キャリアより収入?兼業・副業の解禁をチャンスにする為の方法とは

2016/12/01
マガジンサミット編集部

2014年におこなわれた中小企業庁の調べによると、サラリーマンの副業・兼業を推奨・容認している企業は3.8%と少なく、ほとんどの企業が禁止しています。

なぜ日本は、社員の兼業・副業を推進してこなかったのでしょうか? まず言えるのは、日本の経済は製造業やサービス業が中心で、ノウハウや経験の蓄積が大切でした。そのため、長い間、終身雇用制度が大前提としてあり、正社員として働くことが当たり前の社会が続いてきたからでしょう。

 

しかし今は、経済成長の鈍化、ITによる産業構造の変化や、核家族化が進む中での子育てや介護などもあり、働き方は多様化していかなければならい時代になっています。しかし、現実では、終身雇用制度が崩壊しつつあるだけで、上述のように兼業・副業を容認している企業は少数派であり、働く側が自由に新しいワーキングスタイルを模索し、創りあげてゆくことはまだまだ困難な状況にあります。

 

しかしここに来て一部、『ロート製薬』などの大手企業が、兼業・副業を解禁するケースが出始めています。もし、今後、勤めている会社が兼業・副業を解禁したら…今の時代を生き抜かなければならない会社員は、この流れをどのように捉えたらよいのでしょうか?

 

今回は、兼業・副業の解禁は【会社員のまま始める起業準備】に活かすべき、という提案をされている、【起業18フォーラム】代表である、新井 一さんにお話を伺います。

兼業・副業解禁のデメリット

多くの人は、「起業」というとハードルが高いものと感じてしまい、なかなか実行にうつせないものです。しかし、会社員のまま兼業・副業を利用して起業準備ができるとしたらどうでしょう?

 

私は正規、非正規を問わず、会社員として働く方を中心に、「会社員のまま始める独立・起業準備」の支援をしています。クライアントさんの中には、主婦の方やすでに起業をしている方もいらっしゃいますが、基本、お勤めをしながら会社には内緒で活動されている方がほとんどです。そんな会社員の方が、会社にヒミツで起業準備のために兼業・副業を進めるのは、ちょっとしたコツが必要になります。

 

第1に、兼業・副業が禁止の会社にお勤めであれば、顔や名前をSNSやホームページなどに出せないため、事業者に必要な「社会的信用」を得にくくなります。法律をきちんと守った形で、会社バレを避けるための様々な工夫が必要です。

第2に、時間の確保です。本業のスケジュールをうまく調整することが大切です。兼業・副業を始めれば、やり方をひとつ間違えると、時間に追われる生活になってしまいます。大事なプライベートや、大切な家族との時間を犠牲にすることになっては、元も子もありません。

 

兼業・副業が解禁になれば、堂々と顔出しができますし、「仕事があるから」と、無駄な残業をやめて帰宅することもできるでしょうから、大きなメリットになります。また、正式に会社から兼業・副業の許可を得ていれば、つきあい残業や休日出勤をやめたところで、会社から咎められることはないでしょう。

 

ただ、解禁になったからといって、すべてがよい方向かというと、そうでもないのです。デメリットをあえて言うならば…

 

失敗やミスに対し、評価が厳しくなる

兼業・副業を会社公認にするためには、会社はその内容について、上司への申告を義務化してくるでしょう。その場合、公認するための最初の条件はもちろん“本業の業務に支障をきたさないこと”だと考えられます。今まで以上に本業での働き、成績を安定、向上させなければならなくなります。

それ以外にも、周囲の人に「この人、会社を辞めるつもりだ」と思われてしまうことや、病気で有給休暇を取りたいときも「あの人は、どうせ副業でしょ?」と嫌みを言われてしまったりすることもあるでしょう。さらに言えば、景気が悪くなった際に「会社側の体のいいリストラ理由に使われるかも?」なんて心配をしてしまう人もいるかもしれません。

 

 

会社とのコミュニケーションが希薄になる

自分の事業が軌道に乗り始めると、そちらに気がゆきすぎて、会社の仲間や上司との関係をおろそかにしがちです。なかには、会社一筋、スーパーサラリーマンである上司や同僚を尊敬できないなどといった気持すら抱くようになり、本業に愛着が持てなくなり、命令される仕事に対してやる気がなくなるなど、メンタル面に支障をきたす例があります。

 

会社員だからこそ、安心して起業準備ができる。兼業・副業で多少のリスクが取れるという事実を忘れずに、感謝の気持ちで本業の仕事もきちんと取り組みたいものです。

本業・副業ともに集中できない

そして、なんといっても時間の問題があります。起業準備のために兼業・副業から始める場合、“時間の切り売りビジネス”を始めてしまうと、休む暇がなくなり、本業がおろそかになってしまう可能性がでてきます。

 

誰かに仕事をもらう「アルバイト」のような副業は、小さなお金はすぐに入ってくるかもしれませんが、結局、誰かに雇われていることなので、時間や作業ノルマなどの拘束から逃れることはできません。

 

本業に悪い影響を与えないために、兼業・副業は「時間の切り売りをしない」、「自分が決定権を持つ立場で進める」ことが大切です。そして、会社との付き合い方を見直し、つきあい残業や休日出勤、飲み会への参加を減らして“時間”を確保してください。

兼業・副業解禁のメリットとは?

