。

そもそも本作は、2014年に死去した故ロビン・ウィリアムズを主演に進めていた企画。そのメガホンを取ったのは、ガス・ヴァン・サント監督。2003年にコロンバイン高校の銃乱射事件を描いた『エレファント』でカンヌ国際映画祭のパルムドールと監督賞を受賞。2008年には実在のゲイの政治家ハーベイ・ミルクの伝記映画『ミルク』で二度目のオスカー候補に。そんな巨匠ガス・ヴァン・サントがウィリアムズの遺志を継いで脚本を執筆。企画から約20年の時を経て完成させた念願叶っての作品なんです。

 

故ロビン・ウィリアムズの意思を受け継ぐ!!

ウィリアムズから主人公で、実在の風刺漫画家ジョン・キャラハン役を引き継いだのはホアキン・フェニックス。ホアキンと言えば、三度もアカデミー賞にノミネートされた実力派ながら、プライベートがお騒がせな上、『インヒアレント・ヴァイス』のヒッピー探偵、『教授のおかしな妄想殺人』で殺人に憑りつかれたインテリ教授、『ビューティフル・デイ』ではトンカチマスターの殺し屋……等々といちいちクセの強い役どころを連続熱演。本作でも、漫画家以前に、そもそもアル中な上、交通事故により車イス生活を余儀なくされたクセまみれの主人公の半生を安定の演技力で熱演。

 

アル中人生+車イス生活!!

まず驚かされるのは、今年67歳を迎えるガス監督の瑞々しい演出。テンポの良い編集と自由自在な演出を炸裂。冒頭からアルコール依存症のグループセラピーのシーンから講演会、事故前の回想シーンへとジャンプ。

子供時代からアル中(‼)の主人公がバーで知り合った男と意気投合。このバーで知り合った男を演じるのは、大ヒット映画『スクール・オブ・ロック』や『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』のジャック・ブラック。本作でも登場と同時にハイテンション芸をスパーク。アル中フレンドという事もあり、ボブ・ディランネタで盛り上がるシーンは最高!!

このシーン以降、中盤は登場しないブラック。でも、ご安心ください。後半の重要なシーンで再登場します。しかも、その感動的なシーンのヤリトリは2人のアドリブというから素晴らしいです。

その後、ベロンベロンに酔っぱらって車をクラッシュ。胸から下が麻痺し、車イス生活へ。そこから自暴自棄モードへ突入。依存症のグループセラピーに通うようになるのですが、簡単に前向きになれない主人公。

 

豪華キャストが援護射撃!!

主人公にアドバイスをくれるセラピーの主催者の役には、ジョナ・ヒル。髭モジャでロン毛にした見た目と落ち着いた口調という役作りで一瞬、ジョナとは気づきませんでした。『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』や『スーパーバッド 童貞ウォーズ』で多数のコメディ作品に出演。最近では『マネーボール』『ジャンゴ 繋がれざる者』などのシリアス芝居まで演技の幅を拡大中。ヤンチャな主人公につき合わされる役どころを穏やか芝居で対応。

さらに主人公を支えてくれる恋人役には、『ドラゴン・タトゥーの女』や『キャロル』で二度のアカデミー賞にノミネートしたルーニー・マーラが魅力的に演じています。
アル中ライフはよりハードになっていく主人公は、そんな周りの人にも八つ当たり。でも、孤児として育った主人公が名前も知らない母親を探そうとする最中、ある事をキッカケに主人公の考え方は変わっていきます。

 

問題だらけの風刺漫画家へ転身!!

生き別れになった母親を探す為、似顔絵を描いた事により、風刺漫画の執筆。大学新聞の掲載から一般誌へ進出。不自由な手でコツコツと絵を描き溜めていくシーンは痛快。道で出くわしたらドン引きするスピードで電動車イスを暴走させるのも笑えます。

絵を描く楽しみを得るのとは裏腹に、黒人のジョークやKKK(白人至上主義グループ)をネタにしたブラックユーモア満載の風刺漫画は世間で賛否両論。道端で面と向かって文句言われる始末。それでも、持ち前の皮肉なユーモアはどんどんエスカレート。ガス監督のフレッシュな演出術もエスカレート。次々と下から上へグルグル回るようにカットが代わっていったり、主人公の書いたイラストがアニメーションとして動き出したりと演出もやりたい放題。とても今年で67歳になるとは思えないガス監督の自由奔放さ。

現在と過去のエピソードを行ったり来たりする構成の中、様々な人たちとの接し方によって主人公の人間性を浮き彫りにしていく脚本は割りとオーソドックス。まさに、一筋縄ではいかないガス監督らしい一本になっています。

(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

『ドント・ウォーリー』

監督・脚本・編集:ガス・ヴァン・サント

出演:ホアキン・フェニックス、ジョナ・ヒル、ルーニー・マーラ、ジャック・ブラック

音楽:ダニー・エルフマン 原作:ジョン・キャラハン

原題:Don’t Worry, He Won’t Get Far on Foot

2018年/アメリカ/英語/115分/カラー/PG12

配給:東京テアトル 提供:東宝東和、東京テアトル

公式サイト www.dontworry-movie.com

ヒューマントラストシネマ有楽町・ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館他全国順次公開中

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マガジンサミット 儀保

表の顔はディレクター兼カメラマン。実は、年間700本の映画を観賞する映画好き。どんな作品でもオススメのポイントをピックアップ。映画好きから、普段、あまり映画を見ない方にも、幅広い映画の楽しみポイントをご提供できればと日々邁進中? 映画関連tweetも日々、更新してます @yungibo

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