幼いころの記憶、印象を、新たな視点で見せてくれるようなストーリー『あの日のオルガン』

2019/02/28
桂伸也

昨年、某イベントでフリーアナウンサーのカトパンこと加藤綾子さんが、幼稚園でお世話になった先生に対して、今でも年賀状を出されているというお話をされていました。年齢を重ねると「果て小学校の時の先生って、どんな人だっけ?」「中学校の先生は…影が薄かったな…」などと顔も徐々に忘れてしまう、ちょっぴり寂しいものではありますが…しかし意外に保育所や幼稚園というと、細かい顔形までは怪しいものの「優しかった」「こんなことをしてくれた」と良き思い出が記憶に残っているもの。保育所に入るころは同時に人間の形成が始まるころでもあり、親や肉親以外の人と最も深く接する機会だからということもあるかもしれません。

今回紹介する映画『あの日のオルガン』は、その保育所の昔を辿ったもの、といえます。時は1944年、第二次世界大戦も終結に向かい、戦況は日本に対して厳しくなり、本土でも度々空襲を受け始めたころのお話。20代の若年保母さんたちが子どもたちを守るため、国の決定を待たずに初めて園児を連れて行った「疎開保育園」を行ったという実話に基づいて記された、久保つぎこさん著書のノンフィクション『あの日のオルガン 疎開保育園物語』を原作として描かれたストーリーです。

過酷な歴史の一端に見える、現在の生活に通ずる思い

先ほどもちょっと書きましたが、やはり保母さんという存在は、幼児の記憶には強く印象付けられるもの。中には美人の保母さんに深くあこがれた幼少時代を過ごした男子も、多くいたのではないでしょうかね。あ、もちろん“美人”の保母さんには、私は今でもあこがれますけど(笑)。しかし一方で物語の時は日本、そして世界が大きな戦争に巻き込まれた時代で、食べ物も着るものもない中で、さらに人々は言論の自由すら失われた厳しいご時世。また疎開となると、疎開先の人間たちからは“よそ者”と虐げられ、いじめられる過酷な状況もある…

このストーリーは、そんな中でもあえて疎開という道を選び、預かった子どもたちを守る、その思いを貫こうとする保母たちの姿が描かれています。中にはその思い半ばで挫折したり、様々な環境の違いで窮地に追い込まれることも。時に保母たちが子どもと戯れる、思わずほっこりしそうなシーンの一方で、厳しい時代を皆が生き抜く姿には、必ず心を動かされるものがあることでしょう。

戸田恵梨香、大原櫻子をはじめとした、今が旬の女優ダラケ!

物語は、実在した保育園・戸越保育所を舞台に展開します。その保育園の主任保母で疎開保育園を主導する板倉楓役を戸田恵梨香さん、疎開保育園に参加するもう一つの保育園・愛育隣保館より戸越保育所に転入した若き保母・野々宮光枝役を大原櫻子さんが担当、お二人はW主演での初共演となりました。

強気に見える反面で皆をいつも見守っている「楓先生」、ちょっとおっちょこちょいだけど親しみやすく、子どもたちに人気者の「みっちゃん先生」と、お二人が演じた役柄は対照的な性格ではありますが、先に述べた子どもへの思いをたっぷりと織り込んだ好演を見せてくれます。また、ミュージシャンとしても活躍される大原さんだけに、劇中ではタイトルにもある“オルガン”を演奏する場面も。このみっちゃん先生の伴奏を取り囲み子どもたちが歌うシーンは、ある意味このストーリーの象徴的なものでもあります。

また、共演にはNHKの連続テレビ小説出演で注目を集めた佐久間由衣さん、サントリーCMにて2代目「なっちゃん」を務めた三浦透子さん、佐久間さん同様、朝ドラ出演が話題となった堀田真由さん、新年度の朝ドラ出演決定でこれからが注目される福地桃子さん、映画『白雪姫殺人事件』やドラマ『コウノドリ』(TBS系)にも出演された白石糸さんなど、今をときめくフレッシュな美女軍団が保母に!こんな美人の保母さんぞろいなら、もう一度幼稚園に行きたいと思われる方もいるかもしれませんが(笑)、それぞれの個性を生かしながら、ストーリーにハッとさせる瞬間を演出されており、要注目ポイントともいえるでしょう。

小学校の音楽の時間を思い出す唱歌にふと感じさせられる空気感

一方、この劇中のシーンの端々には、皆が懐かしいと思える様々な唱歌が歌われます。よく小学校の音楽の時間には嫌々歌っていた記憶のあるこれらの曲。しかしこの時代背景、そしてこのドラマの中で流れると、皆さんはなにか腑に落ちるような感覚を味わうことになるのではないでしょうか?まさしくこの時代だからこそできた歌、皆に親しまれた歌であることを、改めて感じさせてくれるようでもあります。

特にポイントとなるのが、歌人・北原白秋が作詞、作曲家・山田耕作が作曲を行った「この道」という曲。この曲は劇中で2度ほど歌われることになるのですが、一つは少しコミカルに、そしてもう一つは心をギュッとつかまれるようなシーンで聴かれ、衝撃にも近い印象を見る人たちに与えてくれます。

そこには綺麗ごとでは済まない、だけど忘れてはいけない、失ってはいけないものが描かれているようでもあります。今を生きる私たちにも、人を思うことに対して様々なことを感じさせてくれる作品であることは、間違いありません。今、人とのつながりに悩まれている方には、是非一度見ていただきたい作品であります!

(C)2018「あの日のオルガン」製作委員会

 

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桂伸也
この記事を書いた人

桂伸也

フリーライター。元々音楽系からのスタートですが、現在は広く浅くという感じではありますが芸能全般、幅広く執筆を行っています。またエンタメ、芸能に限らずスポーツ、アミューズメント系と…何が得意なのかが不明な感じ。逆に困ったときに声を掛ければ、何らか答えが戻ってくるというか…ある意味“変な奴”(笑)

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