兼業・副業解禁には、メリットもたくさんあります。なによりも、会社に縛られず、自由な生き方を選択しやすくなります。「仕事に夢も希望もやりがいもないまま、何十年も会社に縛られて、時間が過ぎてしまった」などといった後悔も回避できるでしょう。

会社に依存しない心と経済力

数年後の起業を見据えて兼業・副業をしていくことで、「自分でお金を稼ぐ力」が身につきます。稼ぐ力があれば、突然のリストラや、家庭の事情によるやむない退職なども怖くなくなります。定年後の“生涯現役”設計や、育児や介護と仕事の両立を考え自宅で働くなどの柔軟性の高い働き方を模索でき、女性にも男性にも社会にも有益だと思います。

 

会社員だと身につかないスキルが身につく

財務会計の基礎や、時間管理・先行投資・リスクマネジメントなど、会社員ではなかなか身につかない判断力が向上し、会社員とは違う体験ができて視野が広がります。本業で培ったノウハウや技術を活かしつつ、自分で新しい「価値」を生み出すことが、会社員のまま、兼業・副業から始める起業準備の醍醐味です。

兼業・副業を「将来の起業への準備」と考える

会社員のまま始めることができる起業準備はわかるけど、それでも「自分には難しい」と感じてしまう人もいると思います。なぜならば、アイデアがない、時間がない、スキルがない、そんな風に思い込んでいるからです。会社に与えられた仕事しかしたことがなく“仕事や居場所をつくりだす方法が分らない”のです。

 

でも、会社員のままなら、時間はなくても期間はあります。多少、時間をかけてでも自分が本当にやりたいことを見つけ、「会社員のまま小さく始めて、ゆっくり育てていけばいい」という中長期の目標を考えると気持ちも楽になるでしょう。

 

お小遣い稼ぎではなく“稼ぎ力”を身に着ける準備

私がおすすめする兼業・副業は、ただ「お金が儲かったから嬉しい」という単発的な仕事ではなく、誰かに雇われて労務提供をするアルバイトでもありません。あくまでも、将来の起業を見え据えた起業準備。利益は事業に再投資し、より安定的にお金を稼げるように、事業を成長させることを目標とします。

 

学生の頃は、当り次第にバイトをしたとしても、全てが人生経験として有益だったと思います。しかし、社会人になって、目の前のお金欲しさに“なんとなく”で会社帰りにアルバイトをしてわずかなお金をもらったり、株やFXなどで幸運にもお金が手に入ったりしても、“稼ぎ力”が身についていないとしたら、なんとももったいないことです。

 

周囲に自慢しないこと

大切なことは、なによりも本業をおろそかにしないこと、そして本業の勤め先では、自らの事業、兼業・副業のことを口外することはタブーです。ましてや自慢するなどもっての外です。

 

兼業・副業が解禁されている会社であれば、質問された際には無理に隠す必要はありませんが、“起業準備”であることを強調するよりも、“リフレッシュのため”や“会社の業務に役に立てばよいと思って”など、あくまで会社の一員というスタンスで、本業をたてる話し方が好ましいです。

 

兼業・副業についての話は、セミナーや勉強会などに参加して、志を同じくする仲間と語り合うのがよいでしょう。そういった社外の仲間とのほどよい交流は、モチベーションアップにもとても有意義ですし、なにより、人生をより豊かなものにしてくれます。

 

将来の目標や夢の実現に向かって行動をすることは素晴らしいことですが、初心者がいきなり、その世界のプロ達に勝つのは困難です。兼業で副業から小さく始めて、知識と経験を積み重ね、いざ独立というときには、お客様がいる、ノウハウある、という状態であることが理想的です。職場で安定した収入を得ながら、夢への準備ができるのは素晴らしいことです。

 

せっかくの兼業・副業解禁の流れです。うまく乗れたのなら、上手に利用して第二の人生の準備を、計画的に進めてみてください。

 

取材協力
起業支援の専門家
新井 一(あらい はじめ)

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