作者急逝によって未完で終了した漫画作品

2018/02/22
南城与右衛門

漫画作品が終わってしまう原因としては人気が出ずに打ち切りが大半ですが、他にも雑誌自体が廃刊、作家と発行元のいざこざ……などがあります。そんな中、作家の不意の逝去により終了を余儀なくされた作品もあります。悲しみと未練が入り混じる強制終了という結末ですが、知りえないその後のストーリーは想像を掻き立てます。

今回は、そのような作家が志半ばで亡くなってしまった為、未完で終わった作品。遺志を受け継いだ者によって完結した作品を紹介します。

『イタズラなKiss』多田かおる先生

1990年に連載スタートした同作の作者・多田先生。連載中の1999年、脳内出血のため急逝。38歳でした。作品は未完でしたが多田先生によるこの作品の構想ノートに基づきアニメ化され完結。単行本は累計2700万部を売り上げ大ヒット。日本だけではなく、台湾や韓国などでもドラマ化されました。

『食べれません』風間やんわり先生

1995年から連載していた四コマ漫画の作者・風間先生。2013年10月、肝機能障害で急逝。36歳でした。単行本が14巻まで発売された『食べれません』のほか、渡辺篤史さん公認「あつし渡辺の探訪びより」、造詣の深い古典落語を題材にした「漫画落語傑作選」なども人気の作品でした。

『クレヨンしんちゃん』臼井儀人先生

1990年、漫画アクションで連載開始し、その後、まんがタウンに移籍し作品を描き続けた臼井先生。2009年9月、群馬県と長野県の県境にある荒船山を登山中、滑落し亡くなりました。51歳でした。臼井さんは山歩きに慣れており、遺書もなかったため誤って足を滑らせた事故とみられています。

現在でも大人気で映画、アニメなどは継続。漫画は『新クレヨンしんちゃん』として、臼井先生の遺志を継いだ元スタッフの手によって連載が続いています。

『サイボーグ009』石ノ森章太郎先生

さるとびエッちゃんや仮面ライダー、がんばれロボコンなど多くのヒット作を遺した石ノ森先生。1960年代にスタートした『サイボーグ009』を複数の雑誌で描いていましたが1992年に悪性リンパ腫を発病。手術せず化学療法を続けますが1998年1月、リンパ腫による心不全で亡くなりました。60歳でした。

長期連載となっていた009は未完に。しかし、構想は長男に語っており、その話と遺した膨大なノートを基に長男が完結編となる小説を執筆しました。

『玄人のひとりごと』中島徹先生

1988年にスタートした麻雀ギャグ漫画『玄人のひとりごと』の作者・中島先生。本作は人気となり長期連載、しかし2010年、病気療養のため休載。約1年後、作品が再開されぬまま大腸がんのため亡くなりました。47歳でした。単行本は全11巻、根強いファンがおり、未完に終わったことを惜しむ者は多くいます。

『ルードヴィヒ・B』『グリンゴ』『ネオ・ファウスト』手塚治虫先生

海外の著名人からもリスペクトされる漫画の神様・手塚先生。ヒット作は枚挙にいとまがない手塚先生ですが、1989年、胃がんのため60歳で亡くなるまで創作意欲は尽きませんでした。

音楽家・ベートーベンを主人公にした『ルードヴィヒ・B』(87年~)、サラリーマンを主人公にした『グリンゴ』(87年~)、大学教授が悪魔と取引し新しい人生を手に入れるという『ネオ・ファウスト』(88年~)未完のまま遺作となりました。また、1954年からライフワークのように描き続けた『火の鳥』も未完とされています。

 

肉体的にも精神的にもハードだという漫画家業。亡くなるには早すぎる年齢の先生はたくさんいます。中には自ら命を絶つ先生もおり、それだけ過酷な仕事という見方も。

作品が無事完結することは、作家から見ても読者から見ても幸せなことですが、命の火が消えるまで漫画を描き続けたことは画業冥利に尽きるのかもしれません。

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"情報番組や誰も知らない深夜番組、ラジオなどを構成したり、ソーシャルゲームのシナリオを書いたりする、いわゆる駄放送作家。友達はPC、恋人は二次元、恩師はあらゆる漫画、といった充実した人生継続中"

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