今、職場に本当に必要な「働き方改革」とは?メルカリ、Unipos、PR Tableら「働き方を考えるカンファレンス 2019」に登壇

2019/03/14
マガジンサミット編集部

いよいよ4月から適用される「働き方改革」。今後、いちじるしく労働力が減少する日本において、働く者の視点から職場を良くしようと試みられるもので、読者の職場においても「働き方改革」による環境の変化や、改革についての議論が活発になってきているのではないでしょうか。

そのようななか、先日、一般社団法人at Will Work主催の「働き方を考えるカンファレンス 2019」が開催され “「日本人の働き方」をひも解く”をテーマにトークセッションが行われました。

写真)立教大学ビジネススクール 田中道昭教授

モデレーターは、立教大学ビジネススクール教授の田中道昭氏が務め、Unipos株式会社代表取締役社長の斉藤知明氏、株式会社メルカリ執行役員の唐澤俊輔氏、株式会社PR Table 取締役の菅原弘暁氏らが登壇しました。

日本とアメリカにてフリマアプリ「メルカリ」のサービスを運営している株式会社メルカリ。企業・団体向けコンテンツ管理システム「PR Table」を提供する株式会社PR Table。従業員同士が認め合うコミュニケーションを増やし、少額の成果給“ピアボーナス”を送り合うことを実現したサービス「Unipos」を運営するUnipos株式会社 ― 3社は、それぞれ独自に開発したコミュニケーションサービスで、モノや情報の流れに革新を起こし、私たちの生活に新しい価値観を提供しています。

果たして、多様化するベンチャービジネスの最前線に立つ彼らは「働き方改革」についてどのように感じているのでしょうか。

写真)Unipos株式会社 斉藤知明氏

まずは価値観を共有することから始める

田中:今後、日本の職場は世代や国籍を問わず多様性が求められる時代になります。価値観の違いや個性を活かす取り組みとはどのようなものでしょうか。

唐澤:まず価値観ですが、その企業の事業モデルや作りたいカルチャーにより違います。徹底的なマニュアル管理とオペレーションが必要な職場があれば、ITやソフトウェアなど、現場の誰もが自由に発想し行動する必要のある職場もある。マニュアルがあるのが日本らしいなどではなく、会社によって事業構造が違う。

斉藤:同じ社内でも立場が違えば希望も違うし建前にも差がありますよね。組織において横並びにルールを決めるのは難しく、等しくパフォーマンスをあげることは困難で、それを目標に掲げるのは違和感を感じます。

菅原:会社がどのような価値観を大切にしているか、優先順位をつけてはっきり伝えないとエントリーマネージメントに失敗します。採用時にそれが共有できず、違う価値観をもって入社すれば、従業員も会社も幸せになりません。

田中:大切なのは価値観を共有しながら、従業員が楽しく働ける環境づくりを目指すことではないでしょうか。スタートアップは従業員の価値を大切にし、大企業に成長すればするほど生産性を重視する傾向がありますよね。

写真)株式会社PR Table 菅原弘暁氏

楽しく働くために会社は何をすればよいのか?

田中:かつては、CS(顧客満足度)とES(従業員満足度)が主流で、労働と消費が満足の象徴でしたが、今は自分の個性を活かし、いかに自分らしく働けるかが求められる時代になりました。そこで注目されているのが、従業員が企業や組織の中で体験する経験価値を意味する“エンプロイー・エクスペリエンス(Employee Experience)”という概念です。

菅原:僕らPR業界の人間の言語でいうと、エンプロイー・リレーションズという概念があります。企業が従業員とより良い関係構築をしていこうという考え方です。

 

社員は他者同士です。どこまで行っても全部は分りあえない。だからこそ、お互いに利益のある距離感をとることが大切で、双方の成長に貢献しあう関係が求められています。最近は目指すものが出世ではなく承認欲求・実現欲求になってきており、働く側が変わってきているので企業も変わらなければいけませんね。

例えるならば“デートがつまらない男はモテない”です。会社で過ごす時間がつまらなければ企業もフラれてしまいます。効率をよくすれば必ず楽しいデートになるわけではなく、別れたくない会社になるために、会社自体が魅力を磨き続けなければいけません。

写真)株式会社メルカリ 唐澤俊輔氏

生産性の効率=労働時間削減ではない

田中:マーケティングの世界は、カスタマー・エクスペリエンスが重要概念です。顧客の経験価値が上がるように利便性が追求されることは大切。しかし、働くという側面においては、従業員の経験価値よりは企業側の生産向上のみに終始する傾向があるような気がします。

斉藤:確かに、労働者を削減しコストを削減し…お客さまに多少の負荷を背負わせても効率だけを求めがちな気がしますね。カスタマー・エクスペリエンス → ユーザー・エクスペリエンス → エンプロイー・エクスペリエンス → プロダクト・サービス → バリューが一気通貫して循環していると、気持ちの良い会社がつくれるのではないでしょうか? 

唐澤:カスタマー・エクスペリエンスとエンプロイー・エクスペリエンスの高さは相関関係にあります。成果を上げられるチームになるためには、どのような職場環境が必要なのか? やみくもに従業員のリクエストを聞くと短期的に満足させるだけに終わってしまう。大事なのは価値観やバリューであり、会社のポリシーにあうサポートを選び提供することです。

菅原:時間あたりの効率も大切ですが、労働時間削減のことだけに終始し、結果、労働生産性が最大化する方法についてはあまり触れていない。「働き方改革」では、仕事時間を減らす=働かなくても良いとは言っていません。そこをおざなりにすると企業は縮小し、やがてツケがまわってきます。「働き方改革」の先は、弱肉強食の世界です。

斉藤:「働き方改革」といっても何から手を付けてよいのか分らない…そう思われる経営者は、まず“会社の価値観”見直し確認することから始めるのが大事ですね。それが分れば、なにを改革すれば良いのか見えてくるのかも知れません。

写真)トークセッションの模様を描いたグラフィックレコーディング。

人口減少による労働力不足と、多様化する市場に対応できる人材の確保。今後、日本の企業は2つの課題に向き合ってゆかなければなりません。労働生産性を追求するあまりお客さま価値を下げてしまえば、その企業の価値を下げ、ひいては従業員のモチベーションも下げる要因になります。

従業員が職場を誇らしく思うこと、楽しめること。それには、扇の要となる会社の“価値観”を今一度確認し、そのポリシーに基づきながら、個性や多様性を認めた居心地の良い距離感とコミュニケーションのあり方が鍵になってくるようです。

あなたの職場は、今、どんな「働き方改革」に取り組んでいますか?

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