「よく勘違いされるんだけど、ムーはオカルト雑誌でもなければ、科学雑誌でもないよ」
―― 以前、哲学雑誌という風におっしゃっていたのを拝見したんですが?
「そう、哲学。神がいるのか?天使がいるのか?死後の世界があるのか?って科学の範疇じゃないもん。哲学って言うのは、思想、宗教、美学を持って哲学でしょ。だから、そういうオカルトを研究している先生たちって大体哲学科の先生だよ、ギリシア哲学から東洋思想とかね、インド哲学とかさ」
―― 超常現象とかは哲学の分類なんですね。
「(ムーは)事実が書いてあると言ってない。事実じゃないかもしれないけれども、真実が書かれている。事実をいくら並べたからと言って、真実にたどり着くとは限らない」
―― 『ムー』はデータを見ても高い継続率で、昔からほとんど印刷部数も変わっていないようですが、新規読者獲得のために何かメッセージはありますか?
「もう諦めた」
《スタッフ 一同(笑)》
「マニア雑誌とかってみんなそうじゃないでしょうかね。大切なことってそこじゃない。この前ね、鳥の雑誌で羽毛恐竜の特集やってたんだけど。これはなかなか感動した!恐竜って一番でかいのでどれくらいあると思う?」
―― 30mぐらいですか?
「今発見されているのは40m。推定体重70tから100tある。……こんなでかいやつが動ける?動けるわけがない」
―― 確かに、言われてみると…
「翼竜って空飛ぶやつがいる。これ、翼長12mあるんだよ。こんなの飛べるか?するとなんか間違ってるよ。明らかに地球上のこの重力だったら動けないでしょ。なので、古生物学者は鳥のように体が軽いと考えるんだけど、鳥類の学者は反論する。そんなわけがない、と。」
「鳥類マニアにとって、巨大翼竜の存在は謎なんだ。専門家ならば、何が謎であるかをはっきり認識している。ここが重要で、アメリカの最先端の学者は、すでに薄々気づいている。恐竜が生きていた時代と今の時代では重力が違うって」
―― 重力が違う!? ぜんぜん、疑問に思いませんでした。
「子供だったら思うじゃん。『なんであんなデカイものが生きてたのかな?』って。発想の転換っていうか、世の中の見方の違い。だって、みんな同じ見方してるわけでしょ。学校で教えられたものそのまま。ネットの世界だって、ニュースだって同じような事。
―― 大勢が言っているから正しいとは限らないと…?
「それから外れると『なんかおかしんじゃね?』『なんかムーっぽくね?』って。」
「恐竜が生きてた時代と今では“重力”が違うと考えたとして、あらゆる環境が違うわけよ。あくまでも仮説だけど。それは“自由な発想”でもある。(ムーは)色々な人の、色んな疑問とか、閃きとか研究だとか、そういう記事を載せている。マニア雑誌ならではのこだわりというか、仮説なんだよね」
「だから、今月のUFOの記事では『エイリアンの正体は金星人だ!』って言ってる。先月は『地底人』って言ってたよ。来月号の予告見たら『未来からのタイムマシンって』どれだよ!みたいな」
《スタッフ 一同(笑)》
「雑誌はあくまでも媒体。筋通ってれば、怪しいものなら何でも受け入れるし取材する。そういう意味ではエンターテインメント雑誌。学術誌でも無ければオピニオン雑誌でもない。そこに真実が書かれている。真実が大事。うーんだから怪しいってくくりなら、新聞で言えば『東スポ』みたいな」
―― 東スポ?
「例えば、日本シリーズで監督の所に取材に行って『明日の先発誰ですか?』って聞くとする。すると監督もちょっと睨みつけながら、『オフレコだぞ、○○で行く!』って言って、『書くなよ、書くなよ』って念をおすわけ。当然だけどオフレコだし、書いちゃいけないって言うから、他のスポーツ新聞は書かない。」
「でもね、東スポは書いちゃう。で、監督の耳に『先発の情報が漏れてます』って話が入ってくる。『何?!どこだ!どこの新聞が書いたんだ!』『東スポです』ってなると、『東スポ?!東スポのこと信用してんの?いちいちまにうけてんじゃねえよ』って。」
―― あはは(笑)
「でもね考えてみたら、監督も秘密にしたいんだったら言わなきゃいいじゃん。本当は流して欲しいんだよ。でも監督の立場だと表だって出来ない。ムーも同じ。真実が書かれていても、『それムーだろ、おいおい』ってなる」
―― なるほど。怪しげだけど、そこには『真実』が書かれている。これが、読者を捉えて離さないヒミツなのかもしれませんね。
「あのねぇ(今日話したこと)本気にしないでね。あんまり外で言わない方がいいよ。変な人だと思われるから」
例えば『ムー』を“オカルト”というジャンルで分けた場合、2016年現在、発刊され続けている唯一の雑誌です。今まで、同ジャンルとされる様々な雑誌が発刊されましたが、そのどれもが休刊か廃刊になっています。
三上さんは「新規読者は諦めている」と言っていましたが、世の中の“あらゆる不思議”に疑問や好奇心をもって追求するその姿こそが、読者を引き付け、新規ファンを産み続けるのかもしれないと思いました。
UFOやエイリアン、その他自分の身の回りの不思議だと感じる物事をスルーする人と、そうじゃない人がいて、後者は、真実と向き合うことで世の中をもっと面白く感じられているのではないでしょうか。
自分の中の“違和感”みたいなものに向き合ってみたいと思ったなら『ムー』という雑誌を是非、一度手にとってみてはいかがでしょうか。
三上編集長、お忙しい中本当にありがとうございました!
青森県出身
1991年に学習研究社入社。
『歴史群像』編集部を経て、入社1年目から『ムー』編集部に配属。
2005年に5代目編集長就任。世の中のあらゆる不思議についての様々なトークショーやイベントに参加。カリスマ的人気を博す。
< 取材・文 / 久保・○ >