手間や時間をかけずにヘルシーな料理を作るのなら、ベースとなる調味料の質にこだわりたいもの。なかでもオリーブオイルは美容や健康に良いとされ、汎用性も高いことから、特に親しまれている調味料・食用油のひとつではないでしょうか。
ところが…その良さを台無しにするような使い方をしている人が多いらしいのです。『オリーブオイルの使い方選び方に関しての意識調査』(オリーブオイル健康ラボ/2021年5月)によると、購入者の3人に1人が「健康のため」にオリーブオイルを選ぶ一方で、約6割の購入者が使い切るまでに2カ月以上かかっていることが分かりました。
開栓後は1~2カ月以内に使い切ることが大切
オリーブオイルは鮮度が命。味覚博士こと鈴木隆一氏(慶應義塾大学大学院理工学研究科 特任講師/AISSY(株)代表取締役社長)が最先端AI搭載の味覚センサーで、オリーブオイルの開栓直後および開栓後約3~4ヶ月の基本五味(旨味・苦味・酸味・塩味・甘味)測定をした結果、3ヶ月以降、特に酸味が強まり酸化が進む傾向になり香りや味わいがおちるそうです。
もちろん、おちてしまうのは風味だけではありません。
オリーブオイルには、LDL(悪玉コレステロール)の上昇を防ぐオレイン酸や、酸化ストレスを防ぐポリフェノールが豊富に含まれています。また、オレイン酸には肉脂などに多く含まれるアラキドン酸やリノール酸の摂りすぎを避け、動脈硬化を防ぐ役割などもあり血液サラサラ効果が期待できます。
しかし、オイルの酸化が進むことで抗酸化作用は弱まり、さらに、鮮度がおち劣化したオイルを摂り続けることで、体内に吸収された酸化した油(過酸化脂質)が、消化器官や血液の流れに悪影響を及ぼす他、下痢や高血圧、動脈硬化などのさまざまな疾患を引き起こす原因になる可能性もあります。
リノール酸の含有量が少なく、抗酸化作用とLDLコレステロール低下作用を期待できる新鮮なオリーブオイルのなかでも“エクストラバージンオリーブオイル”(オリーブの実一番搾りのうち、酸度が0.8%以下で特に良質なもの)がカラダに理想と話す池谷敏郎先生(池谷医院院長/東京医科大学客員講師)は「健康のためにも、開栓後1~2カ月以内の新鮮なうちに使い切って欲しい」とアドバイスします。
オリーブオイルを美味しく使い切るコツ
実は、購入時にこだわる要素のひとつとして「鮮度」を意識する人は少なくはないのです。上記調査において「オリーブオイルを購入する際に意識することは?(複数回答可)」という質問では、「価格」(64.8%)、「容量」(45.5%)、「純度/エクストラバージン」(38.5%)に続き「鮮度」が4位に。
せっかくなら風味や鮮度が良いうちに使いたいもの。コスパ重視で使い切れない大容量を購入しても鮮度が失われ劣化すると、食品ロスにもつながりかねません。家族の人数や料理頻度合わせて1〜2カ月で使い切れるサイズ選びが大切です。
そこで今回は、日本人に不足がちなβカロチン(野菜)とビタミンD(魚)を中心に、新鮮なオリーブオイルをかけることで栄養素の吸収力をアップさせる「オリーブオイルを賢くおいしく使い切る」レシピを紹介します。脂溶性であるβカロチンとビタミンDは油に溶けてはじめて小腸に吸収されるため、栄養の相乗効果が期待できるのです。監修:佐藤秀美先生(食物学 学術博士/日本獣医生命科学大学客員教授)
①「しゃかしゃか振るだけマヨネーズ」
無調整豆乳…1/4 カップ (50ml)
オリーブオイル…1/3 カップ弱 (50g)
トマトケチャップ…大さじ 1と1/2
粒マスタード…小さじ2
塩…小さじ1/3
全ての材料を煮沸消毒した瓶に入れ、手で振るだけ。卵黄のレシチンの代わりに豆乳のレシチンで乳化させたのが特徴。一般にマヨネーズには「酢」を使いますが、このレシピでは酢を含むケチャップと、塩分の物足りなさを補うために粒マスタードを使用しています。
②「しらすとひじきのオリーブオイル炊き込みご飯」(3~ 4人分)
白米…2合
オリーブオイル…大さじ1
塩…ひとつまみ
醤油…大さじ1
水…基本量
ひじき…3※市販の乾燥ひじき可
しらす…大さじ3
かつお節…大さじ3
白炒りごま…大さじ3
材料を全て炊飯器に入れ、普通の白米モードで炊けば完成。しらす(ビタミンD)とヒジキ(βカロチン)を一緒に摂れて栄養たっぷりなのに、手間いらずなのが嬉しいレシピです。
③「しらすのオリーブオイル漬け」
しらす…150g
酢…大さじ1
にんにく(すりおろし…大さじ 1/2
オリーブオイル…適量
1.しらすを耐熱容器に入れて酢をふりかけて良く混ぜる。
2の容器にラップをかけて電子レンジで加熱。目安時間:700wで約1分間
3.しらすを冷ましてから保存容器に入れ、おろしにんにくを加えて混ぜる。
4.しらすがちょうど隠れる程度までエクストラバージンオリーブオイルで注ぐ。
しらすに酢をかけることで魚臭さが減り、カルシウムの吸収力がアップ。しらすに酢を混ぜて電子レンジ加熱すると、低 pHと加熱の効果で簡単に殺菌できます。夏は冷製パスタにかけるのもおススメ。「しらすのペペロンチーノ」「しらす丼」など手間暇かけず簡単につくれて便利!
④「和食」にチョイ足しレシピ
意外にも和食にマッチするオリーブオイル。薬味や野菜のような“緑の香り”(青葉アルコール/青葉アルデヒド)をチョイ足しすることで風味が豊になります。特におススメなのは「焼き魚」「卵かけご飯」「酢の物」「味噌汁」「納豆ごはん」など。
より品質を保つ保管方法
食用油の主だった酸化条件は光・空気・高温です。コンロ周りや日当たりの良い窓際に置いている人は、日陰のスペースに保存するようにしましょう。特に夏場は酸化条件がそろうため注意が必要です。
開栓後1~2ヶ月以内に使い切るのが一番ですが、それでも使い切れなかった場合は、2~3ヶ月ならば揚げ物や炒め物に利用するのが良いそう。しかし、開栓前と明らかに色が違う、フレッシュな香りが消えて油臭がする、味にキレなく鼻に嫌な臭いが抜けるなどの酸化現象を感じたら、残念ながら棄てる他ありません。
自炊する機会が増えたコロナ禍。すごもり中は健康のことを考えて、より栄養バランスの良い献立を考える人も多いでしょう。ぜひ、ご紹介したレシピを活用して、新鮮なオリーブオイルを効率よく美味しく摂ってみてください。
【調査概要】『オリーブオイルの使い方選び方に関しての意識調査』
期間:2021年5月14日(金)~5月16日(日)
方法:インターネット調査
対象:20代~50代男女400名。日本国内在住(週に1回以上料理をし、自宅でオリーブオイルを使用している人)
URL:https://oliveoil-lab.jp/images/0624_report.pdf