“ティーペアリング”がブームの兆しです。
ティーペアリングとは、お料理やスィーツにあわせてテイスティングされた数種類のお茶を、ワイングラスで楽しむ文化。ワインペアリングのお茶版といったところでしょうか。
昨年あたりから、『BRUTUS (ブルータス) 』2017年 3月15日号 や『dancyu(ダンチュウ)』2017年5月号『ELLE gourmet(エル・グルメ)』2017年7月号をはじめ、新しい食文化やカルチャーを伝える多くの媒体で特集が組まれています。
お酒が弱い筆者は個人的にもティーペアリングに興味がありました。折しも静岡県伊東市にある高級旅館『ABBA RESORTS IZU-坐漁荘』で、初の取り組みとなる「ティーペアリング&フレンチディナー」が行われるとのこと。早速、泊まり込みで取材に伺いました。
浮山温泉郷 ABBA RESORTS IZU-坐漁荘とは
『ABBA RESORTS IZU-坐漁荘』は、伊豆高原駅から下田方向へ約2km向かった静岡県伊東市の南部に位置します。
国立公園内にある約5000坪の敷地には「東館」「南館」「離れ」そして露天風呂付やプール付きの戸建て「ヴィラタイプ」の宿泊施設があり、宿泊客は洗練されたプライベート空間で豊かな自然と温泉を満喫できます。
敷地内には、半個室の和食処「さくら」、フレンチレストラン「やまもも」、鉄板焼き(6席)と、BARを備え、それぞれの席で伊豆ならではの旬の山海の幸を味わえます。
部屋には露店岩風呂がついており、到着してすぐに温泉三昧に。「ティーペアリング&フレンチディナー」は翌日なので、本日はゆっくり温泉&ディナーを楽しむことにしました。
坐漁荘には庭園露天風呂が2カ所、貸切り露天風呂が2カ所、大浴場が2カ所。そのどれもがデザイン性に優れたお風呂で、眺めているだけでも癒されます。
日本文化を継承する坐漁荘
創業50年を超す『ABBA RESORTS IZU-坐漁荘』では、取り組みの一つに“日本文化の継承”を掲げており、「ティーペアリング&フレンチディナー」もその一環です。宿泊客にむけ、さまざまな日本文化を体験する会を開催しているそうで「ぜひ、いかがですか?」と坐漁荘の方に誘われ、翌朝、「におい袋つくり」と「刀鑑賞」をさせていただくことにしました。
「におい袋つくり体験」では、ビャクダンやケイヒ、チョウジなどをはじめとする9種類のお香の中から、好きな香りを3種類選び混ぜて作ります。
ビャクダンの落ち着く香りとツガのスパイスが効いた香り、ダイウイキョウの優しい香りをブレンドさせ、自分好みのオリジナルにおい袋が完成しました。
刀鑑賞では、刀の手入れをする様子を拝見。刃物であるはずの刀に、美しさを感じる不思議な体験でした。
第一回清坐奏楽会が始まる
そうこうしているうちにお昼に。いよいよ12時から「日本茶を使ったティーペアリング&フレンチとの出会い」『清坐奏楽会』がフレンチレストラン「やまもも」にて始まります。
碾茶でマリネした富士山サーモンと西伊豆産鰹の塩辛クッキー×ほうじ茶+葡萄酢のスパーリング
食前酒にあたるのがスパークリングティー。塩辛クッキーに、ほどよい酸味が良く合い美味しい!アルコールを飲んでいないはずなのに酔った気分に♥ 胃が刺激されて食欲が増します。
トウモロコシのブルーテと黒アワビ コンソメジュレ×抹茶玄米+トンカ豆
トウモロコシのやさしい甘さと、ブルーテソースと黒アワビのまったり感に、抹茶玄米・トンカ豆の独特の甘い香りと味が重なります!
新牛蒡とサマートリュフのフラン×煎茶
サマートリュフの独特な風味と煎茶が、不思議と合うんです!口のなかが幸せです…
夏のウリと穴子のスモーク×ほうじ茶+バラ+ハイビスカス
バラとハイビスカスの香りと独特の渋みが、ほうじ茶とあわさることで優しくなります。スモークの繊細な味と絶妙なバランスです。
青鯛の雲丹焼と叩きオクラ×冠茶+レモングラス
青鯛の雲丹焼には、レモングラスのスパイスがアクセントに。茶の木に直接、遮光幕をかけるため冠茶(かぶせ茶)というそうです。至福!!
富士金華豚の低温ロースト×ほうじ茶+マローブラック+ピーチメルバ
金華豚のもっちり感に、ほうじ茶とマローブラックのハーブ感で後味スッキリ!マローブラックの美しい色で、まるでワインを飲んでいる気分になります。
チョコレートと柑橘を使ったデザート。ローズマリーとパッションフルーツのソルベ
芸術的な盛り付け…。ラストも華やかです。
プロが手間と時間をかけてブレンドしテイスティングするとこうなるのか!と感動。お料理とお茶をこんなに味わったのは初めてです。今まで当たり前のように飲んでいた日本茶から新たな魅力を発見させていただきました。
お茶×料理。互いを高めあう
お茶の抽出を担当した牛田さんにお話しを伺うと「お茶と料理を合わせたときに、それぞれの素材が一体になる、マリアージュ効果を、いかにお客様に楽しんでいただけるかが腕の見せ所です。また、お料理によっては、お茶の役割も違います。例えば、お魚料理であれば、お茶が魚料理にソースのように寄り添うイメージです。料理に勝ってしまうといけないし、逆に料理が強くお茶が弱いとティーペアリングの意味がなくなってしまいます」
「お料理とお茶を、どう寄り添い、どう同調させるのか、どう引き上げるのか。そういったことをシェフと話し合いながら、少し甘味を引きましょう、ここはスパイスを足しましょうといったように、繊細に調整しています」とのこと。味が決定するまで、何度も作業を繰り返したそうです。
料理を担当された山本料理長は「フレンチを食べる時は特別な時が多いと思います。記念日や大切な人との食事にアルコールはかかせませんが、アルコールを飲めない方はお水かお料理に合わない甘いソフトドリンクを選ぶのが普通です。料理に合わせたドリンク、なおかつ、テーブルが華やかになるようなシチュエーションを作るときに、色とりどりのお茶をワイングラスで提供するというのが一番素晴らしいと思い取り組みました」とコメント。
まさに、筆者のようにアルコールを飲めない方におススメしたいと感じました。
味や香りはもちろんのこと、ワイングラスとお茶の鮮やかな色が、場の雰囲気を盛り上げてくれるので気持ちも華やかになります。
今後『ABBA RESORTS IZU-坐漁荘』では、マタニティの方用にカフェインが少ない“ほうじ茶”のコースなど、より趣向を凝らした取り組みに挑戦し“ティーペアリング”の文化を発信し続けることで、日本茶の価値を向上させてゆきたいと考えているそうです。
『ABBA RESORTS IZU-坐漁荘』では、フレンチ、和会席、デザートブッフェ、ワインや紅茶のセミナーをはじめ、毎月趣向を変えて『清坐奏楽会』を開催する予定であり、日本茶だけではなく、様々な分野とのコラボなどを通じて、日本文化を広め伝えてゆきたいとしています。