今回お話しを伺ったのは、福岡市でシステム開発やサーバ構築を手掛けている株式会社コムネットの代表取締役である大島鉄也さん。社員わずか4名の企業でありながら、創業31年目の老舗である理由について探ってみた。
同社の看板商品は総合アカウント管理システムの「アカウントマスター for LDAP」。パソコンにログインしたり、Wi-Fiに繋げたりする際にIDやパスワードを使用するが、このIDやパスワードを自動生成するというシステムだ。どんな会社が必要とするのか疑問に思うが、利用するのは大学などの教育機関。入学した学生に割り当てられるIDやパスワードを、職員が作成していたのでは膨大な時間がかかってしまう。この作業を学籍番号などの教務情報をもとに、「アカウントマスター for LDAP」がIDとパスワードを生成する。現在、九州大学、長崎大学、大分大学、福岡県立大学、福岡女子大学など、多くの大学に導入され、4~5万人の学生や職員に向けて利用されている。
他にもWindows認証モジュールやネットワーク管理システム、入退室管理システムなどを開発。つまりPCやネットワークなどの認証に特化した技術を持っているのがコムネットなのである。そして、ニッチな分野で大きなシェアを獲得していることが大きな強みになっている。
大島さんは創業15年目、初めての新卒採用として入社。実は、大島さんの入社当時はPCなどのハードウェアの販売や人材派遣業を行っていたという。その後、ソフトウェアの開発へ舵を切ったことで社員がガラリと入れ替わり、心機一転してシステム開発会社となった。派遣社員も含めて従業員が15名ほどいた時期もあったが、労働者派遣法の改正などに伴って、自社の社員だけでシステムを開発する現在のスタイルが定着していった。
そして、2017年に前代表から引き継ぐ形で大島さんが代表取締役に就任。入社してからプログラマーや営業、顧客対応など、さまざまな業務を経験した大島さんは、システムの設計思想をよく理解していたという理由で大抜擢された。就任後は、前代表時代につくった既存システムの不具合をコツコツと改善し、経費削減などに取り組んだ。2020年4月にはコロナ禍になったことで完全リモートワークへ移行。現在は一人ひとりの能力を把握した上で、スラックを利用して綿密なコミュニケーションを図っている。大島さんが重視しているのは4人のエンジニアというリソースを上手く使いつつ、なるべく負担のない働き方をしてもらうこと。7割くらいの力で通常業務を行い、残りの3割は何かあったときのために残しておきたいという考えによるものだ。
実は、4人の社員というのはハードウェアの販売からシステム開発に変更した頃に入社した人達で、現在にいたるまでずっと同じメンバーで業務に取り組んでいるのだという。つまり大島さんを含めた全員が勤続15年以上という、ベテランエンジニアの集団であることがコムネット最大の強みといえるだろう。そして、社員の入れ替えがあったとはいえ、時代の変化に対応し事業を変えることができる柔軟性も見逃せない。この先、他の事業に転換することがあっても、軽いフットワークで時代を乗り越える、そんな底力がコムネットの歴史を支えている。