8月2日、第98回全国高校野球選手権大会の甲子園練習が行われ、大分高校の女子マネージャーがユニホームを着用してグラウンドに出て練習に参加したところ、大会関係者から制止される一幕がありました。
大会規定では、”危険防止のためグラウンドに立つのは男子のみ”と明記されています。甲子園練習も準じる形になるのですが、手引きには男女の明記がなく、ジャージーでの参加は禁止、ユニホーム着用とだけ書かれてあります。
廣瀬茂部長は「私が勘違いしていました。彼女は一生懸命頑張ってきたので、グラウンドに立たせてあげようと思って。本当に申し訳ありません」とコメント。甲子園の地を踏ませてあげようと女子マネージャーのユニホームを新調し、甲子園練習に練習補助員として参加させたとのことでした。
SNSで荒れる
この一件が物議をかもしSNSが荒れ荒れに。元スポーツ選手や有名な科学者が“いかがなものか”と主催者側に異議を唱えました。
これに同調する人も多く
・差別じゃね?
・高校野球って体質が古い
・危険というなら男だって危険だろ
見たところ、7割くらいは主催者側を非難する言葉でした。
いったいどっちが正しいのだろう?
公平な目線で考えてみました
まず、【主催者側への疑問点】
・地方大会と甲子園大会でルールが違うのはなぜ?
この夏の福井県大会で羽水高校の女子マネージャーが試合前練習で見事なノックバット捌きを見せて話題になりました。
“危険”というなら地方球場も甲子園も同じだと思います。地方で女子はOKなのに甲子園でNGというのはいささか合点がいきません。甲子園は聖地などといわれますが女人禁制の霊峰などと違って、いかなる場合も女性が足を踏み入れるのはご法度という場所ではありません。
例えば、女性監督の学校が甲子園出場を果たした場合は練習でグラウンドに立てないのか? 今のところそういうケースがないので明確な答えはないようですが。
女子選手が出られないのは高校野球だけ
夏の甲子園大会は今年で98回目、日本のスポーツの歴史においてはかなり古い部類になります。昔から男子のみ選手登録が許され女子は認められていません。
一方で女子の野球プレイヤーは年々増加しているそうです。
数年前の統計で、軟式・硬式合わせて約1万9000人以上いるとのこと。
例えば高校の硬式女子野球部は全国に約30校(ここ数年で急増)、大学に約7校。2009年には日本女子プロ野球リーグも設立されています。女子のWorld Cupもあるので目標は結構高く持てるといえるでしょう。
しかし圧倒的に女子チームは少ないので、男子チームに所属する女子は多いわけです。基本的に、リトル・シニア・ボーイズリーグ、学童軟式、中学軟式、大学、社会人、地方のマイナーリーグ、そして意外にもプロ野球だって女子選手は支配下登録できるのです。
しかし、高校野球は女子選手NG! しかも甲子園ではグランドで練習にも参加させてもらえない。そう考えると主催者側がバッシングを受けてもしょうがないか!?という気もします。
野球はキケンなスポーツ!?
今度は、【主催者側に立ってみて…】
主催者側が“女子は危険だからNG”というのも理解できます。
根本に女子選手を認めていない部分に辿り着きますが…。
まず野球という球技は異質です。数ある球技と比較して野球の硬式ボールは体に当たるとケガをしやすく命すら落としかねない可能性のあるスポーツです。
野球の硬式球を触ったことがありますか? 投げたことがありますか?
100キロ以上のスピードボールが体に当たったことがありますか?
実際、硬くて重いですよ。そして痛いですよ。
バッティングセンターで150キロの球を、打てとは言いません、グラブでキャッチしてみてください。たぶん素人には出来ません、野球経験がなければかなりハードルが高い技術です。
考えてみれば、野球の球はとんでもない危険物です。第一にヘルメットを着用する球技って少ないですよね?
アメフトやアイスホッケーなどありますが、あれは相手選手との接触、転倒時に頭を保護するのが主です。球が頭に当たると危険という理由でヘルメットをするメジャー球技は野球だけかもしれません。体に当たれば骨折、目に当たれば失命の危機、実際頭に当って亡くなった方だっています。
守備の際は、捕手意外防具は付けていません(急所保護のカップは着用)。投手は150キロ以上の弾丸ライナーが当たる危険性、野手だってイレギュラーした球が顔面直撃なんて危険性も。ちなみに、私が人生で一番痛かった思い出は三塁の守備でイレギュラーした球が左目にぶち当たった時です。悶絶して暴れるようにもがきました。
そんな危険物をうまく楽しく扱えるよう、体力や技術を磨いて挑むのが野球というスポーツなのです。
で? 何がいいたいか?
野球の硬式ボールが危険なのはご理解いただいたとして…
「でも硬式女子野球部があるから、女子が甲子園で練習に参加しても問題ないんじゃないの?」と反論したくなるかもしれません。
いえ、詳しく言えば「女子だからじゃなく、女子選手じゃないから危険」といえるのです。
高校生でも内野の送球の球速は100キロ以上普通にありますが、果たして女子マネージャーにその球速の球をキャッチできる技術はあるのか? 避けられる俊敏さはあるのか? つまり選手レベルの目と体感が備わっているのか?
常に選手同様の練習を受けている女子なら問題ないかもしれません。
女子マネージャーがいくら毎日練習の手伝いをしているとはいえ、やはり選手とは違います。
しかも、甲子園は、いつもと違うグランド、いつもと違う人数、限られた練習時間です。シチュエーションがまるで違います。勝手が違えば男子でも事故の危険性も高まります。
繰り返しますが、高校野球は元々女子選手を認めていません。推察するに、この規定が根本にあって女子部員は危険じゃないと言い切れない、という結論に至るのだと思います。
今回の件を突き詰める気はありませんが、学校側が主催者側に事前に嘆願していれば、例えば「ユニホームとヘルメットを着用してバックネット付近の球拾いなら認めます」なんて特例が出たかもしれません。
とはいえ、少子化の影響や野球全体の競技人口も減っているとされる昨今、高校野球だけが女子の選手登録すら認めないのは時代錯誤といわれても仕方ないでしょう。
もしかしたら漫画「野球狂の詩」の水原勇気みたいな選手が出ないとは限りませんし、何より性別の壁を超越してスポーツには夢が必要ですから。