湯川リウマチ内科クリニック院長に聞く!知らないと怖い、知れば怖くない病気「リウマチ」

2017/10/25
マガジンサミット編集部

“関節リウマチ”について、どのようなイメージがありますか?
高齢者がかかる病気? 温かくしてマッサージをすれば症状が軽くなる神経痛? それとも関節が曲がってしまう不治の病……?

 

最近では、政治家の高市早苗さんが自身のブログで関節リウマチを患い“寛解した”と発表し話題になりました。他にも歌手でタレントの堀ちえみさん、女優の叶和貴子さんなどが関節リウマチであることを公表しています。

 

しかし、ネットを調べてもさまざまな情報が飛び交い、複雑でよく分らないことばかり……そこで関節リウマチの専門家「湯川リウマチ内科クリニック」の院長、湯川 宗之助先生にお話しを伺いました!

 

リウマチは高齢者だけの病気ではない

関節リウマチは、自己免疫疾患で膠原病の一種。免疫の異常により関節を包む滑膜に炎症が起こり、それが増殖すると骨や軟骨が破壊されて関節の機能が損なわれます。放置すれば、やがて関節が変形してしまう病です。

 

出典 http://yukawa-clinic.jp/rheumatism/rheumatoidarthritis.html

 

【正常な関節】では、軟骨がクッションの役割をし、関節腔を満たす関節液が潤滑油の役割をしています。(左図)

 

しかし【関節リウマチを患った関節】は、炎症を起こした骨膜からTNFα、ZL-6などのサイトカイン(免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質)等が異常分泌されたことにより、骨や軟骨や靭帯が破壊されてしまいます。(右図)

 

主に30~50代の女性が罹りやすく、なかには20代、早い時期では小学生という臨床例もあり、現在、日本では80万人~100万人ほどの方が患っています。原因は不明ですが、遺伝子的な要因や、最近ではタバコなどの環境的要因もあるのではないかといわれています。

 

初期症状で必ずしも関節が痛くなるとは限らず、なんとなく怠い、食欲が落ちる、微熱…などの倦怠感が続くので、更年期障害や疲労などと誤診され見逃されやすいのが特徴です。また、心臓・腸など臓器に痛みがでる場合もあり、そのような全身症状を発症した場合は、より診断を複雑で困難なものにしてしまいます。

 

原因も治療も診断し難い病気 

主な診断(検査方法)は、症状によって異なりますが、関節に複数の腫れが見られる場合、血液検査や触診、長音波、MIRなどを行います。

 

検査において診断の大きな目安となるのが、血液検査でのRF(リウマトイド因子)や抗CCP抗体などリウマチ因子の値異常の有無です。関節リウマチを患っていると、これらリウマチ因子が高頻度で高値(陽性)を示します。

 

しかし、抗CCP抗体が陽性であっても症状の無い方もいますし、逆に、抗CCP抗体が陰性でも、近い将来、関節リウマチにかかる可能性が残っています。

 

かつて、関節リウマチはゆっくり進行し、発症から10年以上が経過してから関節破壊が生じると考えられていました。しかし最近では、関節破壊の進行は発症後 早期から急速に起こることが分かっており、因子の値が高いほど破壊のスピードが速い可能性があります。

 

腫れや痛みがひどくなくても、関節の内部では炎症が続き、関節破壊が進行していることもあるので“早期の発見”はとても大切です。残念ながら、リウマチ因子を調べる血液検査は、今のところ、会社などの健康診断には組み込まれていませんので、気になる方は人間ドッグでの検査などで追加項目に加えると良いでしょう。

 

リウマチは寛解する。痛くない・腫れない・変形しない!

実は15年前に新薬が登場し、関節リウマチ診療に劇的な変化が起こりました。

現在では、早期発見ならば薬での寛解(病気の症状が、一時的あるいは継続的に軽減した状態。または見かけ上消滅した状態)が望めます。

 

関節リウマチが進行し、ある程度、関節の破壊が進んだステージの方には、増殖した関節の滑膜を取り除く滑膜切除術や、破壊された関節を人工関節に置き換える機能再建術などの手術方法があります。

 

また、残念ながら日本では臨床されていませんが、オランダでは関節リウマチを予防する試みもおこなわれています。

 

