今回、ご紹介するのは、2月23日から公開の映画『空の瞳とカタツムリ』。
アート系のインディーズ映画というテイストなのですが、その中身は濃厚な三角関係の人間ドラマ。セックスに興味津々な潔癖症の処女と、その友人の経験豊富な女性の様々な感情が混ぜ合わさり歪な友情を描いた映画です。
2人の女
極度の潔癖症の女性・十百子(ともこ)。紹介されるがまま、ピンク映画専門の映画館でバイトを始めるチャレンジャーな一面を持つ女性。それでも、虚無感たっぷりな日常は変わらず大学時代からの女友達の夢鹿(むじか)以外は他人に触れる事も出来ないでいるんです。
その夢鹿は、ヌードモデルをしながら、コラージュ系アート作品を作って生活している女性。彼女もなかなかな濃いキャラ。彼女は彼女で「一度寝た男とは二度と寝なることはない」という排他的なモットーを持つ経験豊富な彼女。街で見かけたおっさんや映画館の客と電光石火の早さでライトなセックスをするような日々。
そんな女2人の大学時代からの友人である貴也が夢鹿に告白した事から、3人の関係は大きく変化。
夢鹿は告白されるなりお決まりコースのようにセックス。しかし彼女には「一度寝た男とは二度と寝なることはない」というモットーの持ち主。一夜を共にした翌朝、ソッコー拒否。それに困惑する貴也。
それでいて十百子に「貴也と寝なよ」と言い、貴也には「十百子を女にしてあげて」と暗躍。本当にデートするとご立腹という女性の複雑さを凝縮したような夢鹿。
潔癖症な人生
潔癖症の十百子は劇中、何度も手を洗うんです。勿論、他人に触れる事や手渡し、回し飲みなどはNG。セックスなんてもっての外。でも、大好きな女友達の夢鹿がセックスした貴也にも、セックス自体にも興味津々。そういう意図が制作サイドの意図にあるかは分からないんですけど、手を洗ってるって事は十百子が他人と関わろうとしたファイトの証拠でもあるんですね。
劇中、十百子が貴也の家で貴也の手料理を食べるシーンがあるんですよ。食事も早々に弾丸キスを敢行する十百子。そこから、お互い自分で服を脱ぐ重たい空気のセックス・チャレンジなシーンへ突入。気まずい。それでも十百子は「夢鹿にしたようにして」と切ない願いを懇願。食事とセックスをセットみたいにするのは、食事と排便を同時進行するくらいの不快感。
昔、『蘇る金狼』という映画で松田優作が風吹ジュンとバックの体位でしながらサンドイッチを食べるという衝撃シーンがありました。当時、女性経験がない筆者には完全なトラウマでした。それに近い嫌悪感。十百子のセックスへの嫌悪感がダイレクトに伝わってくる印象的なシーンでした。
そして、十百子はバイト先で人の死を目の当たりにして、他人への接触へ挑戦していくんですね。
夢鹿の感情がスパーク
一方の夢鹿は無感情に見えて、子供の頃に母親から心中未遂されそうになったというハードなバックボーンの持ち主。リストカットする事で精神を安定させている節があるんです。一時は十百子と貴也をセックスさせようと目論んでいたものの、十百子から本当に2人がいい感じになってくると複雑な感情がスパーク!
前半の無感情な様子と裏腹に、斜め上な行動をとっていくようになっていきます。
そんな難しいキャラを演じる十百子役の中神 円さん、夢鹿役の縄田かのんさん。見ていて痛々しくも官能的でもあります。90年代のインディーズ邦画の香りを残す本作は、その年代の作品に胸打たれたシネフィルな方にオススメな一本になっております。
映画『空の瞳とカタツムリ』は、2月23日より池袋シネマロサ他、全国順次公開になります。
(C)そらひとフィルムパートナーズ
ギボ・ログ★★☆☆☆(星2つ)