2023年は前年比2%増 2024年に本格的な回復の予測。「OMDIA」ディスプレイ市場動向&今後の展望

2022/12/22
マガジンサミット編集部

ひと口に“ディスプレイ”といってもさまざま。テレビやパソコンなどの大型パネルやスマートフォン、ゲーム機などに使われる中小型パネルまで、私たちの生活をささえる家電や必需品にかかせないテクノロジーのひとつです。

イギリス・ロンドンに本社を構えるテクノロジー業界に特化した大手調査・アドバイザリーグループの「OMDIA」によると、コロナ禍需要が終了した2022年はFPD(フラットパネルディスプレイ)産業にとって受難の年であり、液晶パネルの全世界の8割の生産量を占める「BOE」「TCL」「HKC」をはじめとした中国メーカーが、供給過剰を背景に稼働率を下げたことによりマイナス成長に転じました。

写真左)「OMDIA」エグゼクティブディレクター 鳥居寿一氏。右)ディスプレイを専門に扱う台湾より来日した「OMDIA」シニアアナリストDavid Hsieh氏。

現在は工場が稼働を下げたことにより、需要と供給のバランスを取り戻しつつあります。2022年10月以降はパネル価格がやや上昇傾向に転じた他、2023年以降はスマートフォンを中心に需要が回復し出荷数量も伸びると予測されており、売上規模は2022年の約1228億ドル(前年比22%減)から2%増の1248億ドル、さらに2024年には、2021年の1571億ドルまでには至らないものの、1331億ドルと本格的に回復へ転じるとされています。

2021年は米国を中心に、コロナ禍による給付金や巣ごもり需要などで売り上げが好調だった液晶テレビですが、2022年はそのコロナ禍需要が終わり、抱え込んだ過剰在庫に加え、インフレやロシアのウクライナ侵攻などによる消費者の買い控え心理による需要減退が顕著になりました。

2022年のパネル面積需要は、「OMDIA」が20数年前に調査を開始して以来、初めて前年比割れのマイナス成長(7%減)を記録する見通しであり、これは、世界的な液晶テレビ、デスクトップモニタ、ノートパソコン、スマートフォンの生産減少、かなでも上記のような理由で液晶テレビの価格低下が大きく影響しています。

米国における2022年のブラックフライデーでのテレビ価格をディスプレイ1インチあたりの単価でみた場合、65型液晶で3ドル台、85型液晶で10ドル程度、有機ELでも15ドル程度と激安展開に。また、米国とともに2大市場である中国でも、不動産市場の低迷やゼロコロナ政策、若者のテレビ離れなどの影響で、市場の見通しを下方修正せざるを得ない状況になっています。

現在、中国勢が生産稼働率を引き上げつつあるものの、韓国や台湾、日本の稼働率は引き続き低く、これによりパネル価格は前水準へとリバウンドしています。このまま各社ともに2023年も7割以下の稼働率を維持し、原価割れを起こさない戦略を展開していくと考えられ、2022年、2023年の2年間はまだ我慢の時期になると推測しています。

進化が止まらないディスプレイ技術

読者のなかにはテレビやモニターを購入する際に液晶ディスプレイか有機ELディスプレイかで悩む人もいるかもしれません。

液晶(有機ELを含む)テレビの出荷数は2017~2018年ころをピークに減少の一途をたどっています。今、テレビ市場を下支えしているのはパネルサイズの大型化であり、4~5年ごとに4000万m2ほど増加しているそうです。

現在、第10.5世代(G10.5=2940×3370mmのガラス基板を用いた大型テレビ)のパネル価格が下がってきているため、買い替えサイクルを鑑みて50型以上を中心に需要が伸びると予想され、2024年にはディスプレイ総量として2億m2に到達すると期待されているそうです。

中・韓・台のメーカー各社は液晶パネルの生産能力強化ではなく「有機EL」や「マイクロLED」、「QD-OLED」など次世代技術への投資にシフトしており、テレビに限らず、スマートフォンの有機EL採用率は2022年で40%を超えているそうで、今後もシェア拡大が予想されます。

現在、スマートフォン分野における有機ELは韓国勢の「Samsung Display」や「LG Display」が高いシェアを有していますが、近年は中国勢も中国地場のスマートフォンメーカーとタッグを組むなど20%ほどシェアを獲得するようになっており、今後もさらなる拡大を目指す勢いだそうです。

ちなみに「マイクロLED」は、液晶や有機ELに次ぐ“第3のディスプレイ方式”としての呼び声が高い技術。R(赤)、G(緑)、B(青)を、それぞれの色のLEDで発光させる仕組みで、高純度な色彩がそのまま目に届くため色鮮やか。光の利用効率が高く低消費電力かつ高輝度も期待できます。ただし現状では大型で価格も高く数千万円します。

「QD-OLED」は、量子ドット技術と有機EL(OLED)を組み合わせたパネル。2021年に「Samsung Display」が満を持して市場投入した次世代型有機ELディスプレイで、従来の白色バックライトではなく青色有機EL光源を利用。白色に比べて調整できる光エネルギーが大きく、広い色域を作成することが可能です。

この「QD-OLED」は量産体制が始まったばかりであり、「マイクロLED」は大きさやコスト面で手軽に購入できるものではないため、暫くは4Kと有機EL(OLED)が中心となり市場が動きそうです。

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