【東京☆今夜はここで独り呑み】 ~花見の後は創業90年のおでんで暖を!~(浅草編)~

2019/03/29
遠藤 昇輝

『家呑みよりも、気になる町で独り呑み』今回は下町<浅草>に繰り出します。

♪~梅は咲いたか 桜はまだかいな~明治時代に大流行した江戸端唄の有名すぎる一節ですが現代人でも2月の後半から3月後半にかけて、こんな気持ちになってしまうものです。浅草の隅田川沿いは江戸時代から続く花見の名所。見事な桜並木は多くの人々を魅了する下町の風物詩ですが、うかれてばかりはいられません。

花見の時期はまだまだ冷える日もあるので、うっかりすると風邪をひいてしまいます。そんな事態を避けるには<冷えた身体をあたためてくれる独り呑み>が必要です。

せっかくなら“浅草らしい店”で一杯呑(や)りたい。観光客相手のお店はご辞退したい。となると…浅草神社の裏手の馬道通りにおあつらえ向きの一軒があります。

隅田公園で桜を堪能し、そろそろ風が冷たく感じてきたら言問い通りから駅に向かって馬道通りへ。まさに帰り道ともいえるルート上に鎮座するのが『丸太ごうし』開業は大正15年、90年以上地元で愛されてきた「おでんの老舗」です。店の表には<伝統の味 昔おでん 東京の味>という嬉しい張り出し。開店直後に暖簾をくぐったのは特等席(おでん鍋の前)に座るため。

汁につかったおでん種を見ているとホッコリした気分になるから不思議です。先客はカウンターに地元の方と思しきご婦人がひとりだけ。女将さんに『暴れん坊将軍』の再放送のお話を熱っぽく語っておりました。実に浅草らしい光景です。

まずは熱燗をいただきましょう。身体がじんわりあったまるのを確かめたらおでんを選び。

目の前には「海山の仲良く煮ゆるおでんかな」という詞が張ってあります。『丸太ごうし』が供する「名代おでん」は25種。東京の味を楽しめそうなおでんを気さくな女将さんに見繕ってもらいます。

大根、ちくわぶ、がんもどき…どれもダシが効いた“東京の味”(里芋、やりいか、ばい貝など珍しいネタもおすすめです)どれも意外にさっぱりしているので日本酒との相性は抜群。これが90年以上飽きられなかった理由なのかもしれません。長年愛された理由はお店の方の人柄にもありそうです。

ある酒蔵の営業担当者が何かを届けにやって来ました。箱を受け取った大将は宛名のラベルを見て渋い顔。

「ん?これ名前間違ってるよ。うちは丸太ごうしだから」

すると担当者は遠慮がちに「あのぅ…これは麹で…」とポツリ。

そう、大将は担当者が「ごうし」を「麹(こうじ)」と間違えた思ったのです。すべてを察した大将は「あっそっか、そっか」と少しバツが悪そう。これを見ていた常連さんも女将さんも大笑い。そして大将は照れ笑い。営業担当者もホッと一安心。ホッコリした雰囲気の中、元気に挨拶をして帰っていきました。

『丸太ごうし』に来たら箸袋の裏に注目です。裏返すと「いつも春 丸太ごうしの 酒の酔」馴染み客だった詩人のサトウハチローが昭和5年に作った詩です。{多くの浅草芸人と交流を持ち、童謡『ちいさい秋みつけた』国民的流行歌『りんごの唄』の作詞でも知られる}

東京の味を守り続けるおでん屋さん。独りで呑るなら冬もいいけど春もイイ。暖簾をくぐれば「元祖・剣菱」「純米・白雪」「土佐・司牡丹」「樽酒の賀茂鶴」なんて銘酒が待っています。

さて、夜の浅草・馬道通りを歩いて駅まで向かいましょう。

 

店名:『丸太ごうし』

住所:東京都台東区浅草2-32-11

電話:03-3841-3192

定休日:日曜・祝日

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遠藤 昇輝
この記事を書いた人

遠藤 昇輝

1968年東京生まれ 放送作家として数々の「東京の町歩き番組」を手掛ける傍ら“情報収集”と称してテレビ業界の面々が通う「独り呑みの店」を渡り歩く。東京の町の貴重な遺産を紹介するため一般社団法人東京遺産協会を設立。 町歩きプランナーとして自治体の魅力発信事業等にも参加。

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