アルツハイマー型認知症を撃退? ビフィズス菌の驚きの効果と可能性

2018/02/08
マガジンサミット編集部

高齢化に伴い深刻な社会問題にもなっている認知症。2025年には65歳以上の5人に1人が患うことになるという予測もされています(2015年、厚生労働省)。そして、認知症の中で実に6割を占めるのが、一度発症すると治療が困難と言われるアルツハイマー型認知症です。

そのような背景を踏まえ、森永乳業は東京大学大学院農学生命科学研究科 阿部啓子特任教授、及び地方独立行政法人 神奈川県立産業技術総合研究所との共同研究により、「ビフィズス菌A1」によるアルツハイマー抑制効果の可能性についての研究結果を発表しました。

腸内細菌と健康の密接な関係

研究の背景となったのは近年のホットなトピック「脳腸相関」。脳と腸は自律神経で結ばれていて、お互いに影響を与え合うことから、腸は「第2の脳」とも呼ばれます。

実際に、ストレスで胃が痛くなったり、お腹を下してしまったりといった経験をした方は多いですよね。これはストレスによって腸内フローラ(腸内細菌叢)が変化するためで、逆に腸内環境をよくすることで脳機能によい影響を及ぼす可能性があるのだとか。

370兆個以上もあると言われる腸内細菌ですが、これまでの研究からストレスや抗不安作用といった精神状態の改善など、脳へのはたらきも明らかになりつつあります。アルツハイマー病患者の腸内細菌叢を調べると、多様性が低く、特にビフィズス菌の割合が低いこともわかってきました。

ビフィズス菌の研究を40年以上行っている森永乳業では、今回同社が保有している菌株の中から「ビフィズス菌A1」をアルツハイマー型認知症の発症を抑制する可能性のある菌株として特定することに成功しました。

実験では認知症処方薬と同程度の改善効果

登壇した森永乳業研究本部の清水金忠基礎研究所長によると、アルツハイマー病の原因物質と考えられるアミロイドβを脳内に投与したマウスを使って3つの実験がおこなわれました。

記者からの質問に応える清水金忠基礎研究所長(中央)

ひとつは「Y迷路試験」。これは直前に進入した通路とは異なる通路に入るというマウスの習性を利用した行動試験で、空間認識力の評価に用いられます。Y字型の迷路にアルツハイマー病のモデルマウスを入れると一度出た通路や直前に入った通路を認識できず何度も同じ通路や直前の通路に入りますが、「ビフィズス菌A1」を摂取したアルツハイマー病モデルマウスは有意な改善がみられました。

もうひとつの実験は「受動回避試験」。明るい部屋と暗い部屋のある箱にマウスを入れ、暗い部屋に入った場合は電気的な刺激が与えられます。この実験でマウスは暗い部屋への進入と刺激を関連付けて記憶しますが、ここでも「ビフィズス菌A1」を摂取したモデルマウスには有意な改善が認められたことから「ビフィズス菌A1」接種によって学習・記憶能力が改善されたと考えられます。

そして、「Y迷路試験」でも「受動回避試験」でも、「ビフィズス菌A1」には認知症の処方薬であるコリンエステラーゼ阻害薬と同じくらいの改善効果が認められ、「ビフィズス菌A1」がアミロイドβ誘導性の認知障害を改善する可能性が示されました。

3つ目の実験では記憶や学習能力に関わる「海馬」という脳組織に着目した「海馬の網羅的遺伝子発現解析」。アルツハイマー病のモデルマウスの海馬を解析すると遺伝子に免疫異常や過剰な炎症が起こるケースが多かったのですが、「ビフィズス菌A1」を摂取した同マウスでは、遺伝子のほとんどが正常なままでした。

アルツハイマー病の脳では慢性的に炎症が発生していると考えられますが、「ビフィズス菌A1」はその抗炎症作用により過剰な免疫反応や脳内炎症を抑える可能性があると考えられます。

 

科学雑誌『Scientific Reports』に掲載

これらの研究によって「ビフィズス菌A1」の摂取によってアルツハイマー型認知症の発症を抑制する可能性が示され、そのメカニズムは「「ビフィズス菌A1」の菌体成分や代謝産物により脳腸相関を介した脳内の炎症反応を抑えると考えられる」(清水金忠基礎研究所長)とのことです。またビフィズス菌の単独摂取によるアルツハイマー病の発症抑制効果と作用機序(メカニズム)の解明は世界初の知見で、この研究成果は科学雑誌『Scientific Reports』誌にも掲載されました。

※『Scientific Reports』誌(2017年10月18日付)「Therapeutic potential of Bifidobacterium breve strain A1 for preventing cognitive impairment in Alzheimer’s disease.」

森永乳業では今後、「ビフィズス菌A1」のアルツハイマー型認知症の発症抑制について、ヒトに対する効果の検証も含めて研究を継続していくとのこと。すでに認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の方を対象にした「ビフィズス菌A1」接種による認知機能の比較試験を行い、その改善が確認されているといいます(論文投稿中、学会発表予定)。

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