11月8日は“118(いいは)”のごろ合わせで“いい歯の日”だそうです。お口の中を綺麗にすることで虫歯予防や口臭を抑えることができるのはもちろん、美肌や体内環境を健やかに保つ効果もあるようです。
そこで今回は“いい歯の日”にちなんで、麻布シティデンタルクリニック院長、伊丹太郎先生に、口と健康の関係について伺いました。
※伊丹先生が院長を務める麻布シティデンタルクリニック。取材するうちに、歯に関する、とある重大な健康被害について教えていただくことに…
ノンメタル治療とは?
「麻布シティデンタルクリニックで、今、いちばん取り組んでいることが、口内の金属充填などを取り除くノンメタル治療をお勧めすることなんです」
―― 銀歯や金歯の代りに別の素材で治療を施す方法ですよね? 雑誌やメディアでも時々見かけますが、やはり、金属だと見た目が美しくないからでしょうか?
「もちろん審美も理由のひとつですが、それとは別に“金属アレルギー”の問題があります。金属アレルギーは、即時型と遅延型に分けることができ、即時型はアクセサリーなどの金属が触れた部分に炎症反応が表れるので自身で気がつくこともあります。一方、遅延型は、金属と接触していない部分に症状が表れることが多く、原因を特定しにくいうえに発見も遅れがちです。じつは、口内にある金属が、この遅延型アレルギーを引き起こしている可能性があるのです」
―― どのような症状を引き起こすのでしょうか?
「口内炎や口角炎、アトピー性皮膚炎などの炎症。それから、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)や、口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん)などの症例が報告されています。“掌蹠膿疱”は、掌(てのひら)や足の裏に膿疱や水泡ができる病気です。以前、女優の奈美悦子さんが罹患し話題になりました。人への感染はありませんが、膿疱や水疱が破けると、痛みやかゆみをともなう炎症をおこします。奈美さんが発症された理由は明らかではありませんが、金属アレルギーが原因で罹患される方が多いのは事実で、その他、慢性の扁桃炎(へんとうえん)や虫歯・歯槽膿漏(しそうのうろう)、喫煙などが関与するとされています」
なぜ、充填用の金属が人体に悪いのか?
「口内にある金属がアレルギーを引き起こす原因として、主に【溶解】と【電流】があります。まず溶解ですが、溶解は、歯の治療をおこなった際に施された金属が少しずつ身体に吸収、蓄積され悪影響を及ぼします」
―― カラダに金属が蓄積されるといえば、公害病の『水俣病』『イタイイタイ病』などを思い出しますが…
「そうですね。水銀やカドミウムという毒性の強い金属が工場排水から垂れ流された結果、多く方が被害にあわれた痛ましい事件ですが…じつは、歯の治療に使った金属のなかにも、水銀を含んだアマルガムをはじめ、金銀パラジウム、ニッケルクロム合金・銀合金などが含まれているものがあるのです。特に~1970年代に治療され、現在40代以上の方の充填(歯の詰め物)にはかなりの確率でアマルガムが存在します」
―― 水銀!? なぜ、そんな危険な金属が治療に?
「それは安価で、加工もしやすく使い勝手が良いからです。アマルガムというのは、水銀と他の金属との合金の総称で1980年代まではよく治療に使用されてきた歯科治療の充填素材です。水銀!?と驚かれるかも知れませんが、歯の充填だけでなく消毒液などにも含まれていたりしますよ」
―― そうなんですか??
「例えば“赤チン”。昔は、大半の家庭用救急箱に入っていた消毒薬だと思います。水銀は神経に作用し痛みを和らげ、傷口に染みないという効果があるんですね。現在では危険性が指摘されていますが、30年前くらいまでは当たり前に使われていました」
ガルバニック電流(ガルバニー電流)の害
「もう一つの原因は、ガルバニック電流(ガルバニー電流)と言われるものです。口の中の金属から電気が発せられる現象です。国家試験の問題に出るほどメジャーな現象ですが、その影響について考える歯科医師は少ないですね」
―― え?歯から放電!?
「ええ。先ほどお話したように、金銀パラジウムをはじめ、さまざまな金属が治療として口内に存在しています。それらの金属自体の劣化や他の種類の金属同士が影響、つまり……乾電池と同じ原理で、イオン化傾向の違いによる電子の奪い合いの結果、金属イオンと電子に電離して放電するのです」
―― 歯の詰め物で…放電なんて思いもしませんでした…
「人間の生命活動には多くの電気が使われています。例えば神経、脳伝達のシナプスなどですが、そこに歯からのノイズが加わる事で身体に不調をきたします。結果、自律神経失調や、頭痛・めまい・不眠・アレルギー・アトピーなどを引き起こす可能性があるのです」
ノンメタル治療のメリット
「そこで、私はノンメタル治療をお勧めしているのですが、実際に、口の中の金属を取るだけで、今までの不調が治ってしまう方がいます。原因不明の湿疹や、頭痛、アトピーなど長年、改善にむけて手を尽くされても改善されず、歯に金属の治療痕がある方など思い当たる節のある方は、一度、行きつけの歯科にご相談されると良いかも知れません」
―― 実際に治療するとして、やはりお値段はかかりますよね?
「確かに保険がきかないものがあるので、少々お値段は張りますが、金属にくらべて治療時間が短くすむ利点があり、何本あっても最短2回で治療を終わらせることができます。なので、なかには20本を1度に変えた患者さまもいるくらいです。もう一つは審美の点で、やはり仕上りが美しいことです。ちなみに、麻布シティデンタルクリニックでは、インプラントにもノンメタル(ジルコニア)を使っています。…それに、金属の詰め物に比べノンメタル治療は虫歯になりにくい特徴があるのです」
―― どうして虫歯になりにくいのですか?
「セラミックの加工技術の進歩により、かなり精度の良いものが増えてきており、自身の歯と歯の間に密着させることができるので隙間が生まれにくいのです。金属の充填や詰め物は、使いこめば劣化で磨り減ったり、詰め物の下の隙間から新しい虫歯が進行していたりと、毒素が溜まって非常に不衛生な場合があります」
―― 特に金属アレルギー症状のない方も、治療後はこまめなケアが大切なのですね
「そうです。例えノンメタル治療を施したとしてもケアは大切ですし、金属を入れている方はなおさらです。11月08日(いい歯の日)を切掛けに、ぜひ、定期健診に行っていただきたいですね」
毎日、何気なく使っている金属の詰め物や治療跡に、こんな重大なヒミツが隠されているとは驚きです。現在、主に使われている銀歯はアマルガムを含まないものが多いそうですが、しかし、口内は腸の次に細菌が繁殖しやすく常に湿潤。また唾液に含まれる酸など、金属にとって決して良い環境ではないのでしょう。健康の秘けつはお口から。日頃から、もっと歯について考えなければいけないと感じました。
伊丹太郎院長 ありがとうございました!
麻布シティデンタルクリニック院長 伊丹太郎
松本歯科大学卒業後、同病院勤務。 琉球大学医学部付属病院歯科口腔外科にて顎顔面領域悪性腫瘍治療に従事。 その後都内複数歯科医院勤務後、麻布シティデンタルクリニックを開院。