今年も2023年11月2日(木)〜5日(日)の4日間でアートウィーク東京が開催される。世界最高峰のアートフェア・アートバーゼルと提携し、東京における現代アートの創造性と多様性を国内外に発信する年に一度のイベントだ。
この4日間は東京を代表する50の美術館やギャラリーが連携し、さまざまなプログラムを実施。各会場をつなぐ無料のシャトルバスの「AWT BUS」や、作品が「買える」展覧会「AWT FOCUS」、アートと建築と食のコラボレーションを五感で味わうコミュニティスペース「AWT BAR」など、誰もが気軽に東京のダイナミックなアートシーンやカルチャーを体験できる。
3度目の開催となった「アートウィーク東京 2023」についての記者発表会が開催され、アートウィーク主宰の主要人が集まった。先ず初めに登壇したのはアートウィーク東京共同創設者・ディレクターでタケニナガワ代表の蜷川敦子氏。今回のプログラムについて紹介した。
【「買える」展覧会・AWT FOCUS】
先ず面白い新企画として「買える」展覧会・AWT FOCUSが開催される。美術史的観点から選定された作品を通じて、日本の近代美術を読み解くキーワードを再考すると同時に、展示される作品は全て参加ギャラリーを介して購入できるという企画だ。
初回となる本年は、滋賀県立美術館ディレクター(館長)の保坂健二郎氏がアーティスティックディレクターとして迎えた展覧会「平衡世界 日本のアート、戦後から今日まで」を開催する。会場は、1917年に実業家の大倉喜八郎によって設立された、現存する日本最古の私立美術館である大倉集古館だ。
64作家、105点の出品があり、値段は30万円〜1億円、総計7億円の作品が展示されていると保坂氏は話す。ビギナーにとっても求めやすいものから、美術史の中でも重要な高価な作品までが購入できるようになっている。アートフェアが世界中でも力を持ち始めている中、美術館やキュレーターがどのように関わっていけるのかというのが課題になっている。このままだと美術館は敷居が高いというイメージから変われないので、世界でも類を見ない全作品が購入できる展覧会を開くことにした。そのことでキュレーターとしても作家とパトロンを繋ぐ架け橋にもなれるのではないかと説明した。
【建築×食×アートのコラボ AWT BAR】
AWT会期限定で南青山に限定オープンするAWT BARは、現代アートと建築、食との融合を楽しみながら東京のアートコミュニティを体験できるスペース。今年は建築家・山田紗子氏が設計した空間で、ミシュラン1つ星のフレンチレストラン「Sincere(シンシア)」オーナーシェフ・石井真介氏が手がける、AWT BAR初のフードメニューと、アートウィーク東京の会期中に参加施設で展覧会を開催するアーティスト、大巻伸嗣氏、小林正人氏、三宅砂織氏の3名とコラボレーションしたオリジナルカクテルを提供する。
もののアウトラインだけを取り出すアプローチとして、直径13ミリのスチールパイプを用いてこれらを可視化。中に入ると先が見通せ、見える角度や人との距離で場所が動いていくような、人々が自由に行き交うことができる空間に仕上げたと建築家の山田氏は話す。スチールバーに小さなフックをつけてカクテルグラスを引っ掛けることができる面白い工夫もされている。
料理を担当した石井氏は普段はフランス料理をお店で出しているため、BARのためのフィンガーフードを考えるのは少し難しかったが、アートとのコラボということで気合も入った。日本の風景に着想を得て「森」「海」「山」をテーマに、3皿作成。見た目も可愛らしいが、塩気もあってお酒にあう料理を今回のために作ったと説明した。
【オンラインでトークが聞けるAWT TALKS】
アートを語ろうというテーマのもと、アート作品について語ることはアートを楽しむための初めの一歩。語ることを通じてアートの楽しみ方をより深めることができると思うとNPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]代表の塩見有子氏は語った。そのような中、AWT TALKSを通じて、アートの基盤をつくる対話や言論に触れる機会を、幅広いオーディエンスに対面やオンラインで届けるのがAWT TALKSだ。11月2日には誰でも参加できるシンポジウムも開催。さまざまなバックグラウンドを持つ4名の思想家やキュレーターが集い意見を交わす。
また、子どもや若者を対象に、作品を観るうえでのヒントをきっかけに自由な発想や想像力を引き出し、美術観賞の楽しみ方を伝えるガイドツアーを実施するなど幅広い年齢層が楽しめるコンテンツも用意されている。東京でアートをゆっくりと味わえるアートウィーク東京。ぜひ会期中に訪れてみてはいかがだろうか。