人口に対して専門医が少なすぎる

私は、関節リウマチが発見されにくい病である理由として、初期症状の曖昧さだけでなく、罹患人口に対して専門医師が少ないのも原因だと思っています。専門外来も少ないため、大学病院・総合病院の体制が万全だとは言い難く、また、街の整形外科との繋がりも希薄な傾向にあります。

 

解決方法の一つとして、高いレベルで横断的な診断ができる、一般・総合内科の専門医・指導医“総合内科診断医師”が増えて欲しいと感じています。さまざまな病気に精通している総合内科診断医師ならば、「逆に、リウマチでないとしたら、何が原因か?」という幅広い視野で診察もできるわけで、関節リウマチに似た症状の方が診察にいらしても適切な病院や科を紹介しやすくなるでしょう。

 

地域のリウマチ治療のHUBに

現在、私が取り組んでいるのが整形外科との地域連携です。

当クリニックでは、患者さまの症状が安定してきたら、患者さまの住む地域の整形外科に紹介状や指示書を通して、いつでも診療が受けられるようにしています。さらに、治療の過程で感染症や合併症などがおこった際には、いつでもご相談を受けられる体制を整えています。

 

また、福岡、京都、東京と、それぞれの地域からリウマチ分野の世界的権威や専門医師を迎えて診察にあたるなど、当クリニックは、いわば、患者さまと医師にとって関節リウマチ治療のHUBのような感じでしょうか。

 

なかには熊本や佐渡など、遠方から足を運ばれる患者さまも多く、紹介状がない場合でも診療をお受けしており、場合によっては、セカンドオピニオンも同クリニックで受けることができます。

 

知らないと怖い、知れば怖くない病気「リウマチ」

公益社団法人「リウマチ友の会」が発表している1万人リウマチ白書の「就業生活に影響はあったか」というアンケート調査では、55%の人が「影響があった」と回答し、そのうち半数が休職や退職、廃業をよぎなくされています。

 

関節の変形など、見た目で分る“痛み”は職場などでも理解されるかも知れません。しかし、普段通りに仕事や日常生活をこなせているように見える初期症状での“痛み”は分り辛いものです。当クリニックでは診断書をお出しして、適切な対応が受けられるようにしていますが、病気が否か疑うような偏見は早く無くなって欲しいと思います。

 

そのために私は、一般社会法人「明日天気になあれ」を発足させ、リウマチ患者さまの支援をおこなうだけでなく、市民公開講座で公演するなどの啓発活動も積極的にしています。また、将来的には「リウマチセンター」の設立なども考え、専門的な治療を受けられと同時に、関節リウマチの方のための指輪や洋服などを制作する計画もあります。

 

例えば、指が変形していまうと指輪が嵌め辛くなるので、リングが左右に割れて横から嵌められるようなデザインや、袖の通しやすい洋服などの制作、販売などを行い、活動を通して関節リウマチという病が、より大勢の方に理解されれば良いと願っています。

 

私は研修医のときに、将来ある20代の女性が関節リウマチに罹り、関節が変形し、大変な苦労をされているのにショックを受け、当時、難病といわれたリウマチ科の医師になることを決めました。あの時から日進月歩。次々と新薬が登場しています。しかし、副作用や治療費などのご相談も含め、正しい診断のできる医師がいなければ最新医療も意味がありません。

 

そう、そう…… 今、関節リウマチを題材にしたドキュメンタリーのショート映画を制作するプロジェクトも進行中です。少しでも皆さんに関節リウマチの現状を知ってもらいたいのです。そして、もし関節リウマチを発症しても、仕事や結婚、子育てなどの夢や将来を諦めないで、積極的に治療を行って欲しいと思います。

 

医学博士 湯川 宗之助

 

平成123月 東京医科大学医学部医学科卒業

平成124月 東京医科大学病院第三内科(リウマチ・膠原病科)

平成204月 産業医科大学医学部第一内科学講座

平成272月に 湯川リウマチ内科クリニック 院長

http://yukawa-clinic.jp/

 

■湯川 宗之助博士の講演予定

「産経新聞 健活手帖主催 アクティブシニア応援セミナー」

曜日:2017年 11月26日(日)

場所:ハウスクエア横浜 1Fハウスクエアホール

時間:13:00~(予定) お問い合わせ先 夕刊フジ「健康応援セミナー」係 03-3270-4689

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